王都に向かう馬車の中で
王女アリサと同じ馬車に乗ったアキラは、いろいろな話を聴いた。まずここは地球ではないことを再確認し、今向かっているスマトリプタン王国では稲作が盛んで、近郊では魔物が出る多く出る森がある事、その魔物を狩っている狩人という人達がいる事などを教えてもらった。ついでに、アリサの隣にいる壮年の男性は、王国騎士団の団長で、名前は『ゲルニカ』である事も聞いた。そして今度は、アリサが目を輝かせながらアキラの話を聴いていた。
「私のいた国でも、稲作をやっておりました。島国だったので多くの魚介類も取れましたね。みんな裕福に暮らしてましたし、私の国は戦争をしてませんでした」
アキラの話に目を輝かせながら相づちをうつアリサに、ゲルニカはため息をつき、侍女は微笑ましそうに目を細めていた。
「なるほど、ところでアキラさんの歳はおいくつですか?」
アキラが一通り日本の事を話し、侍女のメリルからお茶をもらっているとアリサが質問してきた。興味の対象が日本からアキラに向いたようだ。
「十七歳ですね」
「同い年なのですね」
「そうなのですか、なら、呼び捨てにしてください。さん付けはどうも背中がむずがゆくて」
「ですけど・・・・・・わかりました。アキラも敬語なんて使わなくてもいいんですよ」
アキラは隣から殺気を感じ目を向けると、ゲルニカが視線を向けていた。『なれなれしくすんなよ?いいな?』と、視線が語ってる。敬語を外したらどうなるかわからない。
「さすがに、王女様に敬語を使わないのは、失礼にあたるので」
「私は気にしないのですが・・・・・・」
沈黙が降り、気まずくなったのか、アリサは話題を変える。
「ご家族はいらっしゃるのですか?」
一瞬どう答えようか考えたが、正直に話すことにした。
「両親は十歳の時と十五歳の時に亡くなりました」
一瞬空気が張り詰めた。すぐにアリサは申し訳なさそうに口を開く。
「すみません!無遠慮な事をきいて・・・・・・」
「いえ、気にしないでください。二人とも余命の分かる病気だったので、ちゃんとお別れもできましたから。私自身も特に気にしていないので」
「そうですか・・・・・・」
先ほどとは違う種類の気まずさが馬車内を支配した。アキラは内心ため息をつきながら,話題を変える。
「もう自分の中で吹っ切れていることなので、お気になさらないでください。それよりもアリサ王女様の御家族はどのような方なのですか?」
「えっとですね・・・・・・父様はとてもやさしい方です。民からも人気の高い王なのですよ。少し、いたずら好きでヤンチャですが。母様もとてもやさしい方で、料理がお上手なんです。怒るとすごく怖いですが。あと、弟がいます。すごく真面目な子で次期王になるために、いろいろな事を学んでいます」
アリサは少し遠慮がちに答えた。アキラは言葉の節々に滲む、尊敬や親愛を感じ、この人は家族が大好きなんだなぁと微笑ましく思った。
「それはとても良いご家族ですね」
アリサは家族を褒められ、少し照れていた。
「ゲルニカさんの御家族はどんな方なんですか?」
「わしか?」
ゲルニカは話しを振られると思っていなかったのか、驚いていた。
「息子が三人と娘が二人ほどいる。」
端的ではあるが、しっかりと答える。
「大家族ですね。」
アキラが感心していると、アリサがいたずらっぽく笑いながら口を開く。
「この前、娘さんに『パパウザい』って言われたって、へこんでいましたね」
「姫様っ!」
まさかの密告で焦るゲルニカを見て、アキラは思わずふき出してしまった。
「年ごろになると、女の子は難しくなりますよね。私の世界でもそうですよ。」
「そうか、そちらの世界でもそうなのか。」
ゲルニカはアリサに非難の眼差しを向けながら、異世界でもそうなのかと少し異世界に興味がわいたようだった。そのあともアリサは日本について聞き、アキラもこの世界について聞き、ゲルニカが家族の話をまた暴露されたりと、和気あいあいとした空気の中馬車は進んでいった。
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