アルム王子
図書館に着くとアキラは驚いた。円形に棚が広がり、その棚すべてに本が所狭しと並んでいる。少し暗いオレンジの光が部屋を満たし、少し幻想的な光景に目を奪われているとと、中央の円卓から声が掛かる。
「姉さま!」
円卓から走ってこちらに向かってくる少年はアルムだった。
「アルム、図書館では、走ってはいけませんよ」
「すいません姉さま」
申し訳なさそうな顔をしながら、アキラの存在に気づくとアリサの後ろに隠れる。
「こんにちは、アルム王子殿下」
「こ・・・こんにちは」
一瞬顔をだしながら答えるがすぐに隠れてしまう。アキラは『施設のチビ達みたいだ』とほっこりとしてほおが緩む。
「もう・・ごめんねアキラこの子人見知りがすごくて」
「いえ、構いませんよ。それより、アルム王子はなぜここに?」
アキラがアルムに尋ねると円卓の方から一人の女性が歩いてきた。
「アルム様!いつまでおしゃべりをしているのです。さぁ、授業に戻りますよ!」
そう言いながらアルムの手を引き、アリサに会釈して円卓に戻っていった。
「あれはどなたですか?」
「王宮教師のデイスさんです。アルムは今勉学を彼女から習っているんですよ」
「なんか・・・・すごい方ですね・・・」
アキラは驚いていた。なぜなら、そのデイスという女性の頭がソフトクリームのようになっていたのだ。『あんな結び方じゃ髪が傷んでしまう』そんなことを思っていたアキラにアリサが言う。
「あぁ・・すごく、厳しい人なんですよ」
「いや髪型です。」
「そっちですか・・まぁ否定はしません。私はもう慣れましたけど。」
アリサは苦笑を浮かべながら、話題を変える。
「どんな本を観ますか?」
「歴史書のようなものと、伝承ものなどがあればそれも、あと世界地図があれば見せて頂きたいです。」
「それならこっちですね!」
アリサはアキラの手を引いて歴史書の棚へと歩いていく。アキラがふと、円卓に目を向けるとデイスがアルムに向かって怒鳴っているのが見えた。『王子相手にあんな怒鳴っていいのかね』少し気なったアキラは、円卓の方に向かう。急に方向を変えたアキラにアリサもついていく。
「なぜ、何度も教えているのにできないのですか!」
「すみません・・・」
アルムがすっかり縮こまっていると横から視線を感じ振り返る。そこには優しい微笑みを浮かべるアキラがいた。
「どこが分からないんですか?」
優しい声音でアキラが問いかける。
「あなた、何を!」
ヒステリックに声を荒げるデイスをアリサが抑え、その様子を横目にアキラはアルムの綺麗な翡翠の目を見る。
「ここが分からないんです。」
「これは?数学?それも一次方程式?」
「ハイ、そうです・・・・なぜこうなるのか分からなくて」
おどおどと答えるアルム王子にアキラは『あぁ、何でこうなるのか理解しないと先に進めないタイプか、というかこの世界にも一次方程式あるんだな』と思いながら優しい声音で話しかけ、なるべく簡単にそして、納得させるように教える。
「じゃあ問題をやってみますか。」
アキラがアルムに問題を解くようにいうと、アルムはスラスラと解いていく。答えを書き終えアキラに見せる。アキラも答えがあっていることを確認すると、指で丸を作る。すると、アルムが可愛らしい笑顔をみせ、アキラの手を握る。
「すごい!本当に解けた!こんなにスラスラ解けたのは初めてです!ありがとうございますアキラさん」
「いえいえ、アルム王子が優秀だからですよ。」
アルムはアキラに尊敬のまなざしを向ける。すると、デイスがアキラに向かってくる。『やべ、怒られるか?』アキラが身構えていると、デイスがアキラの手を握った。
「素晴らしい!素晴らしい教え方です!私、感動しました!」
「はぁ・・・」
「ぜひ、私の部屋で教育の仕方について教えていただきたく!」
「で、では後ほど伺いますので・・・」
困惑しながら伝えると「お待ちしておりますわ!」と図書館を出て行った。
「え、授業は?」
アキラが気にしていると、どうやら、アキラが説明してる時に授業の時間は過ぎていたらしい。
「アキラさんはこれからどうされるんですか?」
穢れ無き尊敬の眼差しを向け続けているアルムが尋ねる。
「この国の歴史や、伝承を調べに」
「僕も手伝います!」
「では、アルムも一緒に行きましょう!」
アルムとアリサに引っ張られ、アキラは図書館を歩いていく。
最後まで読んでくださり、ありがとうございます!
次回更新が遅れそうです申し訳ありません!