魔王の報せ
「グォォォオオオオ!」
地面を揺らす大きな声と共に巨大なオークが倒れ込む。周りには同じようなオークが十体程倒れていた。その対面にはきらびやかな鎧を身に纏い、一本の装飾豊かな剣を携えた高山昇が肩で息をしていた。昇達はスマトリプタン王国も南方にある小さな村にオークの群れが現れたと聴き討伐にやってきていた
「やったわね、昇」
「あぁ」
「昇」
三人はハハイタッチを交わし合う。そこに一人の女性が人より大きな真っ白い狼を伴って現れた。
「昇、ありがとうございます」
「いや、アリサとハクロウのおかげだよ」
オオカミはアリサに頬に顔を押し付けた後、昇を睨みつける。
「ハクロウ、やめなさい。今日はありがとう、またお願いね」
ハクロウを優しく諫め、その頭を撫でる。そのアリサの顔は慈愛に満ち美しかった。思わず見とれる凛が不機嫌に肘で小突く。アリサ撫で終わるとハクロウが空気に溶けるように消えていった。ハクロウは消え際にアリサの頬を舐め呟く。
「アリサ、無理はするな……」
ハクロウが消えた後、アリサは空を見上げて呟く。
「大丈夫……大丈夫よ」
まるで自分に言い聞かせるような呟きは昇達には届いていなかった。
「にしても、まさかアリサが召喚士だったなんてね」
「あぁ、今回の戦闘も大分助けられちまったな」
達也と凛がアリサに駆け寄るとアリサは笑顔でそれにこたえていた。
「一応ほとんどの魔法は使えるけど一番得意なのが召喚魔法なの、アテンの湖も召喚したユニコーンにやってもらったのよ」
「何対くらい召喚できるの?」
「今は三体ね」
「アリサはすごいな」
昇もアリサに近寄り会話に参加し談笑していると村人たちが四人に感謝の念を込めながら頭を下げていた。
「勇者様、アリサ様、此度誠にありがとうございます。おかげで村は救われました」
多くの人に感謝されることに慣れていない昇達は少し困った顔をする。
「皆さん頭を上げてください。当たり前のことをしただけですから」
「おぉ、なんて慈悲深いまさに勇者様だ」
ますます、感謝される昇達は逃げ込むように自分たちの借りている家に入る。途端に暗くなる昇が呟いた。
「当たり前の事……か」
「昇まだあの子気にしてんのか」
達也が昇の呟きを拾い尋ねる。椅子に座り大きくため息の吐いた。その様子に凛が毅然と言い放つ。
「あんなの、山本のでまかせでしょ。本当にただの人間かどうかなんてわからないじゃない」
声は強気だが凛の脳裏に浮かぶのはこちらを向いて助けを求める真白の姿だった。
【聖裁の義】の一件は、勇者パーティーに大きな影を落としていた。自分たちは何の罪のない少女を見殺しにするところだったという事実が三人の心に残っていた。
「昇、リン、達也少しいいですか?」
外で村人たちと話をしていたアリサが中に入り勇者パーティに話しかける。全員椅子に腰かけ、話し合いが始まった。
「ここから西に行ったところにタイス村と呼ばれる村があります。その村で行方不明者が多く出ていま
す。もしかすると、強力な魔物が現れた可能性があります。調査に向かってもよろしいですか?」
「あぁ、もちろんだ」
「ありがとうございます。王都から伝令が来るそうなのでそれを待ってから出発しましょう」
二つ返事OKした昇にアリサは頭を下げる。しばらく四人で談笑しているとにわかに外が騒がしくなってきた。何事かと外を見ると、王国騎士団と団長のゲルニカ、そしてアルムが来ていた。村人の合間を縫いアルムがアリサの下に来る。王子が伝令を伝えに来るという異常事態にアリサは顔をこわばらせる。
「お姉様、魔王、山本アキラがカロナール帝国のプサグルにて身柄を拘束されました」
「え……」
その言葉にアリサは呆然と自分の弟を眺めていた。
「ヒカル君が捕まっただって?」
それは昇達にも聞こえていた。
「一緒にいる髪の毛真っ白な女の子は?!」
凛はアルムに聞くもアルムは首を横に振る。
「山本アキラ以外に捕まったものはいないそうです」
アルムは淡々と告げる。
「帝都へ移送後に準備ができ次第、帝都中央広場にて公開処刑が確定したそうで、その公開処刑への出席のためにお姉さまと昇様は一旦もどってください」
ここで気がづいた、アリサは気丈に答えた。
「分かりました。昇、すみませんが調査は騎士団に任せましょう。一緒にカロナールへ来てください」
「あぁ、分かった」
「おう」
「えぇ」
昇達も了承したことで四人は王都へと戻っていく。魔王・山本アキラが捕らえられたという報せはスマトリプタン全土に広がり、多くの民がそれを喜んだ。騎士団長ゲルニカをはじめとする騎士団。メリロ・ジキロを筆頭にする城の者たちも、お店のおじさんも女将さんも街中の誰もが歓喜に震えていた。街のあちこちに笑顔が咲き誇る
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