皇帝対魔王の決着
皇帝とアキラの間に割り込んだ光は、スマトリプタン王国により召喚された勇者・高山昇だった。勇者の名に恥じない、黄金の鎧と聖剣は神々しく輝いている。
「二人ともやめろ!」
剣を抜き、アキラに向ける。後ろの帝城から、凛、達也、アリサが出てくる。そこに、顔を真っ赤にした皇帝の怒号が空気を震わせる。
「邪魔すんなぁ!今いい所なんだぁ!」
思わず耳をふさぐほどの声量に、圧倒されている昇の目の前までアキラが迫り、立派な鎧に守られた胸を蹴り飛ばす。昇は気づくも何もできず、城の方へ吹き飛ばされる。糸の切れた人形のように飛んでくる昇を達也がキャッチする。
「大丈夫か!」
「昇に何すんのよ!」
せっかく止めに入った昇を蹴り飛ばしたアキラを睨みつけながら魔法を放つ。
「【アイスアロー】!」
無数の氷の矢がアキラに向かって飛んでくる。アキラは冷静に右手を構える。
「【黒渦】」
現れた黒い渦は氷の矢を次々呑みこんだ。すべての矢を呑みこんだ後アキラは、手を上に向ける。上空に黒い靄が現れドーム状に広がっていく。
「【暗黒結界 夜】」
アキラと皇帝を真っ黒なドームに囚われる。結界が閉じきる前にアキラは昇達の方を見た。
「お前らはまだ、お呼びじゃないんだよ」
訓練所場には大きな半球状のドームが完成した。
皇帝は見回しながら、あごひげを撫でる。
「ほう、これが暗黒魔法かぁ」
「この結界内では魔法が一切使えない」
アキラの言葉を聞き、先ほどとは打って変わり上機嫌になる。
「ほうほう、それはなかなかに俺好みだぁ」
薙刀を構える。
「さすがに、魔力の強化なしに勝てると思ってねぇよ。ここにあんたを入れたのは話がしたいから
だ」
「話ぃ?」
つまらなそうな顔をする皇帝は、少し考え、いたずらを思いついた子供のような顔になる。
「なら、お前が俺に勝てたら話を聴いてやろう!」
そう言うと、アキラに飛び掛かる。刀で受け止め、後ろに跳ぶ。
「いやいやいや、勝てないから!」
「ハハハハハ!」
アキラの声も耳に届かなくなっている皇帝に内心ため息をつく。
「このバトルジャンキーが!俺が勝ったら話聞けよ!」
刀と薙刀が何度もぶつかり合う。しかし、地力、経験のどちらも劣っているアキラは皇帝の薙刀さばきに翻弄される。次々と体を斬られ、血だるまになって転がされる。紙一重で皇帝の攻撃をしのいでいたが、ついに【無明】を弾き飛ばされのどに薙刀を突きつけられる。
「フム。筋が良いなぁ。俺の相手をしてここまでできれば大したものだ。あと数年もすれば、強化なしでも俺に勝てるかもなぁ」
ガハハと笑いながら薙刀を下げ、地面にドカッと座る。
「勝ったのは俺だが、久々に楽しい戦いだった。その礼にお前の話とやらを聞いてやろう」
その言葉を聞いたアキラは、暗黒魔法で体を覆う。その様子に肯定も「おう?」と戸惑う。靄が霧散し、アキラが現れると体についていた傷は全て綺麗に消えていた。
「おいおい、魔法は使えないんじゃなかったのか?」
「暗黒結界を使っても。暗黒魔法は無効化できないみたいなんだ。無効化する効果も無効化してるみたいでな」
「じゃあこの空間は、こっちは魔法使えないのにお前は暗黒魔法を使えるってのかぁ?ただでさえ暗黒魔法は対抗手段が少ないんだ。こんな結界いらないんじゃねぇかぁ?」
「今回はあんたを外と隔離する目的もあったし、途中妨害もあったからな」
「なるほどなぁ、それで、そこまでして俺にしたい話ってなんなんだぁ?」
アキラは懐を漁って一枚の紙を巻物上にしたものを取り出し、それを皇帝の目の前に広げる。それを見た皇帝は目を見開き驚きの声を漏らす。
「おいこれって……」
「話を聴いてくれるか?カロナール帝国皇帝、グース・タイレイン」
アキラの話を聞いた皇帝は、眉間にしわをよせ考え込む。
「一つ聞いても良いか?」
皇帝の問いにアキラはうなずく。
「なぜ、暗黒魔法を戦闘で使わなかった?」
アキラは一瞬驚くが、自嘲気味に笑みを浮かべ答える。
「暗黒魔法を制御できるようになってから誓ったんだ。暗黒魔法で生き物を傷つけないって」
皇帝はその様子を見ると大きく息を吐き、立ち上がる。その姿はそびえ立つ岩山のように、どっしりと、そして力強かった。
「お前を信じよう」
皇帝の言葉を聞くと同時にアキラは結界を解除する。夜が明けるように結界が消えていく。昇や様子を見に来ていた帝国兵たちが皇帝とアキラ確認しこちらに向かってくる。
「ありがとう。グース皇帝」
アキラの感謝の言葉にグースが振り返ると、影の中にアキラが消えていくところだった。
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