スマトリプタン王国
アキラがカロナール帝国での大立ち回りをし、一週間がたっていた。スマトリプタン王城に戻ってきたアリサは城内の中庭で自身の召喚獣たちに囲まれていた。真っ白なペガサス。人よりも大きい白銀のオオカミ。赤い目のウサギ。どの動物も、アリサにすり寄り、眠っている。ふと、アリサの膝の上で丸くなっていたウサギが耳をピコピコさせ、目を覚ます。
「どうしました?ディティ?」
「姫様姫様!昇さんたちが来ます!」
ありさの膝上をピョンピョン飛ぶ。騒がしくしたせいか、あくびをしながらオオカミが起きてしまった。
「あの小僧か」
ペガサスがすかさず0口の悪いオオカミを諫める。
「失礼ですよ。ハクロウ」
「良いのよリフィ。ハクロウ昇の前でそんな風に言ってはダメよ」
アリサはそう言いながら、ディティとリフィを撫でながる。ハクロウはフンと大きく鼻息を吹き、そっぽを向いた。そんなハクロウを見て苦笑するアリサの下に、ディティの予告通り、昇達がやってきた。全員この世界の私服を着ていた。
「昇、凛、達也、どうしました?」
「アリサに聞きたいことがあるんだ」
昇が真剣な表情でアリサの目を見る。
「何でしょう?」
「なんで、ヒカル君に俺は勝てないんだ?」
「昇は勇者なのに、こう何回も負けるなんておかしいでしょ?何か知らないアリサ」
「俺も、あの山本に昇が遅れを取るのはおかしいと思うんだ。何かカラクリがあるんじゃないのか?」
三人はアリサに詰め寄り、アリサは眉をピクリとさせながら、考え込む。そして、決心したように口を開く。
「皆さんにはまだ早いと思い、お伝えしていなかったのですが、もう、魔王の暗黒魔法には光魔法による攻撃は通じません」
「え?なんで?」
「それは」
「それは、暗黒魔法は、常位魔法とは別次元にあるからだ」
アリサが説明しようとしたときに、ハクロウが、眠そうにしながら会話に割って入る。
「この世界の魔法は、火、水、雷、風、光、闇、無の七属性だ。だが暗黒魔法はそのどれにも属さない。あれは今まであった魔法の上の次元の魔法なのだ。上の次元の魔法に対して、下の次元の魔法など効くはずなかろう」
「じゃあ、どうすれば」
答えを知ろうとハクロウを見る。ハクロウは昇の方を見てため息を吐く。
「小僧、お前はこの王宮の書庫に入ったことはあるか?」
「へ?いやない」
突然の質問に、変な声が思わず漏れる。ハクロウはその返答を聞いて、呆れた視線で昇を見る。
「今は、そんなこと関係ないでしょう!意地悪しないで教えてよハクロウ!」
しびれを切らした、凛がハクロウに詰め寄る。呼ばれたハクロウは毛を逆立てて、凛に向かって吠えた。ハクロウの威嚇により、凛はヒッと小さく漏らし、その場に尻餅をつく。
「ハクロウ!」
アリサがハクロウを叱りつける。ハクロウは、拗ねたようにそっぽを向き、地面に伏せた。
「ハクロウがすみません」
「いや、こっちも凛がごめん」
「ちょっと!なんで私が……」
アリサと昇が互いに謝り合う。威嚇された凛は、達也に支えられながら不満を漏らした。
「アリサは知らないのか?」
達也がアリサに訊く。
「暗黒魔法に対抗できるのは、神性光魔法だけです。しかし、皆さんにはまだ早いと思いお教えできませんでした。すみません」
「いや、アリサのせいじゃないよ。神性光魔法か、どうすればそれを覚えられるんだ?」
「うちの王国筆頭魔導師が教えてくれるはずです。明日には、皆さんに教えるように話をつけておきますね」
「ありがとう、アリサ。みんな行こう」
昇達が行こうとしたとき、アリサが、昇の手を両手でつかむ。
「待ってください」
「アリサ?」
急に手を掴まれた昇は、顔を赤らめながらアリサを見る。アリサは目を閉じ何かを詠唱し、それが終わると昇の体が光に包まれた。すると、訓練でついた傷が消えていく。
「無理しないでくださいね」
アリサはそう言って微笑みかける。
「あ、ありがとう」
「凛、達也もこっちへ」
アリサは、達也と凛にも同じように訓練でできた傷を癒した。
「皆さん、無理はしないように」
昇達は、手を上げてそれにこたえる。
「あぁ!任せてくれ!」
「任せて!アリサ!」
「やるだけやってみるぜ」
そう言って王宮へ戻っていった。アリサは視界から昇達が見えなくなると、中庭に腰を下ろす。風が冷たく感じて少し身震いをする。そうすると、召喚獣たちがアリサを包む。
「これで姫様寒くない?」
「えぇ、ありがとうディティ」
アリサがウサギを撫でると嬉しそうに耳をピコピコさせる。
「そろそろ、部屋に戻られては?」
「んーん。もう少しここにいたいの。気遣ってくれてありがとうリフィ」
ペガサスが心配そうに、アリサの頬に鼻を擦る。
「しかし、あの三人で大丈夫なのか?こちらの世界に来てずいぶん経つのに、こちらの世界の事を知らなすぎるだろう」
「大丈夫よ。昇達は勇者としてここに来たんだもの」
「まぁ、わしはこの世界がどうなろうが、アリサさえいれば構わん」
「フフ、ありがとうハクロウ」
アリサは、近くに横になったハクロウに背中を預けた。真っ白な召喚獣たちに囲まれるアリサは、日差しの加減も相まって、神々しくすら見えた。そこに、書類を抱えたアルムが通りかかる。アルムはその光景を見て、悔しそうに口を結び小さく呟いた。
「絶対に許さない。必ず強くなって見せる」
アルムはその場を足早に去り、薄暗い廊下を王宮へと歩いて行く。その足音は、はっきりと廊下に響いた。
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