聖裁の義
【聖裁の義】当日、カペルの村は、お祭り騒ぎだった。中央広場には、十字架が打ち立てられ、その周りを取り囲むように人が集まる。めったに見られない悪魔の子を一目見ようと近隣の村からも人が押し寄せていた。
「悪趣味な連中だな、処刑を見ようとこんなに集まるなんて」
五十嵐達也は、顔をしかめながら吐き捨てるように言った。それを、昇が諫める。
「それだけ、悪魔って言うのは悪事を働いてるという事だろう」
「どんなヤツなのかしら、悪魔の子って」
勇者である三人は、馬車から異様に盛り上がる村の様子を見ながら、村長の家へ向かった。
村長の家の前で、中年男性が勇者たちを出迎えた。馬車から降りた、昇達に深くお辞儀をする。
「ようこそいらっしゃいました。カペル村の村長をしております。ゲテルと申します。遠路はるばるお疲れでしょう、中に食事を用意してあります。城の食事に比べたら質素でしょうがお許しください。」
恭しく挨拶をするゲテルに昇達も挨拶をし、食事をとっていると、凛が切り出した。
「悪魔の子って見れないんですか?」
村長は申し訳なさそうに答える。
「申し訳ありません、あの一件があって以来、厳戒態勢でして、処刑の時以外はお見せ出来ないのです。」
「一件って、闇精霊を連れた男ですか?」
「えぇ、わけの分からぬことをまくしたてて、悪魔の子が人間だなどと妄言を言ってうちの警備兵を蹴り倒したのです。そいつは、運悪く腰をやってしまいましてね」
「それは大変でしたね。今回私たちは聖裁の義の護衛も兼ねています。もし、そいつが現われたらお任せください」
昇の目は正義感に燃えていた。
「おぉ!それは心強い!宜しくお願いします!」
昇と村長は固い握手を交わし、【聖裁の義】が始まるまで歓談していた。
夕暮れ、空が赤く染まる中、十字架の前に、村長が立ち宣言する。
「これより、【聖裁の義】を執り行う!見届け人として、勇者様に王城よりお越しいただいた!」
村長の宣言と同時に、人々は歓声を上げる。さらに、勇者たちが十字架の前に立つとより大きな歓声が上がった。
「悪魔の子を連れてこい!」
村長の言葉通りに青年が少女の手に縄をかけ引っ張ってきた。
「これが、悪魔の子だ!」
少女をが出てきた途端に今までの完成は少女に対する、謂われない罵倒や侮蔑の声に変った。
昇や達也が周りの豹変ぶりに戸惑う中、凛は少女に目を奪われていた。
「あれが、悪魔の子?ただの白い女の子にしか見えないんだけど」
「見た目はあんなでも、スゴイ凶悪なのかもしれないだろ」
「こんなに、罵声を浴びさせられるって普通じゃないからな、相当な事をしたんじゃないか?」
凛が疑問に思うも、昇達は気にしなかった。少女は十字架にかけられ、下に敷かれた薪に火をつけられる。少女は恐怖のあまり暴れるが、手足が固定されて動かせない、必死にもがく少女と凛の目が合った。少女は力なく叫ぶ。
「助けて」
凛はもう見ていられないと目を背ける。
少女が今度は最後の力を振り絞り叫ぶ。
「助けて!」
空しく群集の喧騒に飲まれた悲痛な叫びは誰にも届かなかった。少女の足元の火の如く、赤くなった夕日は、十字架の影を色濃く地面に刻む。
「なんだアレ?」
群集の一人がい変異気づいた。周囲の人もその人と同じところを見ると、十字架の影が波打っていた。波は次第に波紋に変わり、突然、影の中から二つの影が飛び出した。うち一つの影が、腰の刀を抜き、根元から十字架を切り裂く。もう一つの影が倒れる十字架を抱えゆっくりと地面に下ろす。拘束を解き、少女を肩で支える。現われた二つの影は、両方とも黒いローブを身に纏っていた。
二つの影はフードを外し、少女に向き直る。
「遅くなって、ごめんな」
「遅くなっちゃって、ごめんなさい」
そこには、少女に優しく微笑むノアールとアキラがいた。
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