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世界の話と力

 異世界郵便サービスという二人が去り、食事をとり終えたアキラたちは、それぞれ、装備の確認や、明日の準備をして、テントを張っていた。アキラとレオンが寝床の用意を終え、一息つく。そこに、ルーナ、ソフィエルから、魔法を教えてもらっていた真白がやってきて、アキラの膝上に収まる。真白がアキラを見あげ、無邪気な笑みを向ける。


「おにいちゃんがいた世界のお話聞きたい!」

「ん?俺のいた世界の話?」

「それは気になるわね」


ノアールやルーナたちも気になるのか、こちらにやってくる。


「んー何から話そうかな」


そう言いながら、顎に手を当て考え込む。そして一つ一つ、真白にもわかりやすいように例えを交えながら、この世界で三度目の日本の事を喋り始めた。アキラは、うんうんと目を輝かせ頷く真白の姿が、自分の世界の話を子どものように目を輝かせ聴いていたアリサの姿と重なり、笑顔になる。


「随分平和な世界なんだな」


レオンが腕を組みながら考え込む。


「世界というより、俺のいた国が平和だっただけかな。よそだと戦争もあったし飢餓もあったみたいだし」

「へー、魔法もないのにどうやって戦うの?剣を突き合わせて戦うのが主なのかしら?」


ソフィエルは、皇帝の娘らしく戦いやら武器やらの話が木になっているようだ。


「いや、銃を使うのが普通だと思うけどな」

「じゅう?」


真白が可愛らしく首を傾げながらアキラを見あげる。


「銃ってのは、んーなんて言えばいいんだろう。こう、なんかパーンってなって、勢いよくこのくらいの鉄の塊を飛ばす武器かな?」

「よくわかんない」

「とにかくすっごい武器だ。当たり所が悪ければ即死だからな」

「へーそうなんだ」


真白は興味を失ったようだが、レオンとソフィエルはまだ興味津々だったため、少し詳しく話す。


「仕組みは良く分からないが、引き金を引くだけで銃弾とやらを飛ばせるのだな」


レオンは、アキラのざっくりとした説明から完成像を創造しているようだ。


「アキラさんは作れないんですか?」


ソフィエルはアキラに詰め寄る。その目に星がついているところを見ると、新しい武器の実物を見たいようだ。アキラはソフィエルを抑えながら首を振る。


「無理ですよ。さっきも話した通り、どうやって作るのかとか、中がどうなってるとか一切知らないし、仮に作れたとしても、弾の調達も加工もできませんよ」

「そうですか……」

「それに、魔法の方が汎用性あるし、遠距離攻撃ならそっちの方が優れてると思いますよ。そもそも、俺のいた世界の人間の素の戦闘力が違うみたいだし、銃も役に立つかどうか……」


そこまで言って、レオンを見る。ここまでの旅路で、自分の何倍もあるイノシシを、真っ向から素手で受け止めて、ひっくり返すレオンの姿が思い浮かんだ。


『思えばゲルニカさんも、岩斬ったり、飛んで来る矢を手でつかんだりしてたからな。銃弾全部剣で切って向かってくるとか平然とできそう』

「どうかしたか?」

「いや、レオンさんなら、銃弾全部はたき落としそうだなぁと」

「実物を見てみないと何ともいえないな」


談笑していると、アキラの腕の中から規則的な寝息が聞こえる。


「難しい話してたものね」


そう微笑みながら、ノアールが真白を起こさないように抱え上げてテントへと運ぶ。そのまま、警戒のために火の番をするレオンとルーナ以外はテントに入り寝ることにした。


「少し寝たら交代します」

「あぁ、ゆっくり休むと良い」

「おやすみなさい」


アキラはレオンとルーナに会釈をして、とこについた。




 アキラは気づくと妙な空間にいた。そこは以前の黒い夢のとは違い、森の中だとはっきり分かる。しかし、影絵のような、白と黒の世界だった。自分の手や体には、しっかりと色があり、はっきりと見える。周りを見渡すと深く笠をかぶる和服の男が切り株に座っていた。その手には刀が握られている。


「あんた誰だ?ここは?」

「ここはお前の夢の中」


そう言いながら男は笠を取る。あらわになった顔は傷だらけだが、年齢はアキラと同じくらいのだと感じられる。顔の傷に驚いているアキラを無視し男が続ける。


「われの名前は……そうだな、無明とでもしておこう」

「無明って、俺の刀の銘じゃねーか」


アキラは訝しみながら無明と名乗る男を見る。


「やっと見つけたのだ。われの殺意に呑まれぬ者を。お前に頼みがある」

「頼み?」

「われの悲願。それは魔王配下、七魔の一人テズを殺す事」

「テズを?何で?」


聞き覚えのある名前を聴き、テズの顔が脳裏に浮かぶ。


「テズは自分の退屈を埋めるために、当時、札遊びのうまかったわれの妹をさらい、飽きたからと、無残にも殺したのだ」


男は語りながら、顔が歪み鬼の形相に変わる。


「その後、われはテズに挑んだが、及ばずに殺されてしまった。われの魂は、強い憎しみにより、われの愛刀と同化し、その中でずっと、テズを殺す事だけを考えてきた。しかし、この刀を持つ者は皆、われの殺意に呑まれ気がふれてしまう。」

「無明を持っていても、呑まれない俺に仇を取ってほしいってことか」

「左様」

「無理だな」


アキラは、きっぱりと拒否をした。夢の中にも関わらず、空気が冷たくなるのをリアルに感じる。男が、口を開こうとするのを、アキラは遮る。


「そもそも、俺はテズと戦うために旅をしているわけではない。お前がテズを殺したいのと同じように、俺にもやらなければならないことがある。それが終わったら、もう殺し合いだの戦いだの、する気はないんだ。もしテズが俺にちょっかいをかけてきて、俺の大事なものに手をかけるならお前の頼みも聞けると思うが確約はできない」

「なるほど、ではもし、お前がテズと相対したら奴を殺してくれると約束してほしい」

なおも食い下がる男にアキラは少し同情する。

「分かった。もしテズと会ったときはやってやる。でも、あいつを倒せないって判断したら、逃げるからな」

「その条件で構わぬ。かたじけない」


そういうと、男は、頭を下げる。真黒な地面にぽたぽたと雫が落ちる。アキラはその姿を見て、むねが締め付けられた。


「頭なんて下げなくていい。果たせるか分からないんだから」


アキラは男に頭を上げさせて、ここから出ようとするが、顔を上げた男は上を刀で差す。そこには、黒い靄の塊が球場に渦巻いていた。


「なんだアレ?」

「あれはお前の中にある暗黒の魔法」

「あれが暗黒魔法?」

「そうだ、詳しいことは分からぬだが、あれはお前にもともとあったものではない。あとからお前の中に入ってきたものだ」

「あとからって、あんなの食った覚えないぞ」

「分からぬ、あれは、私がお前のものになった時からここにいた、そして、日に日に大きくなっていっていた。今は止まっているようだが」


アキラは、靄の渦を目を凝らしよく見てみる。特に何かが中心にあるわけで話無く、黒い靄の集合体のようだ。見ていると安心感が湧き、体が解けていく感覚に襲われる。


「おまえ!」


男の声で我に返ったアキラは、自分の体から煙のようなものが出ていることに気づいた。しかし、それはすぐに引っ込み、いつもの体に戻る。


「なんだ今の?」

「気をつけろ。気を許せば取り込まれるぞ。あれは欲の塊だ」

「欲の塊?」

「あれは、おそらく欲から生まれた力。際限ない欲から生まれた力は溺れるには大きすぎる。呑まれればお前もお前の仲間もただではすまんぞ」


アキラは自分が暗黒魔法の力に溺れる所だったことに気づいた。冷や汗が頬をつたう。自分が仲間を暗黒魔法の手にかける最悪のビジョンが浮かぶ。


「呑まれないためにはどうすれば良い?」


アキラは、男を見る。


「強くなるほかあるまい。お前の意思は強い。われを抑えられるほどだ。気を付けていれば、そう簡単には取り込まれないだろう。しかし、純粋な強さが足りない。あれに頼らなくても良い力を身に着けるのだ」

「そんなのどうやって……」

「丁度よい。われが鍛えよう。お前にはテズを殺してもらわなければならない」


男はそういうと、刀を抜く。煌めく刀身は影絵の世界では、月光のような美しい光を放っていた。


「鍛えるって剣術か?」

「左様。正直お前の剣術は見るに堪えぬ。お前はまだ刀を正しく使えていないのだろう。われの持つ全てそなたに渡そう。さぁ、刀を抜け」


そう言われてアキラは自分の腰にいつの間にか無明が刺さっていることに気づく。


「ちょうど、もっと強くならなきゃって思ってたから願ったりかなったりだ!」


そう言って無明を抜き、構える。


「いざ、参る」


男が宣誓し、白黒の世界に刀がぶつかり合う音がこだまする。




間が空いてしまい申し訳ございません。

最後まで読んで頂きありがとうございます!

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