決意
アキラは母の説教を正座して聞いていた。
「何をもうあきらめているの!」
「まぁまぁそれくらいで」
「でも……」
「時間もないんだから」
「そうね」
そろそろ足がしびれてくる頃に母を制してくれたのは父だった。父は微笑みながらに手を差し出し立ち上がらせる。
「光ごめんね。立てるかい?」
「ありがとう父さん」
「さて、今の状況を説明してもいいかな」
落ち着いた声でアキラに話しかける。その声は昔聞いた父の声そのものだ。昔を思い出し目に涙が溜まっていく。アキラは目をこすって頷いた。
「ここはまだ死後の世界じゃない。神様が特別に用意してくれた、中間地点のようなものだ。だから君はまだ向こうに戻れる」
「どうやったら戻れる?」
「あの扉の先へ行けばいいよ」
そういって父が指さした先には扉があった。
「だけど光、よく考えなさい。きみはここまでよく頑張った。異世界でたった一人、訳も分からず怖かっただろう?ここで終わってもいいんだ。君はここまでどれだけ傷ついてきた?もうこっちに来てもいいんだよ」
心配してる父の目を真っすぐと見返した。
「いや、行くよ。母さんにも言われた通りやるべきこともある。それに……」
アキラの視線が母に移る。
「俺がやり遂げたいんだ!」
アキラは目に涙を溜めながらも笑う。
「そういうと思ったよ。じゃあこれを持っていきなさい」
アキラの決意を聞いた父は、小さな青い宝石を手渡す。
「これは?」
「君が暗黒魔法に負けないように、私たちからの贈り物だよ」
「ありがとう。父さん母さん、行ってくるよ!」
そういって扉へ向かおうとするアキラを柔らかなぬくもりが包んだ。
「さすが私の子よ。光」
母がアキラを強く抱きしめる。
「あなたを残していってしまってごめんなさい。本当に大きくなったわね。強くて優しい、本当にいい子になった。」
涙交じりに綴られる言葉。背中にあった手が、優しく頭をなでる。アキラの記憶に残る懐かしい感触だった。
「自分で決めたことは、ちゃんとやり遂げるのよ。あなたなら、きっとできるわ。でもね、何よりも……何よりもね、生きて……。こんなに早くこっちに来ちゃダメよ」
アキラの頬が母の手に包まれる。
「あなたを愛しているわ。だから、最後まで生きて、幸せになるのよ?」
アキラが母の手に自分の手を重ねる。
「うん……」
アキラの目から涙が零れ落ちる。ふと背中が暖かくなった。父が母とアキラを包み込むように抱きし
める。
「いつでも私たちは、君の幸せを願っているよ光」
「父さん、母さん。ありがとう……」
アキラは抱きしめられたまま、遠い記憶を思い出して涙を流した。
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