幸せのサプリ
小さい山村の、小さい丘の、小さい小屋で
薬を売っている少年がいた。
薬といっても、お医者様の使うようなものじゃない。
それは小さいサプリたち。
もちろん、ただのサプリじゃありません。
ある男が、悩ましげな顔でやって来ました。
「坊っちゃん、仕事に失敗しちまった。」
『じゃあこれを飲んで。』
その赤い粒は、【やる気を取り戻すサプリ】。
男はたちまち新たな仕事で波に乗り始めました。
また別の男が、悲痛な面持ちでやって来ました。
「なぁきみ、私は人付き合いがうまくできないのだ。」
『じゃあこれを飲んで。』
その黄色い粒は【社交的になれるサプリ】。
男はたちまち人気者になり、友人に囲まれました。
ある秋の日に、一人の少女がやって来ました。
「ねえ、私はね、幸せになりたいの。」
『きみは裕福だし、友人も多い。なぜそう思うの?』
「足りないわ。幸せは、多い方がいいもの。」
『じゃあこれを飲んで。』
その黒い粒は【幸せのサプリ】。
少女は喜んで走って帰りました。
後日、少女がカンカンに怒って少年のもとに来ました。
「ねえ、このサプリだけど、まったく効かないわ。」
『ちゃんと飲んでるの?』
「飲みまくっているわよ。飲み初めてすぐに嫌なことばっか起こったわ。」
『1日に一粒、ちゃんと飲んでるの?』
「10粒は飲んでるわ。それでも効かないの。」
『一粒だけにして。飲みすぎだから。』
少年が笑ってそういうと、少女はしぶしぶ帰りました。
そして二年の月日が流れました。
少年は、風の噂で、彼女が平凡で幸せな暮らしをしていることを知っています。
黒い粒は【悲運のサプリ】。
飲んだぶんだけ、幸せは奪われる。
しかしそのかわり、日常の幸せに気がつけると言います。




