皇帝参戦
アキラから放たれた暗黒魔法のモヤが晴れると、鎧がはがれ、目を固く閉じて倒れ込む帝国兵たちがいた。帝国兵たちはゆっくりと目を開け、自分の存在が消滅していないことを確認すると、安堵する。同時に暗黒魔法を目の当たりにし、恐慌状態に陥り、その場から離れようとした。逆に、錯乱しアキラたちにむかっていく兵もいた。
「結構数を減らせたな。真白、離れるなよ」
「うん!」
「ピンチになったら、【黒喰】を呼ぶんだぞ」
「分かった!」
真白は肩に浮かぶ黒い球を見る。黒い球には分かりづらいが、目と三日月型に避けた口がある。
「よろしくね、黒喰さん」
黒喰は真白の呼びかけに、頷くようなそぶりを見せる。
「なんか自我があるように動くなそいつ」
暗黒魔法であるはずの黒喰を不思議におもうアキラをよそに、残った帝国兵たちが消滅しなかった武器を持ち、アキラたちに向かってくる。
「良し、行くぞ!」
「うん!」
真白は、前もって買っていた、杖を構える。以前だした白炎とはちがい、赤い炎を飛ばしていく。帝国兵の前に着弾させ、足を止める。その隙に、アキラが近づく、鞘付きの無明で殴り飛ばしていく。次第に、応援の兵も集まり、人数差で押されていくものの、帝国兵もアキラの暗黒魔法を警戒して攻めきれない。そんな膠着状態が続いていると、上から言い争う声が降ってきた。
「おやめくださいグース様!あなたに何かあったらどうするのですか!」
「えぇい!うるさい!お前らばかりずるいぞ!わしにも戦わせろ!あ、魔王!そこで待っておれ!すぐに行くからな!」
声の主を探すと、一室の窓際でもみ合う黒騎士と皇帝の姿だった。周りの兵が、またか・・・・・・という顔をしているあたり、いつものことのようだ。アキラも真白も唖然としていると、皇帝が窓から飛び降りた。その姿は、黒の鎧に身を包み、通常よりも大きい薙刀を片手にしている。この黒い砲弾が地面に激突し、土煙を盛大に巻き上げる。敵味方共に、見つめていると、薙刀が振り抜かれ、土煙を引きはがす。好戦的な笑みを浮かべ、アキラを見る。その目は獰猛な肉食獣のように鋭い。
「お前ら下がれぇ!ここからは、オレが引き受ける!巻き込まれたくなかったらとっとともどれぇ」
そう叫ぶ皇帝の怒号は、山も動かすのではと思うほど威厳に満ちていた。空気を震わせ、その場の時を止めた。言葉の意味を理解した帝国兵は、アキラの暗黒魔法を目の当たりにした時よりも恐怖に満ち、我先にと安全なところまで走り去っていく。取り残されたアキラは真白を後ろに庇い一歩も動けない。かろうじて、平静を保っているものの牢屋で出会った時とは別物の気迫に押され気味であった。
「さぁ魔王、舞台は整った。思う存分やろうではないかぁ!」
皇帝から消して目をそらさず、どうするか必死で考える。
『ここで皇帝が出てきたのは、ある意味幸運だ。だけど、真白がいる』
アキラが後ろの真白に目をやると、真白の影が波打ってるのが見えた。影からノアールが飛び出し、アキラの前に降り立ち、皇帝と対峙する。
「おねぇちゃん!」
「こっちは、終わったわよ。予想外の事もあったけど」
皇帝から目を離さず話すノアールに、真白を引き渡す。
「アキラ?」
「お兄ちゃん?」
真白だけを押し付けるアキラを、訝しみながらみる。
「やることが出来た、真白を連れて行ってくれ。オレも必ず戻る」
「何言ってるの?」
「早く行け!」
「あとでちゃんと説明しなさいよ」
そういうと、抗議する真白を連れて影の中に消える。ノアールたちが無事行ったことを確認したアキラは、今まで鞘に納めていた無明を抜く。
「付き合ってやるよ皇帝」
「そう来なくてはなぁ」
心底楽しそうに笑う皇帝とひたいから汗を流すアキラ。しばらく見つめ合い、二人の姿がぶれて消えた。薙刀と刀がぶつかり、鐘の音のように甲高い金属音が響き渡る。それが、魔王と皇帝の激しい戦いが開戦した瞬間だった。
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更新が遅れてしまいもう仕分けございません。




