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旅の始まり

アキラたちはとある宿の部屋に出た。木製のベッドに、所々カビの生えた木製の壁、部屋は少し埃っぽかった。


「うわービショビショだ」


アキラは水を手で払いながらタオルを手に取る。タオルで水滴を拭いているとアキラの背中に衝撃が走った。後ろを向くと、少女がしがみついている。その手は細く今にも折れそうなほど華奢で力もほとんど入っていなかった。アキラは背中が暖かい水滴で湿るのを感じ、少女が泣いていると分かった。アキラは優しく少女の腕を外し少女に向き直る。目線を合わせ今度はアキラが力強く抱きしめる。アキラの熱が少女に伝わる。その温かさに少女は声もなくただただ涙を流しアキラにしがみついた。


「遅くなって悪かった。ちょっと厄介なことに巻き込まれてな。もう大丈夫だ、ここにはお前を気づつける奴はいない」


アキラは抱きしめた少女の頭を撫で、背中を優しくあやすように叩く。


「あり、がとう」


少女はそう言うとアキラの腕の中で崩れ落ちた。アキラは少女を抱えベッドに寝かせる。


「辛かったんでしょうね」

「そうだな、こんな小さい子がよく耐えたよ」


ノアールが少女の頬を優しく撫でる。アキラも頷く。二人は着ていたローブを掛布団代わりに壁に寄りかかり眠りについた。


 翌朝、少女が目を覚ますと、鼻に良い匂いがつく。匂いのする方を見るとテーブルでノアールとアキラが食事をしていた。臭いにつられアキラたちの所に向かう。


「お、匂いにつられて起きたか、おはよう」

「おはよう」


アキラとノアールが挨拶をする。少女は恥ずかしそうに顔を伏せてしまう。


「ちゃんとおまえの分もあるよ。と言っても、ろくなもん食わせてもらってなかったろうから当分はスープで我慢してくれよ」


そう言って、アキラは少女にスープと飲み物を渡す。


「良いの?」


少女はおどおどしながら訊く。


「良いのよ。それはあなたのために用意したんだから」


少女は席に着き、ノアールに渡されたスプーンでスープをすくい口に運ぶ。口に入れた瞬間口の中に温かさが溢れ、その温かさはのどを通りお腹に溜まるのを感じ、少女は涙を溢れさせながらスープを口に運んでいく。自分の中に温かさが溜まっていくのを感じながら。


「口に合わなかったかしら」


ノアールの声に少女は首を勢いよく横にブンブント振る。


「ならよかったわ」

「これ、おねぇちゃんが作ったの?」

「えぇ、この宿の台所を借りてね、お口に合ってよかったわ」


ノアールは微笑みながら少女を撫でる。アキラも微笑みながら少女を見つめる。


 スープを平らげた少女は意を決し二人に向き合う。


「おにぃちゃん、おねぇちゃん助けてくれてありがとう」


お礼を言われた二人は顔を見合合わせる。


「気にしなくていい、お前名前は?」

「名前?・・・・・ない」


名前を聞かれた少女は思い出そうとするが、拾われてからずっと悪魔の子と呼ばれてた事に気づき自分に名前がない事に気づいた。


「そっか、お前これからどうする?」

「どうする?」

「なんかやりたい事とかないのか?」

「やりたいこと」


少女は考えるが一つしか思いつかなかった。


「死にたい」


それを聞いたノアールが驚き、立ち上がるがアキラが手で制する。


「なんでだ?」


少女は涙ながらに語り始めた。今まで自分がされたことを。


「今まで誰も私を愛してくれなかった、でも、今が一番幸せ、幸せな気持ちのまま死にたい」


少女の言葉を聞いたアキラは少女の頬をつねる。


「いふぁい、いふぁい」

「全く、決めたお前、俺達と一緒に来い」

「え……?」

「この世界はなお前が思ってるよりもずっと広い、お前を差別しない奴らだっている、そのスープよりも旨いものが沢山ある。お前が人生に絶望するのは早い、せっかく自由になったんだ世界を見て回って、それでも死にたいなら俺は止めない、でもまだ死ぬのは早いと思う」

「でも……」

「俺に騙されたと思ってよ。一緒に行こう」

「良いの?」

「もちろんよ!」


今まで会話を見守っていたノアールが少女を抱きしめる。


「こんなかわいい子が一緒で良くないわけないでしょ。行きましょう一緒に」

「うん……うん、うん!」


少女はノアールの腕の中で泣く。


「お前泣き虫だなぁ」


アキラは、ノアールに抱きしめられてる少女の頭を撫でる。そして、何か思いついたように手を叩く。


「そうだ!決めた!」

「何を?」

「この旅の目的だ」


ノアールと少女がアキラを見る。


「家族を作る」

「へ?」

「は?」


あまりに突飛な事を言うアキラに目を点にする少女とノアール。


「何言ってんの?」


ノアールが、闇魔法を発動しようとしながらアキラに聞く。


「あの、正気なので、叩けば治るみたいなノリで闇魔法の準備しないで!」

「もう、どういう事よ」

「この子が誰も愛してくれなかったって言ってただろ、それで思いついた。愛し、愛されると言えば家族だろ?」

「謎理論だけど、まぁ言いたいことは何となく分かるわ」


未だに良く分かっていない少女にアキラは手を差し出す。


「今日から俺たちは家族だ。俺はお前の兄貴、ノアールはお前の姉」

「???」

「そして、お前は俺達の大切な妹だ」


少女はアキラの言いたいことを理解した。『俺たちがお前を愛す』アキラにそう言われた気がして、涙を流しながらアキラの手を握る。アキラは笑顔で握り返す。


「俺は山本アキラ」

「私はノアール」

「アキラお兄ちゃん、ノアールお姉ちゃん」


大切なものを胸に刻むように少女は呟く。


「よろしくな、真白」

「真白?」


少女は初めて聞いた名前に首を傾げる。


「お前の名前、無いと不便だろ?お前の名前は山本真白、俺達の妹だ」

「何で真白?」

「え?白いじゃん」

「私のノアールと言い、見た目で名前決めるわよね」

「ばっか、白って言ったらな吉兆なんだぞ?」

「へー、じゃあ、ノアールは?」


アキラは目を背ける。


「ちょっと何で目を背けるのよ。こっち見なさいよ」

「ノアール……気にするな」


アキラはノアールの方に手を置く。


「というか、そうなると私は山本ノアールになるの?なんか変じゃない?」

「良いじゃん、ハーフっぽいよ」

「ハーフって何よ!」


そんな、ノアールとアキラのやり取りを見て少女はクスクス笑った。


「ほら、ノアール、真白に笑われてるぞ」

「真白まで……」


少し落ち込むノアールとアキラの手を取って、真白は笑顔で言う。


「ありがとう、アキラお兄ちゃん、ノアールお姉ちゃん!」


少女の白銀の瞳に光が差し、美しく輝いていた。


最後まで読んでくださりありがとうございます。

やっと真白が出てこれました。

これから、魔王一家をよろしくお願いします!

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