おまけ-使い心地-
新しくなった装備を試す為、さっそくクアンはトレーニングルームをテストを行う事にした。
補助器具とは言え形状と能力は銃そのものである。
グリップの握り心地から標準のズレや本人のちょっとした癖等、何が影響を及ぼすかわからないのだが細かい調整が必須と言えるだろう。
その辺りの調整を行ってもらう為、クアンはデータを取りつつ自らの相棒を取り出した。
その相棒、てっぽーうおくん(命名クアン)を握りしめ、五十メートルほど先にある丸い的に狙いをつけ引き金を絞った。
ぱしゅ。
小さな音といつも通りの反動。
使い心地は全く変わっておらず、グリップが握りやすくなったくらいしか違いを感じない。
感覚は今までと一緒だが……中身は完全に別物と化していた。
五十メートル先の的に水の弾丸は綺麗に当たり、メキンと不思議な金属音を立てながら的を破壊した。
ただ……このトレーニングルームの的は銃弾で傷が付かないように作られた使いまわしの為の的である。
消耗品ではあるが、たった一発で壊れるような脆い物では決してない。
実際、クアンはその的を壊した事など今まで一度もなかった。
その後クアンは百メートル、百五十メートルの的を試し打ちし、同時に三点バーストとフルオート機構も試してみた。
特に問題なく、百五十メートル先までフルオートでしっかりと狙いを当て、的の残骸を山とする事に成功していた。
ちなみに、今までは百メートルの的でも命中精度七割、百五十メートルで三割くらいだった。
今回は共に十割でありまだまだ余裕がある。
全く外す気がせず、まるでスコープでも付いているかのような感覚ですらあった。
「……ユキさん……。やりすぎです……」
残弾を全て使うレーザーも使えるらしいが、クアンは怖くて使う事が出来なかった。
こんな武装を用意するユキが『切り札』とまで言ったのだ。
何が起こるかわからない。
「クアン。そっちはどうでした?」
少し離れた区域から、ゆらりと現れたファントムが微笑みながら話しかけて来た。
人気のある芸能人らしい甘いファイスに優しい瞳。
家族に向けられる彼の瞳をファンが受けたらきっと気絶するだろう。
そんな笑顔のファントムにクアンも同じように微笑み返した。
青い髪にファントムよりも更に蒼い瞳。
顔立ちも綺麗で二人が並ぶとまるでドラマの一シーンのようだった。
「ファントムお兄さん。うん。これ、やばいです。他にどういえば良いかわからない程度にはやばいです」
クアンは満面の笑みで……笑う事しか出来なかったので笑顔でそう言葉にした。
「ですよね。僕の方もです」
同じような笑顔でファントムもそう言葉にした。
「こっちは的が全て一撃で壊れていきました」
「そうですか。こっちも似たような物ですね。それと、こんな事も出来るようになりました」
そう言ってファントムは右腕から一本のワイヤーを投げ、五十メートル先、クアンの壊した的に巻きつけ引っ張って左手に掴んだ。
「おー。ぱちぱちぱちぱち」
「ワイヤーを使って某蜘蛛のヒーローみたいに移動する事も出来ます。メインの火力面も大幅にあがりました。……自分の力でないのに強くなるってちょっと不思議な感覚ですね」
「あ、ちょっとわかります。訓練してないのに強くなるのって悪い気分ではないですが……何とも言えないもにょると言いますか……」
「まあ悪い事ではないですけどね。ですからお互い、自分の力ではないので過信しないようにしましょう」
ファントムの言葉にクアンは頷いた。
「……ですね。それじゃ、とりあえず私はハカセのとこいってきます」
「あれ? 訓練はもう良いんですか?」
その言葉にクアンは苦笑いを浮かべた。
「いえ、訓練も大切ですが……その……壊した的の事謝らないと……」
その言葉にファントムは少し考え、そして頷いた。
「わかりました。では、僕もついて行きましょう」
「いえいえ。壊したの私ですから……」
そうクアンが言うと、ファントムは遠くにワイヤーを伸ばし、手元に何かを手繰り寄せた。
「これ、近接訓練用の的なんです……」
それは大きな円柱状の形をした金属に、手と思われる部位が生えていた。
そして……根本からぽっきりと折れていた。
「ああ……同じようなものでしたもんね。じゃあ一緒に謝りに行きましょう」
クアンの言葉に苦笑いをしながらファントムは頷き、上の部屋にいるテイルの元に二人で移動を始めた。
二人が怒られる事はなかったが、ユキの仕事にトレーニングようのダミー人形と的の製作が追加される事となった。
ありがとうございました。




