白炎(ハクエン)
アキラの目には、紙一重でポリューションタートルの攻撃を避け続けるノアールともう一つ、隠れていたはずの真白が映っていた。その真白の様子がおかしい。真白は俯き何かブツブツ言っている。真白は、突然顔を上げ右手を前に掲げる。真白の目に光が無い。
「【集え、我望むは、敵うがつ炎の槍】」
真白の詠唱すると真白の前に炎が集まる。しかし、その炎は少しおかしかった。
「おいおいおい!白い炎ってヤバいんじゃ!」
そう、普通なら赤いはずの炎が、白かった。アキラは即座にポリューションタートルの後ろに回るために
走り出す。湖のへりを蹴り、濁った湖の上を飛びながら、ノアールに声をかける。
「ノアール!真白を止めろ!」
そう言った瞬間、真白の魔法が完成した。真白の前には、神々しい光を放つ白炎の槍が出きていた。その炎じはジリジリと空気を灼く。
「【フレイムジャベリン】!」
勢いよく放たれた。ポリューションタートルは迫る熱源に気づき、真白の方に向こうとした瞬間、白い炎の槍はその硬い皮膚どころか甲羅も貫き、容易くポリューションタートルから命を奪った。無慈悲な槍はポリューションタートルを貫いた後も消えず、対岸の森へと向かって行く。そこに、ポリューションタートルの背後に跳んでいたアキラが槍に向かって手をかざす。
「【黒渦】!」
アキラの手から出た黒い渦は神々しいほど白い槍さえも、その黒に呑みこんだ。
「ふぅ、てうわぁ!」
そのまま、アキラは濁り切った湖の中に落ちた。真白は、すでにこと切れているポリューションタートルにまだ攻撃しようと、光ない目で薄ら笑いを浮かべ次の魔法の準備にかかっていた。それをノアールが後ろから片手で目を覆い、もう片方の手で真白を抱きしめる。
「もういいのよ、真白、もう大丈夫、よくやったわ」
そこで、真白は力が抜けたように崩れ落ちた。それをしっかりノアールが支える。手をどけると、真白は気を失っていた。ノアールが真白を心配していると湖からザバァと音がした。【汚染毒】に汚染されている湖からアキラが出てきた。アキラの顔には、【汚染毒】に侵され変色していたが、陸に上がると消えた。『毒の効果が消えた?何でだ?』疑問に思いながらもアキラはおもむろに暗黒魔法を眼前に展開し、その黒い靄をくぐる。すると、さっきまで濡れていた服や体から水分が抜けた。濡れた部分の水だけを消滅させたのだ。
『もしかして、汚染毒の効果も消滅させたのか?』そんな風に考えながらも真白とノアールの下に駆け寄る。
「大丈夫か?!」
「「真白!」」
二人で呼びかけると、真白はうっすらと瞳を開けていく。
「お兄ちゃん・お姉ちゃんカメさんは?」
「覚えてないのか?」
「真白が魔法で倒したのよ」
「私が?お兄ちゃんが倒れてから・・・・・・あれ?」
真白は、ポリューションタートルを倒したことを覚えていないらしい。ノアールは、真白を背負い街に戻る。アキラは、暗黒魔法で一部溶けているポリューションタートルの甲羅の一部を、えぐり取り帰路に就いた。
道すがら真白は、二人から説教を受けていた。
「良いか?人の話は必ず聞くこと。それに、一人で突っ走らない事。必ず俺かノアールについてきてもらう事。今回は俺達が間に合ったから良いけど、あと一歩で、死ぬところだったんだぞ?」
「ごめんなさい、でも・・・・・・」
なお、言い返そうとする真白に、普段真白にだだ甘なノアールが珍しく厳しい口調で言う。
「良い真白?自分の命を、軽く考えるのはやめなさい。あなたが、死んだら悲しむ人がここには二人もいるのよ」
真白は、ノアールが自分のために怒っている事が分かり、涙を流しノアールの背中に顔を埋める。そして、声を絞り出す。
「ごめんなさい」
そんな真白の頭をアキラは撫でる。
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