王都ティープルの状況
レオンたちは、王都の大通りを王宮に向けて歩いていく。ルーナの魔法【見えざる(アンノウン)放浪者】のおかげで、周囲の人は彼らに気づいていない。大通りだというのに人通りは少なく、街のいたるところに兵士が歩いていた。通る人は皆獣寄りの獣人だ。空は晴天にも関わらず、街中は何故かどんより暗く感じる。どこか重くのしかかるような空気に呼吸がしづらい錯覚におそわれた。
「前はもっと活気があったのに」
変わり果てた王都の様子にルーナは表情を曇らせる。
「なんか空気がピリピリしてるわね。真白、あまり離れちゃだめよ」
「うん……」
真白も街の空気を察しているのか、ノアールの手をしっかりと握りなおす。
「なぜこんなにも兵が街に出ているのだ?」
通行人よりも兵士の方が多い現状にレオンは疑問を抱く。そんな時、兵士たちの会話が耳に入る。
「レダンカでレジスタンスが何人か捕まったんだろ?元王子はいたのか?」
「それが、いなかったらしい」
「なんだ、仲間を囮にでもして逃げたか。まがいモノのらしい卑怯さだな。さっさと捕まればいいのに。そもそもあいつらの治世でどれだけの獣人が人攫いの犠牲になったか」
兵士の顔は怒りに染まり、手を握りしめている。その様子をノアールは冷めた目で見ている。
「なんか本気で怒ってるみたいだけど、今の言い分のどこに、この虐殺が正当化される理由があるのかしら」
ノアールの呟きが聞こえたのか、兵士の一人がレオンたちの方を振り返る。
「誰だ!」
レオンたちはビクッと体を振るわせ息をひそめる。真白は一層ノアールに身を寄せる。
「どうした?」
「いや、声が聞こえた気がして」
「俺には聞こえなかったぞ?」
もう一人には聞こえていなかったようで、キョロキョロとあたりを見回す。
「疲れてるんだろ。もう十六連勤だし」
「そうかもな。あー早く休み来ねぇかな」
「仕方ないだろ、今の軍は人手不足なんだ」
二人はまた世間話をしながら、、また元の方向へ歩き始めた。ノアールたちはホッと息をつく。
「ゴメン……つい」
「気にしないでノアールちゃん」
「着いたぞ、ここが王宮だ」
背中に大樹を背負うようにたたずむ王宮。荘厳な門の前には守衛がいた
。三人は門からそれて、城壁に沿って歩いていく。
「ここです」
城壁のある部分でルーナが立ち止まる。ルーナは見周りの兵士達が遠ざかったタイミングで、壁に手を当てて小さく何かつぶやいている。それが追わると、兵士が来ないことを確認しつつ壁を押す。城壁の一部が横に移動し始め、人ひとりが通れそうな幅が開いたところで止まった。四人はすぐにその隙間に体を滑り込ませる。そこはすぐに下り階段になっていた。ルーナが魔法で明かりを灯して、しばらく降りる。すると、開けた部屋に出た。
しばらく使われていないであろう部屋は少しかび臭い。ルーナは部屋に置いてあったカンテラに魔法の灯りを移す。
「ここの奥が、王宮の地下倉庫に繋がっています」
魔法の連続使用により、肩で息をするルーナをレオンが座らせる。
「ルーナさん大丈夫?」
真白は心配そうにルーナの手を握る。
「大丈夫よ真白ちゃん。でも少し休ませて」
ルーナは、真白の頭を空いてる方の手で優しく撫でる。
「本当に優しい子」
ルーナが愛しそうに真白を見つめていると、来た道の方から足音が聞こえた。すぐにレオンとノアールが二人を庇うように立ち、武器を構える。足音が徐々に近くなり、カンテラの灯りが侵入者を照らした。そこには、人寄りの獣人の青年がいた。それを見たルーナが、目に涙をにじませる。
「ジャク兄さん!」
「ルーナ?ルーナじゃないか!」
青年もルーナをみて驚いたように目を見開いた。レオンが武器をおろし、ノアールにも武器を下ろすように頼む。
「大丈夫だ敵じゃない。あの方はジャク・サレインこの国の王子だ」
「ジャクサレインだ。元王子だけどね。レオン、良くルーナを守ってくれた」
「ありがとうございます」
レオンは片膝をつき頭を下げる。
「兄さん、良かった!」
ルーナは立ち上がり、ジャクを強く抱きしめる。ジャクもルーナを抱きしめ返した。
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