アキラの秘密
目覚めたルーナは、ソフィエルとレオンを見ると安心したのか、涙を流しながら二人を抱きしめる。アキラや真白たちは一旦席を外し三人でルーナに何か軽いものでも作ろうと、小屋についていた台所で料理を始めた。アキラが食材を洗い、ノワールと真白がそれを斬っていく。ノワールはチラチラと真白を気にしながら、危なっかしい手つきの真白を見守っていた。アキラが鍋に水をくんで戻ってくると、真白はノワールに自分が皮をむいた食材を、まるで見つけた宝物のように見せていた。微笑ましい光景に思わず顔を綻ばせていると、アキラに気づいた真白が駆け寄る。
「見てみて!お兄ちゃん!綺麗に剝けたの!」
「お?すごいな!上手だぞ」
「エヘヘー」
褒められて可愛らしい笑顔を咲かせる真白に、アキラとノアールも思わずにやけてしまう。二人に後は任せて、屋外にあるトイレに向かう。個室に入って、用を足していると扉がノックされた。
「入ってまーす」
軽い返事を返すと、レオンが真面目な声で話しかけてきた。
「アキラ、少し話がある」
「なんですか?」
「ここではなんだから、場所を変えよう」
真剣な様子を声から悟ったアキラは、手早く用を済ませトイレからでる。そこには、アキラを真っすぐ見据えるレオンがいた。
「話ってなんですか?」
「とりあえずあそこまで行こう」
そう言って小屋の近くにある丘を指さす。そこには一本の気が生えており、夜更けだからか吹き抜ける風が少し肌寒い。辿りつくとレオンがアキラに頭を下げる。
「ルーナ姫の救出を手伝ってくれたこと、本当に感謝する」
「いや、いいですよそんな」
「いや、この恩は必ず返す」
「そんな大げさな」
「俺はこれから、イソバイドに戻り反乱を鎮めに行く」
「もう、反乱は確定なんですか?」
トムの疑問にレオンは悲痛の面持ちで顔を伏せる。歯を食いしばり、毛が逆立っている。
「あぁ。姫様のいう事が本当ならもう反乱は始まっている。それに私も疑問に思ていたことが反乱の話で腑に落ちた」
「そうですか……まさか一人で行くんですか?」
「あぁ、姫様はここにいた方が安全だからな」
「俺達も協力しますよ!」
アキラの提案に微妙な顔をする。
「それはできない」
「何でですか!」
「アキラ、君は……何を目的に動いている?」
レオンが真っすぐとアキラを見る。その目は何かを探るような視線だ。風が吹き、枝を揺らす。葉がカサカサと音を立てる中でも、レオンの言葉はハッキリと、輪郭をもってアキラに届いた。
「目的って、それは真白に家族を」
「そうだろうな。君が彼女の事を、大切にしていることは良く分かる。それが一番の目的なのだろう。しかし、それだけじゃないだろう」
「何を根拠に」
レオンから顔を背け精一杯の反論を試みる。
「スマトリプタン王国で手配され逃げたのに、何故同盟国のカロナールに逃げた?」
「それは……」
アキラは拳を、強く握りしめる。その様子を見ながら、レオンが続ける。
「何故危険を冒してまで皇帝と一対一で戦闘する必要があった?」
何も答えなくなったアキラの、強く握りしめられた手を取る。その手は人間の手ではなく、動物の毛がモフモフに生えている。その手から伝わる温かさが、幼いころ握った父の手を思い起こされた。アキラの手を両手で包み込み、アキラを見る。
「私は君に、恩返しをしたい。君が私を手伝ってくれたように私も君を手伝ってやりたい。トイレで一人、泣いている君を、これ以上見て見ぬふりはできない」
アキラは驚いてレオンを見る。その目は、子どもを心配する父親のような優しい眼差しだ。アキラの頬に、一筋の涙が流れる。自分が泣いていると気づいたときには、もう遅かった。せき止められていた水が流れ出すように、次から次へと涙が零れ落ちる。レオンは声もなく泣くアキラの手を決して離さなかった。落ち着いたアキラは、憑き物が落ちたようにスッキリしていた。
「お見苦しい所をお見せしました」
「いや、それだけ耐えてきたんだろう。それで、聞かせてもらっても良いかな?」
アキラは観念して語りだす。
「詳細は、ノアールたちにも話すのでここでは端的に言います。俺は今、スマトリプタン王国を救うために動いています」
アキラは高校生が背負うには、あまりにも重すぎる使命を打ち明けた。
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