英雄の力
黒狼と対峙するレオンの姿は、目も当てられないほどにボロボロだ。何とか立っているものの構える剣先が震えている。レオンが後ろを見れば、同じくボロボロになり、横たわるノアールとそれを介抱するルーナ。
『ここまでか……みんな……アキラ……すまない』
巻き込んでしまったアキラ達への慙愧の念を心中でこぼし、最後の力を振り絞って剣先を安定させる。黒狼が大きく振り上げた前足をレオンめがけて振り下ろす。黒がレオンを塗り潰していく。一矢報いようとレオンが足に力を籠める。足の傷から血が噴き出す。レオンは眼前に迫る黒に向け最後の剣を振るおうとした。
ドゴン
壁を砕くような鈍い音がしたかと思うと、レオンに迫っていた黒が晴れていく。そこには、獣人のような姿をした真白が黒狼の横っ面を殴り飛ばしていた。真白はそのままレオンの前に軽々と着地した。
「真白なのか……その姿は一体……」
真白が、レオンたちを振り返る。満面の笑みで親指を立てる。
「大丈夫!任せて!」
真白は転がった黒狼に向かって走っていく。黒狼は態勢を整えると、迫る真白にとびかかる。
「獣人拳術十二型四番・卯の蹴鞠」
黒狼の攻撃は真白を完全に捉えた。手ごたえはある。しかし、真白はそれを足で受け止めていた。真白は黒狼の足を蹴り飛ばし、そのまま懐に入り込む。
「黒狼さん。行くよ!」
体勢を崩し、無防備にさらされた黒狼の腹を、思いっきり蹴り上げた。黒狼の体はくの字曲がり上空へと飛んでいく。景色が下に流れていき、収まったところで周りを見ると王宮がはるか下に見え、イソバイド王国の全景が見渡せる。訳も分からず混乱していると、自分の背中にとてつもない威圧感を感じる。すぐさま振り向くとそこには、高らかに足を振り上げた真白がいた。黒狼が見えたのはそこまでだった。突如背中に衝撃がはしり、今度は逆くの字で景色が上へと猛スピードで流れていく。黒狼はドゴォンという鈍い音を立て、地面へと激突した。できたクレーターの大きさが衝突の大きさを表している。真白は動かなくなった黒狼の上に軽やかに着地した。
黒狼が地面と激突する直前にルーナがとっさに張った結界にいたレオンたちは、呆然と見ていることしかできなかった。
「十二神型……」
ルーナがこぼす。真白は、ルーナたちに気づくと太陽のような笑顔でピースした。
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