真白の異変
ポリューションタートルを前に、アキラは真白を背中に庇いながら無明を構える。
「キュアアアアアアアアアアアン!」
けたたましい鳴き声と同時に、ポリューションタートルの周りから茶色い液体が鋭い槍を模して出現し、アキラたちに向かって、豪雨の如く降り注ぐ。
「チッ、【黒渦】!」
アキラが左手を前にかざし唱えると同時に、目の前に黒い靄が渦を巻きながら現れた。渦は槍を呑みこみ消滅させる。茶色い槍はアキラの近くの地面にも着弾する。地面に着弾した瞬間そこに生えていた草や花が枯れる。
「あれが【汚染毒】か」
汚染毒とは、ポリューションタートルの固有魔法である汚水魔法の副産物である。この毒にかかると、徐々に体細胞が汚染され体の機能を停止作ていく毒である。しかし、一時間ほどで汚染は抜けるため、一時間の間に汚染を薬草で食い止め続ける、もしくわ、ポリューションタートルの甲羅から作られる特効薬を打つことで、死ぬことは無い。【銀の剣】が街に行けば大丈夫と言ったのも、特効薬が無くとも、薬草で汚染を止め続ければ大事には至らないからであった。
アキラは黒渦を維持しながら次の一手を考えているとノアールが森の中からポリューションタートル目掛けて走っていく。その手にはいつもの大鎌が握られている。ポリューションタートルはノアールに気づくと魔法をそちらに向ける。ノアールはまるで踊るように華麗にかわしながらポリューションタートルに近づいてく。完全にポリューションタートルの注意がノアールに向かったのでアキラは真白を木陰に隠れるように言いつけポリューションタートルの側面に回り込み、身体能力強化を全開で跳んだ。それに気づき、振り向いたポリューションタートルの頭に無明を振り下ろす。
ガキィィィン
固い金属がぶつかり合うような音が鳴る。
「硬すぎだろ!」
悪態をつきながらアキラはポリューションタートルの頭を蹴り、ノアールの近くに着地する。
「皮を無明で切れないんじゃ、甲羅なんてもっと無理そうね」
「どうするか、このまま逃げるか」
「それは、向こうが許してくれないみたいよ」
「キュアアアアア!」
ポリューションタートルは、二人を見据え、一吠えすると、またさっきと同じ魔法が展開される。しかも、密度がさっきの比ではない程濃い。即座にアキラが【黒渦】を展開し防ぐ。
「アキラ!」
ノアールが声を上げると同時にアキラの体が後ろに吹き飛ばされる。ポリューションタートルが首をありえない速さで伸ばし、攻撃してきたのだ。黒渦で視界が遮られていたアキラは反応が一瞬遅れ、その餌食となった。黒渦は解除され、ノアールを汚水の矢が襲う。紙一重で躱しているが、躱すのが精一杯で攻撃に転じられない。
「クソ、痛ぇ」
身体強化していたため、大事には至らなかったがしっかりと痛みは感じていた。
『どうする?このままじゃジリ貧だぞ。暗黒魔法で殺すか?いや、それはできればやりたくない。どうする?どうすれば』
アキラは体を起こし前を向くと、ノアールが汚染の矢を交わしている。さらに奥に人影を見つけアキラは叫んだ。
「真白!隠れてろ!」
その声に、ノアールが気付きアキラの目線を追うそこには、俯き、なにやらブツブツ呟いている真白が立っていた。
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