再びカロナールへ
アキラ達はカロナール兵と共にジャクの元へ来ていた。
「おおみんな来てくれたか。そちらはカロナールの伝令兵だね。ということはみんな事態は把握しているんだね」
ジャクに呼びかけられたカイゼルが跪く。
「イソバイド王の許可もなく、領内を飛び回り申し訳ございません!」
「いいんだ、ことがことの上今この国は機能をほぼ停止しているようなものだからな」
恐縮するカイゼルの肩をジャクがそっと叩く。
「アキラたちも聞いた通りだ。スマトリプタンは奴隷解放を求め、カロナールへと宣戦布告した。なぜ急に奴隷解放なんて言い出したのかは謎だがな。君たちは途中までソフィエル様と一緒だったのだろう?君達の耳にも入れておこうと思ってね」
「ジャクさん。俺たちカロナールへ行くよ。エルフの里はその後でもいいかな?」
アキラはバツが悪そうにジャクに尋ねる。
「もちろんいいとも。そういうだろうと思ってフィルドを用意しておいた」
「「フィルド?」」
アキラと真白が同時に首を傾げる。その様子に微笑みながら、レオンとルーナが教えてくれた。
「獣人族が長距離移動に使う鳥型の魔獣だ」
「鳥さんにのれるの!?」
アキラが黒烏人追っているのを見て、ひそかにあこがれていた真白は目をキラキラさせてルーナに抱き着いている。
「えぇそうよ。」
「やったやった!」
無邪気に喜ぶ真白に全員が頬を緩める。はッと我に返ったジャクがコホンと咳ばらいをする。
「先の戦で厩舎が荒れても逃げ出さなかった子たちだ。必ず君たちの助けになるだろう」
そういって案内された庭園には、ゾウと同じくらい大きな鳥がいた。白銀の毛並みを持ち、凛々しい顔をした鷲のような魔獣だ。
「わぁーーーーーーー!」
真白は黄色い声を上げながら魔獣へと駆け寄っていく。
「危ないぞ!」
レオンが声をかけるも真白はもう魔獣の目の前だ。
「あなたがフィルド?私は真白!すっごいね!おっきいね!綺麗だね!」
魔獣はしばらく真白を観察し、頭を下げ真白に頬ずりした。
「きゃー!くすぐったいよぅ」
嬉しそうに身をよじる真白に一同安心の表情を浮かべた。
「本当に大きいな……」
アキラは日本では見たことのない大きさの鳥に、感嘆の声が漏れる。
「これに載っていけば半刻ほどで向こうまでたどり着けるだろう」
「ありがとうございますジャク様」
「いいんだよ。国を救ってくれたお礼だ。これでもまだまだ足りないんだからもっと頼ってくれ」
ジャクに改めて頭を下げると、真白の元へ向かう。ノアールもアキラとともに歩いて行く。
それを見守るレオンとルーナに、ジャクが声をかけた。
「二人は行かないのか?」
「そうですね。まずはこの国を復興せねばなりません」
「そうね、あの子たちがまたこの国に来た時、もっと賑やかなこの国の姿を見せてあげたいもの」
ジャクが二人を見ると、苦笑した。
「そんな泣きそうな顔で送るくらいなら一緒に行けばいいのに」
拳を握り、心配そうな顔でまるで戦地に我が子を送る親のような顔で涙を必死にこらえる二人。
「いやっ」
「でも」
「この国のことは任せておけ。獣人は強いそれはお前たちがよく分かっているだろう。それよりも、まだまだ幼いあの三人を守ってやれ」
二人が黙っていると遠くから呼ぶ声が聞こえる。
「レオンさ~ん!ルーナさ~ん!行かないの~?」
思わず顔を上げる二人の目に、フィルドに乗った三人が映る。早速フィルドに乗りこんだ真白が無邪気に手を振っている。その光景に自然と二人の足が前に進む。
革命の戦で懸命に共に戦った少年と少女たち。英雄から力を託されてしまった少女と暗黒魔法に魅入られてしまった少年。そして記憶を失った闇精霊。おそらくこれから先彼らは様々な困難に巻き込まれていくだろう。それを想像すると胸が締まる。この子たちを守ってあげたいといつからか親心のようなものを抱いていた。
「今行くよ」
「今行くわ」
重なる二つの声とともに二人はアキラたちのもとに駆けて行った。
遠くに飛び立ったフィルドを見送るジャクには出発前の光景が脳裏に浮かぶ。その様子が思い出されるたびに笑みがこみ上げてしまう。
「まるで家族みたいだな」
つぶやきは風に乗って晴天に消えた。
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