魔王捕縛
薄暗く水が滴る音が聞こえる石造りの牢獄の中、両腕を鎖に繋がれているアキラがいた。
「仲間は何処にいる!あのゲートは何処につながっていたんだ!」
「吐いたら楽になるぞ!」
アキラの前にいる二人の黒づくめの軍服を着ている看守が鞭で打ちながら怒鳴りつける。その顔は、弱者をいたぶることに愉悦がにじみ出ている。
「知らねぇよ、あれは開いた本人しかどこにつながってるのか分かんねぇんだよ」
アキラの体には無数の打撲痕と火傷の痕など生々しい傷が残る。そのあとが、拷問の苛烈さを物語っていた。何故こんなことになったのか、それは一週間前に遡る。
アキラ達一行はドイトエフと別れ、帝都に向かう馬車に乗り、カロナール帝国の首都へと移動していた。
「次の街を越えたら帝都だぞ」
「まだそんなにあるんだー」
真白が退屈そうに伸びをして空を見る。今にも泣きだしそうな空に口を尖らせる。アキラも真白と同じく伸びをするが、向かいに座る老夫婦がこちらを見てヒソヒソと話しているのを見て首を傾げる。前の街で馬を休める時までは普通だった老夫婦が何故か自分の様子を伺っている。
『なんだ?』
不思議に思っていると馬車が急に止まる。慣性の法則に従い、真白がアキラの膝へと倒れ込む。アキラはしっかりと受け止め周りを見ると真っ黒な軍服を身に着けた武装集団が御者と話し合っていた。
『帝国兵?なんでこんな一般馬車を止めるんだ?』
訝しんでいると帝国兵が馬車を囲み始めた。ただならぬ空気にアキラは真白の影に入っているノアールにささやく。
「帝国兵が囲んでる。万が一に備えて準備しといてくれ」
『分かったわ』
影からノアールの返事を聞き様子を伺う。すると、帝国兵は客席に乗り込み、老夫婦を下ろす。続いてアキラ達も降りようとして動き出した瞬間、帝国兵は剣を抜きアキラに向けてきた。
「お前が魔王・山本アキラだな」
アキラはフードをさらに深くかぶりながら真白を後ろに庇う。
「魔王?私はただの旅人ですよ?」
「だったら名前は?」
「ヤートと申します。こちらは妹のアイラです」
事前に決めていたこの世界寄りの偽名を名乗る。
「なら、そのフードを取ってみろ」
『ここまでか……』
そう思い、腰の刀に手をかけた時、馬車の床に魔方陣が広がる。アキラは魔力で身体強化をして馬車の天井を切り裂き、真白を抱えて飛び出した。客席が突然爆発する。しっかりと着地して真白を下ろした。真白もナイフを構え、ノアールが影から大鎌を携え飛び出した。
「やはり、お前たちが魔王とその一味か」
爆発の跡から先ほどの兵士が現れる。その身には傷一つない。魔力で全身を覆い防御力を上げていたらしい。
「ノアール、逃げるぞ」
「えぇ」
兵士の言葉には耳を貸さず、ノアールに伝えると兵士が突っ込んできた。アキラは突っ込んできた兵士に応戦する。お互いの剣と刀が金属音と火花を飛ばしぶつかり合う。アキラは身体強化した体で兵士と渡り合う。
「アキラ!」
ノアールが叫び、振り向くとそこには【シャドウトラベル】のゲートが開いていた。すでに真白は入ったらしくその姿は無い。アキラがゲートに向けて走り出す瞬間、とり囲んでいる兵士が魔法を使うのが目に入った。ローブを着た兵士が杖を転移掲げ唱えた。
「【マジックジャマ―】」
魔術師を中心に半球上に結界が広がっていく。その速度はアキラより早い。
「ノアール、行け!」
「でも……」
「良いから行け!」
アキラの言葉に一瞬迷うも、アキラの怒鳴り声に背中を押されゲートに入る。ちょうど結界内にゲートが入り消えてしまう。アキラは振り返り無明を構える。目の前には十人の剣や槍を持つ兵士、その奥には一人のローブを被った魔術師。
『逃げ切れるか?いや、やるしかないか』
頭に浮かぶ最悪の結果を振り払い、連携しながら攻めてくる敵の猛攻を、紙一重で躱し、刀で受け流しながら一人、また一人と確実に数を減らしていく。しかし、アキラの動きは明らかに鈍ってきていた。数は減らしているものの体力の限界が近い。そこに、馬車の爆発に無傷だった兵士が剣を振るう。残りその兵士を含め三人にまで減らすことに成功したが、明らかにレベルの違う三人の攻撃を何とか防ぎながらアキラの脳裏に暗黒魔法がちらつく。
『だめだ、決めただろうあの力は使わないって。でも、この状況を打破するには……』
そんな迷いを見透かされかのように兵士の攻撃は勢いをまし、その剣はアキラの肩を切り裂いた。痛みで顔を歪めながらも目の間の兵士達の攻撃を防いでいく。しかし、一撃、また一撃とその体に攻撃をもらう。だんだんと血だるまになっていく自分の体に死を予感しながらも、せめて一撃と玉砕覚悟で放った一撃で兵士の右腕を飛ばした。突如、背中に熱が奔る。落ちていく意識の中振り返ると。火が上がっている自分の肩と杖をこちらに構える魔術師の姿が見えた。
気絶し血みどろなアキラを魔術師がヒールをかけ止血し、残った兵士たちが乱暴に引きずっていった。
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