この世に悪が栄えたそのときに
どういうわけかこの世間には、いつの間にか「怪人」と呼ばれる悪質な輩が出没するようになっていた。
何かにつけては違法な肉体改造手術を日常茶飯のごとく繰り返し、異常とも言えるパワーやら外見を会得した、存在だけでとりあえず通報できる連中だ。
何処を発端に沸いて出てくるのかは、もはや特定できないほど。
ぽんぽんと現れては何となく自己顕示欲のために極めて犯罪的な活動している。
窃盗や恐喝、暴力など一般的に逮捕されてくる犯罪者と比べると迷惑の度合いが上位互換で、何より身体的能力が並外れていることもあり、ちょっと暴れると大人四、五人がかりくらいでないと鎮圧できない何とも人騒がせな存在である。
そんなのがゴキブリのように増えていくのだから従来の警察組織とかそこらでは割と早い段階でギブアップの声が上がり、昨今では民間企業やら団体やらも対策に乗り出さざるを得ない状況になってきていた。
そういう自衛組織が増えていく中、それらと比べれば比較的名のある公的事業が立ち上がり、極めて合法的な方法で怪人の撃退を検討する組織が結成された。
二匹目のどじょうを追うかの如く、政府公認の名のもとに何やら企業との提携とかそんな形でまたねずみ算式に増えていった。
そんな感じで世間が怪人問題を抱えて騒いでる中で肉体改造をせず怪人と立ち向かう力を得るために、どこぞの町外れのロボット工場に声が掛かったのも必然といえば必然だったのだろう。
そこで身体強化スーツなるものが開発されていったわけだが、人間に使用する関係上、国の規定やら人権問題やら製造物の規格を合法の範疇に納めた結果、何とか大の大人くらいのパワーを得られるスーツが造られるまでに至った。
しかし、元々一般人な大人程度の力を持っているならそもそも不要な代物なのは言うまでもなく、需要もへったくれもない状況で、危うくロボット工場が開発費用の負債で潰れかけた。
そんなところ、工場長の泣きの一声で国からの援助金をせびりつつ、その場しのぎのつもりの口先三寸で大人ほどの力を持たない子供向けのスーツへと方針を変え、辛うじて泣き寝入りを回避。
しかし、その弊害か、あるいは反響か、開発の安定した子供向け強化スーツの登場によって怪人討伐機構に少年の部が組み込まれるようになり、誰も予想していなかったであろう、少年戦隊がこのご時世に頭角を現すようになった。
進学のためのお受験戦争は世界の平和を守るための極若年層就職戦争へと何故か変容することになり、現在の社会問題にまで至る。
何はさておき、この物語は凶悪で邪悪で劣悪な怪人集団といたいけな少年戦隊のあまりにも不平等な闘いを綴るものになる、らしい。