獣人の誇り
アキラたちは、獣人の国イソバイドの王都・ティープルへと向かっていた。朝からハードな特訓をしたにも関わらず、何が楽しいのか満面の笑みを浮かべ、ルーナの手を取って歩いている。
「ティープルってどんなところ?」
「そうですねぇ、街の中心におっきいい木が生えた綺麗なところですよ」
「へー!どれくらいおっきいの?」
「あそこの木の何百倍も大きいですよ」
そう言って、ルーナは、道の脇に生えている巨木を指さす。中々の大きさだが、ティープルにある大樹はさらに多きいらしい。
「すごい!お兄ちゃん!お姉ちゃん!この木よりおっきいんだって!」
真白はアキラとノアールを振り向き興奮気味に話す。
「それは楽しみね」
ノアールは真白に微笑みかけ、レオンとアキラに声を潜めて訊ねる。
「王都はもう反乱軍に占拠されているのでしょう?どうするつもり?」
「今回の反乱は不明な事が多すぎる。まずは王都に向かいつつ情報を集めるほかあるまい」
「俺もレオンさんに賛成。判断するには明らかに情報不足だ。今のところ、特に変わったことはないけど、まだこの国の街や村がどういう状況なのかもわからないからな」
「しかし、真白さんが居てくれてよかったですね」
ソフィエルは前を歩くルーナたちに目をやりながら、悲しそうに言う。
「そうですね、姫は気丈にされていますが、相当ショックでしょう。しかし、真白のおかげで気が紛れている」
レオンも沈痛な面持ちだ。そんな中アキラは少し考え込む、その様子を察したノアールが声をかけた。
「どうしたの?」
「いや、あの隠密?だったっけ?襲ってきた奴あいつに言ってたことが気になってな」
「言ってた事?」
「『獣人の誇りを取り戻す』って言ってたじゃん。獣人の誇りって何なんだろうって」
アキラの疑問にレオンが答える。
「獣人は護る種族なのだと、私の師匠が言っていた」
「護る種族?」
「あぁ、獣人は皆、力の化身である獣神の子供、力の子のわれらは、弱気に手を伸ばし、虐げられるものを助け、自らのすべてをもって護る。それが獣人の誇りなのだと仰っていた」
「じゃあ、今回の反乱も何かを護るため?それだったら、人を殺してもいいのかよ」
アキラは少しいらだった様子だ。それをノアールが宥める
「落ち着きなさいよ。向こうがどんな意図でつかったかなんて、わからないでしょ?何の意味もなく言ったかもしれないじゃない」
「そうだな、すまん」
アキラは剣呑な空気を抑える。すると、前を歩いていた真白たちが前を指さしてこちらを振り向く。
「皆さん!あれ!」
ルーナの慌てた様子に何事かと全員がその方向を見る。そこには小さな村らしきものがあった。しかしその村からは黒煙が上がっている。アキラは、火事でも起きているのかと思い身体能力強化で視力を上げる。見た光景に思わず声上げた。
「なんだこれ!」
「どうした!」
アキラの声に、レオンが状況を訊く
「獣人が獣人を……殺してる」
まさしく、アキラが見たのは、人寄りの獣人を獣寄りの獣人が、剣で刺し殺しているところだった。
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