黒龍
帝都に移動させられたアキラは鎖で壁に縛り付けられていた。
「あー、痛い」
アキラの顔は腫れあがり、体中痣だらけになっていた。現在アキラの檻の近くにはレオンはいない。帝都に移送された後、別々にされた。
「はぁーもう少しかな?」
看守が大柄な男と漆黒の鎧に身を包んだ騎士を二人連れてやってきた。薄暗い檻の中のため、顔が見えないが誰かは大体わかっていた。
「お前が魔王か?なんだかただのガキにしか見えんな」
男は顎の無精ひげを撫でながらアキラを観察する。
「あんたの言う通りただのガキだよ。皇帝様」
アキラはかすれる声を絞り出して答える。
「お前、暗黒魔法使えんだろ?」
「だったら、なんだよ?言っとくが使えるからって」
「もったいねぇな」
「は?」
「処刑の前に俺と闘り合わないか?」
「は?」
アキラが今までにない反応に呆れている皇帝mの両脇にいた騎士がため息をつきながら校庭を諫める。
「おやめください、グース様。相手は魔王なのですよ?」
「でもなぁ、暗黒魔法の使い手と戦うなんてきっと二度とないぜ」
「何と言おうとダメです」
「カールは相変わるず頭が固いな」
皇帝はやれやれと肩を落とす。アキラはそんなやり取りを見て思わず吹き出す。
「プっ」
「お?死刑囚のくせに笑う元気があるか」
皇帝は子供の用に笑いながらアキラを見る。
「処刑を取り消してくれるなら戦ってやるよ」
「おぉ!そいつは良い。だがなぁ処刑は中止できないしなぁ」
アキラの冗談めかした提案を皇帝は真面目な顔で考える。
「グース様、もう魔王は見たのですし戻りますよ。アリサ王女と勇者たちももうすぐ到着します」
「ウーム」
カールの言葉はグースには届いていない。いまだに考え込んでいる。その皇帝を看守と騎士、三人がかりで押して出て行った。
「あれが皇帝か」
皇帝の様子を思い出し笑みを浮かべる。
「期待できそうだ」
処刑会場には多くの民衆でごった返していた。この世界に現れたという魔王の公開処刑だけあって、その姿を一目見ようと集まってきていた。処刑台の真向かいには貴賓席が設けられており、スマトリプタン王国の姫アリサと昇、凛、達也の勇者一行。帝国の皇帝と漆黒の鎧を身に着けたカールを含めた四人の騎士、そして、緑色の髪をした少女が座っていた。
「これより公開処刑を執り行う!」
軍人が高らかに宣言すると、アキラとレオンが連行されるそのからだの痛々しい傷に昇達は目を背けるが、アリサだけはアキラを見つめる。アキラもアリサたちに気づいたが目をそらし、そのまま十字架に架けられた。アキラは処刑台からの景色を見回し、ゆっくりと目をつむる。レオンとアキラの十字架に火が灯った。火をともした軍人が離れる足音が心臓の鼓動とっ重なるように聞こえる。そして、離れたところで止まった。アキラは再び目を開ける。その目はアリサの視線と交差する。そして、にこやかに微笑んだ。息をめいっぱい吸い込み、最後の力を振り絞って叫ぶ。
「黒龍!」」
アキラの体から突如として大量のモヤが噴き出しドンドン天高く舞い上がる。そして、それは翼など無く蛇のように胴の長いいわゆる【龍】になり、集まっている人々を見下していた。
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