王都ティープル
アキラは、獣人拳術を教えてもらってから恒例となったレオンたちとの手合わせを終え汗を拭う。
「アキラは本当に入らなくていいのか?」
「はい。俺にはルーナさんの結界魔法が訊きませんから」
アキラは、目の前に広がる巨大な樹木を中心に建てられている街を見下ろす。イソバイド王国の王都ティープルだ。
アキラ達は今ティープルの北にあるニキ山の中腹に潜伏していた。もう街の中には人寄りの獣人はおらず、他国の人間もいない。そのため、王都の様子を偵察するには、ルーナの【見えざる(アンノウン)放浪者】という自分を周りから隠す魔法を掛ける必要があるのだが、アキラは【暗黒魔法】の影響か、ルーナの魔法を無効化してしまった。そのため、もし見つかった場合話がややこしくなりそうなソフィエルとここに残る事になっていた。ルーナとレオン、もしもの時、ここに離脱させるためノアールがついていくことになった。何故か断固として行くと言い張る真白もついていくのだが、ついていきたい理由を尋ねても首を振るばかりだった。
「本当に行くのか?危ないんだぞ?」
「そうですよ真白ちゃん。アキラ君と一緒にいた方が」
まるで親のように真白を心配する二人に真白は真っすぐと二人を見る。
「いかなきゃいけないの!」
真白の決心が固かったため、ノアールの傍を絶対に離れない事を条件に同行を許された。アキラが改めて理由を聞いたときの真白の答えは不思議なものだった。
「泣いてるから行かなきゃダメなの」
「泣いてる?誰が?」
「分かんない。でもあそこで泣いてたの」
そう言って真白は、ティープルの中心に生える天を突くほどの大樹を指さした。
「そうか、お前がやらなきゃいけないと思うならやってみな。でも、危なくなったらすぐノアールたちに助けてもらうんだぞ」
そう言って真白の頭を撫でる。真白は嬉しさと悲しさが同居したような微妙な表情だった。
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