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エピローグ 少年を育てたもの


 ユキが頭を抱えテイルが楽しそうに高笑いを上げるような奇妙奇天烈な会場総筋肉大会を終え、一週間が経過した。

 その筋肉大会に乱入し、気は優しくて筋肉質なマッスル集団にもまれ囲まれたヴォーダンだが……筋肉汚染を受けず、筋肉やマッチョイズムに固執するような事はなかった


 日々の戦闘トレーニングとは別に一日二、三時間ほどトレーニングルームに籠り、黙々と筋トレをした後専用冷蔵庫に入れたプロテイン飲料を飲む。

 そんな日課が追加されただけの、微々たる変化だった。


「……筋肉式怪人育成法。これは研究すべき価値あるんじゃないか」

 ユキと二人でパソコンを見つめながらテイルはそう呟いた。

「止めて。確かに否定出来ない状況だけどそれは止めて」

 頭を抑えながらユキはそう呟き返す事しか出来なかった。


 ヴォーダンはテイルの作った怪人の中で、文句なしの最高傑作である。

 別にヴォーダンだけ贔屓したわけではなく、八人分のノウハウを持ちつつユキが開発、製造にかかわっている為だ。

 ただ、ユキがかかわっているとは言え怪人製造のメインはテイルである為大本はそこまで変わらず、完全人工知能も個体差や事前教育の差はあれどクアンと同等のものである。

 故に、ヴォーダンの精神はファントムやクアンと大まかに見れば同等の能力である、また成長具合となる――はずだった。


 怪人は人と違い元々成人した状態で生まれる為成長したかどうかの明確な判断基準が難しい。

 だからと言って生まれた瞬間から完成しているかと言えばそんな事はなく、生まれた時の怪人は等しく未熟状態である。

 そこから己の性格の変化に、悩み、向き合い、受け入れる事で自己が確立していき、人で言えば大人と呼べる状態の成熟状態となる。


 自分のやりたい事を見つけ、その為に苦労を背負う雅人やファントムは完全な成熟状態であると言え、自分の世間一般で言えば多少異なる欲求を知り、それを受け入れたヴェルセトとクアンは成熟状態に近づきつつあった。


 自己の確立。

 これが怪人における大人と子供を分ける判断材料である。

 だが、もう一つ大人と子供を明確に分ける判断材料も存在していた。


 脳波データの一カテゴリーであるそれをグラフを見れば大人か子供か一目でわかる。

 それを一言で表現するなら……『精神強度』と呼ぶのが正しいだろう。


 トラブルが起きた時の脳の働き具合を見て、どの位苦しみ、悩み、それを解決しようと努力出来るか。

 困難を前にすると必ず人は苦しむ。

 その苦しみを受け入れ、冷静に分析し、対処する事が出来るか。

 ざっくばらんに言えば、ストレスに対する耐性がどの位出来ているかである。


 この点で言えば、ストレス耐性が他の怪人よりも弱いクアンはまだまだ子供であると言って良いだろう。


 だが、それも仕方がない。

 下の子が生まれたとは言えクアンもまだ稼働してそれほど時間が経っているわけではない。

 しかも精神の成長は躓きやすく、また成長出来たとしても後退し戻るすらもあった。


 逆に言えば、その生きる為の苦労と悩みを何度も経験し、ミルフィーユの層のように積み重ねていく事が大人になる事だと言っても過言ではない。


 のだが……クアンどころか生まれてひと月も経過していないヴォーダンは筋肉でどんな化学変化を起こしたのか、精神強度という意味で言えばとうに成人している状態となっていた。

 いや、それどころか成熟しても精神強度の成長は止まらず、現在は怪人九人の中で上位三名に入るほどの精神強度を誇っていた。

 

 理由は言うまでもなく、あの大会である。

 わずか数時間を境にグラフが山の様に登り、兄、姉達をぽんぽんと追い抜き第二怪人に隣接するまで成長を遂げた。

 それだけではなく、ほぼ成長が止まった第一、第二怪人とは違いヴォーダンは今現在も微量だが成長し続けている。

 それはテイルの完全人工知能が優秀なわけでも、ユキの指導が特殊なわけでもない。

 ヴォーダンはあの大会で人でいう何十年もの経験と同等の経験を積んだという事に外ならなかった。


「一応……全身ムキムキのボディビル体形になりたいわけでもないって言ってたけど……それならどうしてプロテインを飲んでいるのかしら……。やはり脳が筋肉に汚染されて」

 ユキが酷く深刻な表情でそう言葉にするのを聞き、テイルは噴き出し笑った。

「何を言っているんだ天才が。別に肉体を鍛えているだけだろう」

「でも……それならどうしてプロテインを飲むなんて普通しない事を……」

「いや、どうしても何も……お前似だからだろう?」

「え?」

「ユキ。もし自分が肉体を鍛えるとする。その時どうする?」

 そう言われ、ユキは「あ」と小さく呟いた。


 肉体を効率良く鍛えようとすれば、筋肉を鍛える事が最も効率が良い。

 では筋肉を鍛えるとすれば何をすべきか。

 それはトレーニングを重ねつつ筋肉に栄養を送り続けるのが最も効率が良い。

 そうなると、ヴォーダンの今している行動こそが最適解であると言えた。


 普通はそこまでしない。

 そりゃあそうだ。

 いくら学んだからと言ってプロテインに手を出すというのは意外と敷居が高い。

 だが、敷居が高かろうとそれが難しそうであろうと、『効率が良い』ならそれを迷わず実行する。

 それがユキの考え方の根本であり、同時に天才である理由だった。


「お前の息子だからあそこまで極端なほど効率良く動くんだよ。トレーニング風景見た事あるか? 分刻みのスケジュールだけじゃなくて、汗を掻く量まで計算に入れてトレーニングしているんだぜ? 流石は天才の息子」

 そう言ってテイルは笑った。


「なるほど……。うん、筋肉に拒否感あったから考えなかったけど、プロテインって効率良くたんぱく質取るだけの摂取物だしそうなるか。んでさテイル。実際の所はどのくらい影響あるの?」

「ん? どの位ってどういう意味だ?」

「ヴォーダンのトレーニングよ。怪人の肉体って大幅な変化はしないじゃない。まあそのまま調整カプセル入れて設定してぽんで幾らでも変えられるけど」

「あー。そういう意味か。安心しろ。しっかりと効果は出るぞ」

「あ、そなの?」

「ああ。確かに最初から調整されある程度完成して生まれる怪人は人と比べたら筋線維の成長率は低い。それでもしっかりと効果は出るし……何より怪人の場合は鍛え動かす事により自分の体を自分の脳と一体化させ最適化するという意味もある。だから戦力という意味でも肉体という意味でもしっかり成長するぞ」

「ほーん。なるほどね」

 そう言ってユキは納得したように頷いた。


「んでも一個聞くけど、ヴォーダンがトレーニングを始めた理由って結局何だったの? 単純な肉体作り?」

 ユキの言葉にテイルは苦笑いを浮かべ、首を横に振った。

「いいや、もっと単純で純粋な理由だ。ある意味では幼稚だが……ある意味では崇高な理由だな」

 同じ男だからこそわかるソレをそう語るテイルに、ユキは首を傾げる事しか出来なかった。




 交差する二つの刃がヴォーダンに襲い掛かる。

 片方はファントムのワイヤーによし発生して衝撃波。

 もう片方はクアンの水のムチ。

 兄妹であるだけでなく、現在ARバレットの主力で共に行動する頻度の多い二人の連携は一部の隙もなかった。

 そしてその背後には、二人をカバーするようにヴァルセトが待機している。


 普段は女目当てでフラフラしているヴァルセトだが、雅人と違いまだARバレット所属という事になっている為戦闘行為に参加する事が可能だった。


 ヴォーダンは今回、前回ファントムが一方的にのされた時の様に身体能力でごり押す事が出来ない。

 クアン、ファントム、ヴァルセトの三人の身体能力はテイル、ユキが製造した強化パッチにより各段に上がっているからである。

 ヴォーダンのデータを元用意された調整は予定の五割程度しか性能を発揮していないが、それでも三人ともギリギリでオーバー階級に入る位の身体能力を手にする事が出来ていた。


 能力含めてoBマイナス階級相当の三人と、oAマイナス相当の一人。

 その差は互角からヴォーダンがやや不利という状況なのだが……それに加えてヴォーダンは持ち前の能力である電光回路を完全にカットしている為現状三人が圧倒的に有利な状況となっていた。


 この一方的としか言えない戦力比での訓練は、他の誰でもなくヴォーダンの望んだものだった


 ヴォーダンはファントムのワイヤーを電磁ロッドで防ぎ、クアンの水を素手で受け止める。

 ワイヤー攻撃の為防ぎきれず軽い切り傷を作り、水を受け止めた手は激痛が走る。

 ヴォーダンはそれを我慢し、どちらにも今出来る最大電力で電気を流した。


 しかし、ファントムのワイヤーは完全に近い絶縁加工が施されて電磁ロッド程度では電気が流れない。

 それどころか止めたはずのワイヤーの動きは健在のままだった。

 クアンの方に至っては、行動を完全に読まれており、ムチのような形をした水は既にクアンから切り離され、ヴォーダンの手から外れ巨大な槍のような棘に形状を変えていた。


 ヴォーダンはまずいと気づきこの場から離脱しようとする――が、逃げる事は出来なくなっていた。

 電磁ロッドを通じて右腕にファントムのワイヤーが撒きつかれ、その場にヴォーダンを固定する。

 その間に水の棘はヴォーダンに迫り、その顔を貫く――寸前で動きを止めた。


「……まいった」

 目に入りそうなほど近くに存在する巨大な棘に恐怖を感じ冷や汗を掻きながら、ヴォーダンは小さな声でそう呟いた。


「はいお疲れー。何飲む? スポドリで良い?」

 さっきまでクアンとファントムの後方にいたヴァルセトはタオルを全員に投げ、足元にクーラーバッグを用意していた。


「あ、はい。すいません。わざわざ呼んだのに戦闘ではただ立たせただけになり、その上そんな雑用をさせてしまって」

 ヴォーダンがそう言葉にするとヴァルセトは微笑みヴォーダンの頭に乗ったタオルをわちゃわちゃと動かした。

「年下が気を使うなって。そもそも、お前身体能力と直接戦闘能力はやたら優れてるけど搦め手に弱いから俺相手はきついと思うぞ。つか俺だけじゃなくてファントムもクアンちゃんも搦め手よりだし超しんどいだろ?」

 されるがままになりながらヴォーダンは頷いた。

「はい。二人共俺と違い練り込まれ重ねられた強さがあります。だからこそ、学ばせてもらいたいと」

「せめて電光回路だっけ? 能力使えよ。それなら俺ら三人相手にしても戦えるだろ?」

 その言葉にヴォーダンは首を横に振った。

「いえ。能力で勝っても意味がないので――」

 そう答えるヴォーダンを見て、ファントムとヴァルセトはニヤリと笑い、クアンは首を傾げた。


「良くわからないけど、とりあえず水分補給は大切だよ? 確かに私達は人より頑丈だけど、それでも水分が必要な事には変わりはないんだからね」

 そう言った後クアンはヴァルセトにペットボトルを手渡した。

「む。金言含めてありがたく」

 そう言ってヴォーダンはペットボトルを受けとった。

 その様子を見て、クアンは不満そうな顔を浮かべた。

「……ありがとうお姉ちゃんでしょ?」

「は?」

「お姉ちゃん!」

「あ、ありがとうお姉ちゃん……」

 そう答えた瞬間、クアンは満面の笑みとなりヴォーダンの頭を撫でた。

 尊敬はするし家族だとは思うが、押しの強いお姉ちゃんにヴォーダンは若干苦手意識を持ってしまっていた。


「それで、能力で勝っても意味がないってどういう事です?」

 クアンがそう尋ねると、ファントムとヴァルセトは意味ありげな笑みを浮かべた。

「要するに、ただ強くなりたいから訓練してるんじゃないって事だよクアンちゃん」

 ニヤニヤした顔でヴァルセトがそう答えると、ファントムもまた意味ありげな笑みのまま同意を示すように頷いた。

「ん? ん? どういう事? むしろ二人は何で知ってるの?」

「……男なら皆わかる気持ちという奴ですね」

 そうファントムが答えると、クアンは目に見えて膨れた。

「むぅ……。仲間外れにされているみたいでなんか嫌です」


「せ、説明するので機嫌を直して下さい」

 ヴォーダンはおろおろしながらそう言葉にするとクアンは頷いた。

「うん。教えて。貴方が何を考えて、何を思っているのかを」

「はい。……と言っても、大した事じゃないです。ただ……もう、あいつには二度と負けたくないと、そう思ってるだけです」

 そう言ってヴォーダンは悔しそうで、それでいて楽しそうな複雑な笑みを浮かべた。


 大会後の腕相撲。

 あれは引き分けだと判定されたが、ヴォーダンは実質的に負けだと理解していた。

 再度繰り返せば電光回路完全覚醒が出来ない為確実に負けていたし、もしもテーブルが壊れていなかったとしても、あそこから勝ちにまで持って行けたとはとても思えない。

 どうあがいても、ヴォーダンはあの後負けが約束されていた。


 その時はそうではなかったが、後からヴォーダンは負けた事が非常に悔しかったのだと気が付いた。

 負けた事が悔しくて、対等になれなかった事が悔しくて、純粋に勝負を楽しませてやれなかった事が悔しくて。

 とにかく悔しかったので、ヴォーダンは決意した。


『あいつの得意な戦闘で、あいつを必ず打ち負かす』


 それがヴォーダンの今の目標となっていた。


 肉体を鍛える為に、トレーニングプログラムを組んでプロテインを飲んでいる事も、能力を封じて格上の兄妹達と厳しい戦いをしている事も、全てあいつとの再戦を考えてのヴォーダンの準備である。

 強くなる事が目的ではない。

 ただ、強くならなければ目的が叶えられない。

 だからこそ、ヴォーダンは誰よりも強くなる事に貪欲となっていた。


「というわけで、あいつを打ちのめして負けた悔しさを教える為に、俺は今鍛えています」

 その言葉にファントムとヴァルセトはうんうんと同意を示し何度も頷いた。

「なるほどねー。うん。理屈も気持ちもわかった。だけどやっぱり……理解出来ないな。戦う必要がない相手を打ち負かす事に拘る気持ちが」

「それが馬鹿な男と賢い女性との差さ。そして、男はそんな馬鹿を誰よりも恰好良いって思うもんなんだよ。彼氏に言ってみな。ヴォーダンの事ちょー気に入るから」

 楽しそうにそう語るヴァルセト。

 頷くファントム。

 そして一人真剣な様子で先程の敗因を研究するヴォーダン。


 そんな三人をクアンは生暖かくも微笑ましい目で見つめた。




「ここにいたか。ファントム。お前宛にめちゃくちゃ重たい荷物が届いてるぞ」

 トレーニングルームで次の訓練を始めようとしたそのタイミングで、テイルが現れそう声をかけた。

「俺にですか? 誰から」

 その言葉にテイルはニヤリと笑った。

「ああ。送り主欄に『そなたの永遠の好敵手ビューティーエンペラーより愛を込めて』と書かれていた」

「……すぐ行きます」

 そう言ってヴォーダンは静かにトレーニングルームを退出していく。

 その様子を野次馬根性でその場にいる全員が追いかけた。

 ついでに、荷物の傍にはユキも待っていた。


「……ハカセ。どれです?」

 基地入り口でヴォーダンは標準サイズの二つの段ボールと三メートルを超える大きさの可愛らしい赤のリボンでラッピングされた箱を見ながらそう呟いた。

「全部だ。ところで今更だが、俺達も見て良いのか? 嫌なら退出するが」

「いえ。むしろ一緒に見てください。何が出て来るのか恐ろしくて……。俺、あれのヌード写真集とか出て来るような気がしてまして……」

 こめかみを抑えながらヴォーダンは溜息を吐き、意を決して二つの段ボールの内片方を開けた。


 そこは黄金色オンリーの世界だった。


「……私、あの大会をKOHOが認めた理由わかったわ。札束ビンタしたのね……」

 ユキがぽつりとそう呟いた。


 ヴォーダンは、丁寧に黄金の塊を一つずつ段ボールから出していった。

 それはただの金塊ではなくフィギュアの様な像となっていた。

 合計十一の金の像。

 それは九人の怪人とテイル、ユキをかたどった物だった。


「……うわ、出来凄くね?」

 ヴァルセトは自分の物と思われる像を見て思わずそう呟いていた。

 無数の小さな蝙蝠を従えながら独尊的な構えを取る少年のような笑顔を浮かべた吸血鬼の姿。

 それは戦闘中のヴァルセトの姿そのままだった。


「引退して最近ここに帰っていない上の方の兄妹も調べてるとは……」

 テイルは感心した様子でそう呟いた。


「……ハカセ。フューリー兄さんって銃を使うんです?」

 クアンが第一怪人の像を見ながらそう尋ねた。

「んー? まあ、そういう感じだな」

 テイルは曖昧にそう答えた。


「ハカセ。未だ会った事のない第二怪人のお兄さんは……もしかしてチェスて戦うんですか?」

 チェス台の前で椅子に座りながらナイトを指をで持っている第二怪人の像を見ながらクアンはそう尋ねた。

「いや、それはただの趣味だ。いや、あいつにとってはある意味戦いではあるか。世界大会とかポンポン出てるし」

「ほえー。二番目のお兄さんはチェスが凄いんですねぇ」

 しみじみとクアンはそう呟いた。


 テイルはぐるりと周囲の兄妹とユキを見つめた。

 皆、その像と兄弟達の事をわいわいと楽しそうに話していた。


「流石企画者というか何と言うか……良い物送ってくれたな。……金である理由がわからんが」

 テイルがそう呟くと、さっきまで静かだったヴォーダンがテイルの方を向いた。

「マッスルポイントってポイント分の金を後で郵送する制度だったらしいです。詳しくはここに」

 そう言ってヴォーダンは手紙をテイルに渡した。

「読んで良いのか?」

「はい。別に何か特別な事は書かれてませんでしたので」

 その言葉に頷きテイルは手紙を目を通した。


 合計してヴォーダンに六十マッスルポイントを送る事。

 本来ならただの金だがヴォーダンも家族誰も金を喜ばないと考えた事。

 だから家族が最も喜ぶ怪人と二人の親の最も美しいシーンを金のフィギュアとして送った事。

 作ったのは自分だから気に入らない点があれば直すから遠慮なく言って欲しい事。

 十一体の銅像では六十ポイント分にならなかったので換金率の高く美しい物をついでに送った事。


「んで、『そして好敵手となったそなたに余が最も感動したその瞬間を表現した物を贈らせてもらろう。会心の作である故しっかりと愛でるがよい』と。あの一番大きい奴だな」

「でしょうね」

「んでヴォーダン。もう一つの段ボールは何が入ってた」

 テイルはすぐに占められた段ボールを見つめそう尋ねた。

「えと、俺名義の通帳と宝石類()()が入っていました。俺は興味がないので後で欲しい物を皆で分けてください。通帳はどうしましょう?」

「通帳はお前名義のまま俺が持っておこう。安心しろ。子供の金を奪うほど飢えていない。宝石は……まあ欲しい奴で分けようか。何なら指輪とかネックレスとかに加工するか」


 指輪という言葉にぴくんと反応したユキは、関係がない話だと気づきクアンとのおしゃべりに戻った。


「わかりました。通帳は別にハカセが使って下さって構いませんよ」

「やかまし。いらんわ。それで、何で段ボール閉めたんだ」

「その……隙間埋めに『ビューティー・スペシャル・フォトアルバム』という文字が見えましたので」

「あっ」

 テイルはそれ以上何も言わなかった。


「それでさ、このでっかい箱は何じゃらほい? 縦三と四の間位、横五ちょい位かなー。これも金のフィギュアかね?」

 ヴァルセトがそう尋ねるとヴォーダンは箱のリボンを解いた。

 その瞬間に箱はバタンバタンと解体され、中身が晒された。

 それは一枚の巨大な絵画だった。


 ヴォーダンが巨大なレールキャノンを片手に空中戦艦を打ち落としているその瞬間。

 それが臨場感豊かに描かれていた。


 ただ、実際の状況とは異なり空中戦艦は煙を上げながら墜落している為幾分妄想も込められているようだった。


「ああ。……よほど嬉しかったのか。嫌いな人の船に穴が開いて……」

 ヴォーダンは苦笑いを浮かべながらそう呟いた。


ありがとうございました。


全くわけのわかない内容なのにやけに筆が進んで良くわからない内容で申し訳ありませんでした。

ただ、書いていて楽しくはありましたごめんなさい。

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