特訓開始
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影絵のような世界の中、アキラは無明と刀を合わせる。アキラの喘鳴と甲高い立ち合いの音が響く。バランスを崩したアキラの胸を、無明が刀で貫いた。
「ガハッ」
口から息と共に、どす黒い血が零れ落ちる。無明がアキラの胸から刀を抜くと、血が噴き出した。アキラはそのまま倒れ込む。
「体の軸がぶれている。それと、お前のその刀を片手で振る癖を直せ。居合でもないのに片手で振ってどうする」
無明は、刀に突いた血を振り払いながらアキラに説教する。すると、倒れていたアキラが、胸をおさえながらむくりと起き上がった。
「胸貫かれても生きてるって、不思議な気分だな」
「ここはお前の精神世界。ここではいくら死のうとも、肉体が死ぬことはない。いくらか精神が消耗する程度だ」
「だからって、もう6回目だぞ」
「まだ6回だ」
平然と言い放つ無明に、アキラは冷や汗を垂らす。
「と、言いたいところだがもう戻った方がいい。」
無明の言葉に、ホッと息をつく。
「にしても、刀の扱いは意識して直していくしかないとして、体の軸か」
「一緒にいる、あの男の獣人に教えてもらうと良い」
「レオンさんに?てかなんで知ってんだよ」
「我はお前の刀。刀を通して外を見ていただけの事」
「そんなことできんのかよ」
「獣人ならば、獣人拳術が使えるはずだ」
「獣人拳術?」
聞きなれない単語に首をかしげる。
「獣人が生み出した武術の一つだ。人よりの獣人が獣よりの獣人に対抗するために生み出された武術だが、統合された今、獣人ならば誰でも使えるはずだ」
「詳しいな」
無明は、昔を思い出す。戦場で会い、刃を交え、分かり合った獣人の男のシルエットが、脳裏に浮かんだ。数少ない心地よい記憶に、思わず口元がほころぶ。
「昔、獣人の知り合いがいたのだ」
「へー」
無明の様子に気づくことなく、アキラは一つ引っかかることがあった。
「ここからどうやって出るんだ?」
「簡単だ、起きたいと願いながら」
「願いながら?」
「死ねばいい」
「ふざけんな!」
アキラが抗議の声を上げたのと同時に、いつの間にか後ろに回り込んでいた無明の刀が胸を貫く。消えゆく意識の中、無明の声がアキラの耳に届いた。
「ついでに、瞑想を覚えろ。そうすればいつでも、ここにこれる」
アキラの視界が、真黒になった。
アキラが布団から勢いよく起き上がると、空はまだ暗かった。胸に手をやり、服をまくって体を確認する。刀傷は無く、きれいなままだった。夢の中での傷が現実に反映されていない事に安堵する。そろそろ、火の番を交代しようとテントを出て、レオンたちの下にm向かう。すると、先にレオンたちがアキラに気づいた。
「アキラくん?どうしたの?」
ルーナは、起きてきたアキラを、座らせて飲み物を渡す。
「目が覚めたので、交代しようかと」
「まだ、交代にはまだ少し早いが良いのか?」
「はい、大丈夫です」
アキラは受け取った飲み物を啜る。火で温めただけの白湯だが、寝て下がっていた体がじんわりと暖かくなった。
「ん?スゴイ汗だな、夢見でも悪かったか?」
「えぇ、まぁ」
「どんな夢だったのですか?」
ルーナが心配そうに尋ねてくる。アキラは、さっきまで見ていた夢の内容を全て話した。
「君の持ってる剣は妖刀だったのか」
「レオンさん、知ってるんですか?」
「怨念がこもった武器は使用者を蝕み狂人に変えるという。こちらでは、魔剣というが、極東の刀を使う地方では、妖刀というらしい。君の剣がそれだったとはな」
「レオンさん。俺に獣人拳術を教えてくれませんか?」
「もちろん構わない」
「それなら私が!」
レオンが承諾した時、ルーナが立ち上がった。
「姫は……ちょっと」
「なんですか?レオンよりも私の方が拳術に限れば強いんですからね」
意外な事実に、アキラはレオンの方を向く。
「そうでなんですか」
「あぁ、そうだが、その……」
「もう夜遅いので、そうですね、朝にでも教えてあげます!」
そう言って、ルーナは軽い足取りでテントに向かって行く。レオンはそれを見送ったあと、アキラに向き直った。
「教えてもらえば分かると思うが、ルーナ様の教え方は少し独特でな、イソバイドでもついていけるものがいなかったのだ」
「なるほど」
二人で話していると、交代の時間になったのか、ソフィエルがやってきた。
「アキラさん早いですね。レオンさん交代します」
「えぇ、目が覚めてしまって」
レオンは立ち上がり、ソフィエルに礼をしてテントへ向かって行った。ソフィエルは火を挟んでアキラの向かいに腰を下ろした。空には星が輝き、月もまだ高い。まだまだ夜は明けそうになかった。
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