無明
暗黒魔法により、広場に黒いドームが出来上がっていた。その中で、アキラは一人の獣人の戦士とぶつかっていた。
「あんたは、何者だ?」
「・・・・・・」
相対する戦士に問いかけるが、返事は来ない。代わりに蹴りがアキラの頭に飛ぶ。しゃがんで躱し、距離を取った。
『このままじゃ、まずいな』
アキラの体を覆う光が消えかける。
『一撃が重すぎる……魔力消費の激しい【十二単】がどれだけ持つか』
考えてる間も、戦士は手を緩めない。躱すのが精一杯で攻撃が出来ない。
【代われ】
アキラの脳裏で声がした。同時にアキラの視界が変わる。そこは、無明と特訓した精神世界であった。空に浮かぶ黒喰が以前より、大きくなっているように感じる。目の前には着流し姿の無明が立っていた。
「無明!」
「今のお前では、あれの相手は無理だ。代われ」
「代われって……」
「私がお前の体を使って戦う」
「そんな事出来たのか」
「少しの間だ。その間にあいつとの戦い方を体で覚えろ」
真っすぐと目を見つめる無明に、アキラも力づよく頷く。
「やってやる」
無明はにやりと笑い、アキラの肩を叩き地面を蹴った。
現実の世界では、アキラが一瞬固まる程度の時間しかたっていなかったがその隙を戦士は見逃さない。間髪入れず、頭に拳を叩きつける。
「フム、なかなか体が出来てきたな」
アキラは拳を刀で受け止めていた。その肌は浅黒く染まり、先ほどまでとは雰囲気打って変わったアキラ。しかし戦士はそれを気にも留めず、相変わらず機械のように次の攻撃に移ろうとする。
「お前よ、しっかり学べよ」
アキラの体を借りた無明が呟く。その呟くと同時に戦士の全身の毛が逆立ち、アキラと距離を取った。ここまでで初めての後退だ。
「ほう、機械の用かと思えばそうでもないのか。惜しいなあもう少しで腕を取れたんだがな」
首を左右に回しコキコキと音を鳴らし、刀を構える。
「こい」
無明は、再度来る戦士からの攻撃を刀で受け止める。先ほどまでの防戦一方とは違う。最低限の動きで躱し、切りかかる。次第に戦士の戦い方が変わってくる。ケンカのような戦いから、武道のような規律だった戦い方に変わっていく。
「それが本領か」
次第に攻撃の速度が上がる。しかし、これを全て刀で時には片手でいなし舞でも踊るように躱し、隙を見つけては容赦なく切る。両者一歩も譲らず、互いに後ろに跳び、距離を置く。戦士が肩を前に突き出し、独特の体勢になる。
「【型】か」
無明は刀を鞘に納め、腰を落とす。戦士が弾丸のように飛び出した。
無明は、しっかりそれを見据え、目の前に来ると同時に飛ぶ。戦士が振り返る。無明が着地すると同時に、無明の背中から赤黒い血が噴き出した。
「今度は通ったな……む?」
背中から血が噴き出てるにも関わらず、戦士はまたこちらに突っ込んでくる。無明は横っ飛びで躱す。
「お主……もしや……」
なにかに気づいた無明が問いかけようとすると、体の色がもとに戻った。
「戻ったか」
戻ったアキラは、一つ深呼吸をして、目の前の戦士に改めて刀を構えた。
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