白い部屋
真白の視界が一瞬白く染まる。黒狼の爪が空中で止まっていた。真白の周りが白い壁に囲まれている。真白が顔をあげると、そこにはルーナが立っていた。
「真白ちゃんは、絶対に守る!これ以上やらせない!」
ギャリギャリという音を立て、黒狼の爪が結界にめり込んでくる。ルーナはさらに力を籠め、結界に手をかざしている。ピキッという音ともに結界にひびが入った。徐々に広がっていき割れる直前、黒狼の毛が逆立つ。
「おまえぇぇぇぇぇぇぇ!」
「きさまぁぁぁぁぁああああ!」
割れんばかりの叫び声とともに、ノアールとレオンが武器を振り下ろす。レオンが片足を、ノアールが片耳を斬り飛ばす。
「がぁああああ」
黒狼は苦しそうな声を上げ、その場を飛びのいた。黒狼が引いたのを確認したノアールとレオン、ル
ーナは、アキラ元へ駆け寄る。
「アキラ!」
ノアールがアキラの体に触る。その体は金属のように冷たい。
「ウソでしょ……」
「アキラ……」
レオンがアキラの胸に空いた穴を見て、顔をゆがめる。
「アキラ君」
ルーナがアキラの頭を優しくなでた。そして、そこに真白とアキラを結界で守る。
「真白ちゃんはアキラ君についててあげて」
そういって真白の頭をなでる。ノアールたち三人が結界から出て黒狼へと向かっていく。
「待って!真白も……」
真白は三人の背中に手を伸ばすが、自分の腕にいるアキラに視線が映る。真白は泣き叫びながら、アキラの体を強く抱きしめた。
周りが急に静かになり、真白は顔を上げる。そこには、黒狼もノアールたちも抱きしめていたアキラすらいなくなっていた。見回してみると、ただただ無機質な白い空間が広がっている。
「ここどこ?おねぇちゃん!お兄ちゃん!みんなどこ!」
呼びかけに応えは返ってこない。不安を感じながらも立ち上がり、武器を構える。とりあえず真っすぐ歩いていく。
「こっちだお嬢ちゃん」
急に声をかけられ反射的にそちらを振り向き、ナイフを構える。
「おぉ……すごい反射神経だな。落ち着け落ち着け戦う気はない」
「あなたは!」
真白の前に立っていたのは先ほどまで戦っていた相手、初代勇者パーティの一人ウルスだった。
「なぜまだ生きて!」
真白がとびかかろうとすると、ウルスが手を前に出して、それを止める。
「まてまてまて!戦う気はないんだって!お前に頼みがあってここに呼んだんだ」
「たのみ?」
真白はナイフを下げ、ウルスを見る。よく見ると戦っていた時とは違い、体にひび割れも不自然な傷
も見当たらない。しっかりと会話が成り立っており、さっきも感じない。
「まずは、俺を殺してくれてありがとう。あのままでは故郷を破滅させてしまうところだった」
ウルスが深く頭を下げる。
「おじちゃんになにがあったの?」
「おじちゃ……一応若いころの姿のはずなんだが……まぁいいか。俺はかつての仲間に……」
ウルスが話し始めた時、何もない空中から鎖が現れウルスを縛り上げ、どこかへと引っ張ろうとしている。
「チッすまん。嬢ちゃん時間がない。これを持っていってくれ」
鎖に抵抗しながら、ウルスが真白に手を伸ばす。その手の中には光の玉があった。
「こいつは俺の力そのものだ。嬢ちゃんなら使いこなせる」
「なんで私なの?」
ウルスの体が鎖とともに突如現れたどす黒い渦にのまれていく。ウルスは真白にサムズアップしながら、戦闘中には見せなかったさわやかな笑顔を見せる。
「嬢ちゃん,家族を護りたいんだろ?」
そういって、完全に飲み込まれてしまった。真白が受け取った光の玉を見ると、小さな獣のような姿になり、真白の周りを駆けまわった後に真白の胸から体の中に入った。真白の体が暖かいものに包まれる。気づくと元の世界に戻ってきていた。目の前ではノアールたちが黒狼と死闘を繰り広げている。真白は抱きかかえていたアキラを優しく地面に下ろすと、優しく声をかける。
「ごめんねお兄ちゃん。ちょっと行ってくるね。すぐ戻るから」
そういって目をつむる。胸の奥に熱いものがあるのを感じる。その熱を、体全身に巡らせるように意識する。すると白炎が真白を包み込んでいった。おおう炎を払うように手を振ると、耳としっぽをかたどったように白炎が残る。
「ウルスのおじちゃん。あなたの力使わせてもらうね。家族を護るために!」
真白は目を開いて黒狼を見据える。足で地面を蹴ると真白は黒狼へと向かっていった。
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