スマトリプタン王国の歪み
アキラは無明を携え、グスタフの家を訪ねた。木造で木の臭いがするリビングに通され、出されたハーブティーを飲む。奥からグスタフが黒い小石を持ってきた。それをテーブルの上に置き、話し始めた。
「これは、魔王石と言ってな、魔法の影響を封じる効果のある石じゃ、と言ってもこの大きさでは大した効果は無いがの。わしは王宮に行くとき必ずこれを持っていくのじゃ。」
「なぜですか?」
「今日のアリサ姫たちを見てどう思った?」
グスタフはアキラの質問には答えずにアキラの目を見て問いかける。
「変だとは思いました。何というか・・・うまく言葉にはできませんが、アリサのあんな声を聞いたのも初めてでしたし。」
「うむ、違和感を感じておるならよい。この世界には、悪魔族という種族の者たちがいる。彼らは魔力は膨大だが温厚な一族だ。スマトリプタン王国に攻撃を仕掛けたことなど一回もない。しかし、スマトリプタン王国の国民は極端に悪魔族を嫌う。」
「それはなぜ?」
「魔法による思考誘導だ。正確には、思考を誘導する作用のある結界が国中を覆っておる。」
アキラは、思わずむせかえる。
「そんな事、可能なんですか。国民全員の思考を誘導するなんて。」
「普通なら不可能じゃ、だが実際に起こってしまっておる。わしはその影響を受けないように王宮から離れ、王宮に行くときもこれを持っていく。」
グスタフが魔王石を指さす。
「一体、誰が?」
アキラは、グスタフに尋ねるがグスタフは目を伏せ首を横に振る。
「分からぬ、誰が、どんな目的でやったのかは分からないのだ」
「そうですか・・・」
アキラは考え込む、『いったい誰が、何のためにそんなものを張ったんだ?』考え込むアキラにグスタフが真面目な声で話す。
「わしと一緒にこれを解決してほしい。君は、来訪者だからか、結界の効果が無いようだだ頼む!わしと一緒に国を救ってくれ!」
「少し考えさせてください。色々な事が有り過ぎて混乱してます。明日またここに来ます」
「そうか、分かった」
アキラは、グスタフの家を出て王宮に戻った。そして、王宮にあるトイレの個室に入る。便座に座り頭を抱える。
「なんだよ、思考を誘導する結界って。ついこの間まで一般人だった俺に何ができるって言うんだよ、力なんかになれるのかよ。」
さんざん弱音を吐き、ぐるぐると考えを巡らせ答えの出ないままトイレから出る。部屋で一回休もうと思い、廊下を歩いているとアリサに会った。アキラを見かけた、アリサは声を掛けようとするが、先ほどの抱擁の感覚が思い起こされ顔を赤く染めた。アキラもアリサに気づき、声をかける。
「アリサ、大丈夫だったか?」
「だだだだだ、大丈夫ってななな何がですか?」
アリサの様子に首を傾げ、アキラはアリサとしっかり目を合わせる。目が合いそうになるとアリサは目を背ける。
「何がって、俺、アリサに切りかかろうとしたし、ショックかなぁって」
「あぁ、そ、その事ですか。大丈夫です。私の軽率な行動のせいであなたを危険にさらしました。ごめんなさい。」
『こうやって話してる分には普通なんだよな。』アキラがまた考え込み始めるとアリサが心配そうに声をかける。
「アキラ?どうしたんですか?」
その声にハッとなったアキラはアリサを見る。心配そうに自分を見る。サファイアブルーの澄んだ目と目が合う。そして、アリサを見る、頭の中にここに来てからの事が思い起こされる。そこで、決意した。アキラはアリサに微笑み口を開く。
「何でもないよ、アリサ」
微笑みを見た、アリサはまた顔を赤くする。
「そ、そうですか、ならよかったです。」
二人は、それぞれの部屋に帰った。アキラは自分のベットに寝ころび目をつぶる。ここに来てからの事を思い出す。自分に良くしてくれた人たちの顔が浮かぶ。最後にアリサの笑顔が思い出される。ゆっくりと瞼を上げる。
「あの人たちのために頑張んなきゃな」
静かな部屋に決然とつぶやいた。
最後まで読んでくださりありがとうございます!
このタイミングでしか更新できそうになったので更新しました。
全然予定通りに更新できずに申し訳ありません。




