靄の正体
アキラの叫び声聞きつけ、メイドのメリロがドアをノックしてすぐに開ける。
「アキラ様!どうかなされましたか?!」
焦った表情のメリロに混乱しながらも笑顔を向け極力平静を装う。
「何でもありません。ちょっと夢見が悪くて。」
アキラの様子に安心したメリロは胸を撫でおろすと床を見て固まる。その様子に、アキラもつられて床を見て絶句する。ベットの横の床が何かに円形にえぐり取られたような状態になっていた。
「アキラ様・・・これは?」
メリロは、明るい口調、まぶしい笑顔でアキラを見る。しかし目だけが座っており、アキラは心臓を素手で捕まれたような恐怖を感じた。
「起きたらこうなってました。決して何もしておりません。」
アキラは、ロボットのようにぎくしゃくしながらメリロに釈明する。しかしメリロは笑いながら、えぐれた箇所を迂回しアキラに近づいてくる。
「起きたら、こうなっててですね、正直自分にも何が何だか。あの、だから近づいてくるのはやめて頂きたく、あの、そのフライパンは何処から?お願いします!信じてください、本当に何も知らなっぎゃああああああ!」
空が白み始めたころ王城中にアキラの断末魔が響いた。
えぐれた床を直すために、部屋を追い出されたアキラは、朝食をとり、フラフラしていると、中庭のベンチに座っているアリサを見つけた。近づいていくとアリサがぶつぶつと独り言を言っているのが聞こえた。
「アキラともっとお話ししたいのに、アキラを見るとどうも落ち着きません。話しかけられてもうまく答えられません。嫌われてしまったでしょうか?」
「嫌ってなんてないよ。」
「そうですか。それはよかっ・・・アキラ!」
「おはよう。アリサ」
「おはようございます。・・じゃなくて今の聞いてたんですか?」
顔を赤くしながらアワアワとアリサはうろたえる。
「そうだな、俺ともっと話したいってところから聞いてた」
アキラはアリサの隣に座る。
「ここのところ、アリサが俺の事避けてるから嫌われたのかと思ってた。」
「そ、そんなことないです。アキラの事を嫌いになんてなりません。」
アリサは、アキラの方を見た後、俯きながら尻すぼみに言った。そして、意を決したように顔を上げ、アキラを見つめる。アキラの目をしっかりと見ながら口を開く。
「私がテズに捕まった時、なぜか冷静になれずテズの怒りを買って殺されそうになった時、あなたは私を助けようとしてくれました。まだ、異世界に来たばかり、魔法も使えない、剣も握ったことのないあなたが、自分の命を懸けてくれました。あの時、無明に飲まれた貴方が私を殺そうとしたとき、私は自分が殺されることよりも、あなたが無差別な人斬りになってしまう事が嫌でした。同時にとても申し訳なかった。」
アキラは、ただ頷きアリサの言葉に耳を傾け続ける。
「あなたが、無明を抑え込んだとき本当にうれしかった。でも、何よりうれしかったのは、私を叱りながらも、生きててよかったと抱きしめ泣いてくれたことです。そして、そあの一件以降、力を着けようと一生懸命なアキラを見て確信しました。」
ここで、アリサは息を大きく吸い込む。そよ風が二人の間を抜け、花弁が舞う。
「あなたの事が好きです。」
アキラは、少し驚きながらもすぐに微笑む。
「俺も好きです。」
アキラの答えを聞いたアリサは涙を流しながらアキラに抱き着く。
「良かったです。本当に良かった。」
二人はそのあと、ベンチに座り、話しをしていると衛兵が焦った様子で駆け寄ってきた。
「アキラ殿!アリサ王女もご一緒でしたか!王がお呼びです!至急、謁見の間へ!」
衛兵の様子にただ事ではないと感じたアキラ達は謁見の間へ急いだ。
謁見の間には、オルクス、イリーナ、アルム、ゲルニカ、グスタフ、ジキロがそろっていた。オルクスがアキラに尋ねる。
「アキラ君、君の部屋の跡について聞きたい。あれはどうやってできたのかね?」
「自分にも、さっぱり、目が覚めたらあの状況だったので」
オルクスはイリーナを見ると、イリーナは頷く。どうやら、ウソをついていないか確認しているようだった。
「何か、心当たりはないか?変な物音を聞いたとか、その前後に変わったことがあったとか。」
アキラが顎に手をあて、少し考え込み昨夜の出来事を語った。
「変な黒い靄が出たんです、こう火の玉みたいに」
「黒い靄?」
これにグスタフが反応し、アキラに尋ねる。
「アキラ君それは今も出せるのかい?」
「分かりません」
「その靄をイメージしてみてくれ」
アキラはグスタフに言われた通り、昨夜見た靄をイメージした。すると、目の前に黒い靄が現われた。その靄を見た瞬間、アキラ以外の全員が凍り付いた。
「暗黒魔法・・・」
誰かのつぶやきが部屋の静けさに溶けていった。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
次回更新は6/28辺りになると思います!




