戦況
アキラは戦士の慟哭に身動きを止める。
「なんだってんだよ!」
動揺するアキラをしり目に、戦士は涙を流しながらこちらに向かってくる。殴打を受け流し、泣いている顔が目の前に来る。痛いほど伝わる悔しさに、アキラの目にも涙がにじむ。
「ころ……せ……」
呟くような声に、アキラは覚悟を決める。次の瞬間、戦士の顎にアキラの足がん突き刺さる。戦士の体は浮き上がり、宙を舞った。アキラの足は黄金色に輝いている。
「望みどおりにしてやるよ!」
アキラは両手を合わせ、目を瞑る。
「【韋駄纏】!」
足の先から黄金色の光が溢れる。それは足にまとわりつく稲妻に変わった。アキラが一歩踏みこむと同時に、姿が搔き消える。まばたき程の間を置き、戦士の姿も消える。二人の消えた広場に、突如轟音が鳴り響き、地面が大きく窪んでいた。
アキラたちの去った広場をレオンたちが通る。
「なんだ、この状況は……」
がれきの山と化した広場を見て絶句する。ルーナはひときわ大きい窪みに手を触れる。
「この魔力は、アキラ君の者ですね」
「アキラに一体、なにが」
「ここにはいないようです。先を急ぎましょう」
ルーナは、広場に散らばる無念にも倒れてしまった兵士たちに目礼をし、拳を震えるほど固く握りしめる。
「この、不毛な争いを止めなくてはいけません!」
見開いた眼は決意固く真っすぐ王城を見つめる。
少し時は戻り、アキラが広場で大立ち回りを繰り広げていたころ、王城内に侵入した真白たちは、息をひそめ正門を開けようと動いていた。
「本当に誰もいないわね、これ魔法使う必要あった?」
ノアールの【見えざる(アンノウン)放浪者】のおかげで、他の人間には気づかれないのだが、それが必要なのか疑問が残るほど兵がいない。耳鳴りがしそうな静寂が支配する王城内を正門目指して進んでいく。
「あれもう一回やりたいなー!」
真白は、投石器による空中突入を痛く気に入り、未だ興奮冷めないのか鼻息が荒い。
「今度ね?今はもう敵地だから集中しましょうね」
真白を諫めるノアールも腕に真白を抱き、どこか暇そうだ。
「もう少し緊張感を持ってください」
フォグが注意する。しかし、ノアールは意に介さない。
「私たちより注意力散漫な人に言われてもねー」
ノアールは大げさにため息をつく。
「あなたねぇ!」
「ここで激昂すっるってことは、本当にあなた達は味方なのね」
そう言って、ノアールが影から大鎌を取り出す。その鎌を大きく振り下ろすと、空間が裂け、王城の廊下が見えた。しかし、裂け目はすぐに閉じてしまう。
「もう、ここは敵の結界の中よ」
ノアールの声と同時に、空間がねじれ、黒装束たちが現れた。
「開戦ね。真白!」
「はーい!」
真白もナイフを取り出して、構える。静寂の支配した王宮が、いきなり血で血を洗う戦場に様変わりした。
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