最後の戦い
ウルスを倒した三人は、その場に崩れ落ちる。荒い息を吐きながら、何とか立ち上がろうと力を入れるも、全身を猛烈な倦怠感が襲いうまくいかない。三人とも満身創痍だった。このまま意識を手放しそうになった時、突き上げるような大きな揺れが意識を覚醒させた。
「な、なんだ?」
「アキラあれ!」
「レオンさん!」
アキラはノアールの指さす方を見る。そこには巨大な黒狼の腕を剣一本で受け止めるレオンの姿だった。レオンの背後には、ルーナとジャクの姿も見える。レオンは力を籠め、押しつぶさんとする巨腕から二人を守っている。レオンの腕や足がブチブチと嫌な音を立てる。食いしばった口からは血が流れる。
「うぉぉぉぉぉおおおおお!」
雄たけびとともに、巨腕を押し返した。黒狼は足をはじかれ、バランスを一瞬崩すが、俊敏な動きでレオンたちから離れ、態勢を立て直す。レオンは肩で息をして、立っているのがやっとの状況だ。ジャクがレオンに肩を貸し、ルーナが次の攻撃に備え結界をはっている。その様子を見たアキラたちは、先ほどまで感じていた倦怠感など吹き飛びレオンたちのもとに駆け出していた。
一方、距離をとった黒狼は口を大きく開ける。その口の中央に緑の光が集まって大きな玉を作り出した。
「あれは……まずい!【四獣金剛結界】」
黒狼の作り出した光球を見たルーナの前身の毛が逆立つ。ルーナは次の攻撃の凄まじさを本能で察知した。瞬間自分が使える最上位結界をなけなしの魔力をひねり出し展開する。神々しい壁が黒狼とレオンたちの間に四枚立ち並んだ。黒狼の作った光球はみるみる縮んでいき、拳のサイズまで小さくなったと同時に光線へと姿を変えルーナたちに襲い掛かる。ルーナの展開した結界が行く手を阻む。しかし、一枚目の結界がパリンという音を立てて割れる。二枚目、三枚目もそれに続くように少しは耐えるものの、次々割れていく。最後の結界にひびが入り、あっけなく割れる。目の前が緑で染まり、思わず目を閉じる。しかし、背中に暖かさを感じて、目を開けると目の前は真っ黒い靄が広がっていた。
「間に合ってよかった」
「「アキラ!」」
アキラが【黒渦】で攻撃を受け止めていた。ルーナの背中に手をまわし、真白とノアールが支えている。
「あれは何なの?」
支えながらノアールが訊ねる。
「ゾラさんが獣神となった姿です。暴走していて、もう止められない」
「くるよ!」
アキラの黒渦が光線を受けきったとほぼ同時に、前足の薙ぎ払いが襲う。
「全員つかまって!【韋駄纏】!」
アキラの足が光りお全員を抱えてその場を離れる。アキラは吹き飛ばされたかのように転がりながら全員を避難させた。
「【ブラインドカーテン】」
ノアールが、闇魔法で黒狼の視界から自分たちを隠す。アキラたちを見失った黒狼は、空中で鼻をヒクヒクと動かし匂いで行方を捜している。
「どうするの?」
ノアールが全員を見回す。全員傷だらけの満身創痍だ。このままでは、全滅は必至に思えた。
「暗黒魔法を使う」
アキラが、全員を見渡して言う。
「でも、生き物には使わないって」
「もうそんなこと言ってられないだろ。それに……」
アキラはレオンのほうを見る。
「『護ると決めたらどんなことであれ、やれるようになれ』だろ?レオンさん」
「行けるのか」
「やるしかない」
レオンはアキラの目を見る。その覚悟が視線を通して伝わってくる。レオンはアキラの手を握る。
「わかった。最後の最後で君を頼って済まない。頼む……力を貸してくれ」
「もちろん」
アキラもレオンの手を強く握り返す。
「私は何をすればいい?」
「時間を稼いでほしい。あのサイズの相手は初めてだ。あれを倒すには特大の【黒喰】をぶつける必要がある」
「わかった。私が行こう」
そういって、レオンは無理やり起き上がり剣をとる。
「私も」
そういって、レオンの横にルーナが立つ。
「ルーナ」
ジャクがそういってルーナの手を握る。
「兄さん?」
「私は足手まといになりそうだ。だから残りの魔力をすべて渡す。アキラ君、ノアール君、真白君、この国を……二人を頼む」
ジャクはルーナに魔力を渡すと、座り込んでしまった。その状態でアキラたちに頭を下げる。
「もちろん私たちも最後まで付き合わせてもらうわ。ね?真白、アキラ」
「うん!任せて!」
「必ず終わらせて見せる」
ノアールと真白は立ち上がり、レオンの隣に立つ。アキラも立ち上がり、全員が黒狼を見据えている。
「これで終わらせよう」
「「「「おう!」」」」
レオンの呼びかけにそれぞれの気合の入った返事が返ってきた。ノアールがブラインドカーテンが解け、全員が黒狼へと駆け出した。今、最後の戦いの幕が上がる。
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