告白
琴美はもうすぐ三年生。拓也は四年。拓也の年上の彼女は地元に帰って就職するという。 拓也と彼女は一応遠距離恋愛ということになる。そんなことより琴美にとっては拓也と過ごせるのもあと一年しかないことがせつなかった。
あっという間に春が来た。拓也はさすがに就職活動で忙しくなり、学校に来ることも少なくなっていた。琴美もサークル2つにバイト、それに授業も本格的になり図書館通いと忙しくなっていた。
夏になり拓也や大地らの都合に合わせ、サークルでキャンプを企画した。最後の思い出作りかな…。そう琴美は思いながら参加した。人気者の拓也であるから、琴美が拓也と話せる機会なんてほとんどなかった。それでもよかった。拓也の姿を見て声を聞くだけでよかったのだ。
琴美はここへ来る前の日、後輩から付き合って欲しいと告白を受けた。
初めてだった。
どうしていいかわからずとにかく断った。そのあと、後輩の気持ちを考えたら切なくなった。気持ちを伝えて断られるのと、いつまでも思い続けるのはどちらがつらいんだろう。琴美は結局今のままでは、誰と付き合うこともなく大学生活を終えてしまう。でもそれでもいい。いつか拓也を超えて好きになる人ができるまで、それでもいい。そう思うしかなかった。
夜になってバーベキューをしながらの宴会が始まった。
琴美は疲れていたせいかいつもより酔いがまわるのが早かった。
誰にも気付かれないようにして、輪を抜け出した。
テントに戻りタバコを吸った。
余計に頭がふらふらした。
すぐに消して横になっていつの間にか寝てしまった。どれくらい寝たのだろうか。遠くでは賑やかな声がする。そして、タバコの匂いがした。テントの外で拓也と大地が何か話している。琴美を心配して様子を見にきたのだ。大地が琴美に声をかけたが琴美は少し頭が痛いのと、話すのが面倒で無視してウトウトとしていた。
「こいついい女だよな。そう思わねえ?」大地が言った。 「そうだな」拓也の低い声が聞こえた。琴美は目が覚めた。
「お前、こいつのこと好きなんじゃねえ。」少し笑いながら大地が言った。
琴美は息を飲んだ。拓也はなんて答えるのだろう。聞きたくない。起きている自分が嫌だった。でもこの状況から逃げようがない。耳をふさごうかとした時、拓也がライターをカチカチといじりながら言った。
「好きだよ。琴美に浮気してる。心の浮気だな。」
大地は自分で聞いておきながら拓也の答えに驚いた。
「お前がそんな風に答えるなんて、珍しいなあ。普通ならごまかすとかさぁ、お前なかなか本音言わないのに。マジだな。つきあっちゃえよ。それともキスぐらいにしておくか。」そう言って、大地はトイレにむかって行った。
…心の浮気… どういう意味。気持ちは私に向いているの。ただの浮気より重みを感じる言葉に聞こえた。だとしてもうれしくはなかった。所詮浮気。自分に本気になってくれるわけではない。そう思い、琴美の目からは涙が流れていた。気付かれないぬよう、拓也が去るのをじっと待った。