異世界転生1日目 前編
異世界転生1日目です
夢を見ていた。
そう思えるぐらい現実感がなかった。
むしろ夢だったのかもしれない。
なんだかよくわからないけど微睡みの中で幸せな夢を見た気がする。
異世界転生の望みが叶って、それで裸の女神?みたいな人にぎゅっとされて・・・・。
お、おう。
確かにそれは夢だ。
そんな事実どこにも無いし、なんせリアリティが無い。
現実を見ろ。
はい、すいません。
よくわからない自問自答に終止符を打つべく俺はピリオドのむこ・・・覚醒すべく眼を開ける。
「んぶぅっ、ふぁっつ!!」
なんだ!
つめっ、てか痛っ!!
なにここ、溺れっる!
眼を開けると同時にそれは浸水してき、驚きで口を開ければ一瞬で液体が入ってくる。
再び眼をつむると溺れまいと俺は必死にもがく。
どんっ
左手に何かが当たった、そう感じた瞬間『ぱりん』と言うガラスの割れるような音と共に俺の周囲に有った液体が瞬時に引いていく。
「・・・・」
取り敢えず、手で顔にまとわりついている液体を拭う。
微妙にねっとりしてるしなんとなくアンモニア臭もする・・・なんだか悪い予感しかしない。
「ぷっは」
頭部の液体を拭い終わると、俺はゆっくり眼を開ける。
周囲は薄暗く、ごつごつした岩肌の様な壁で、よくみると意外に天井は高く4~5メートルぐらいはありそうだった。
「え・・・?あれ?なに・・・ここ」
自分の足元を視ると腰から下ぐらいまでは何か透明なガラスのようなもので覆われており、膝高ぐらいまで薄い桃色の様な乳白色の様な怪しげな液体がたっぷりと溜まっていた。
とりあえず気持ち悪いのでそこから出ると、なんとなくそこはかとない違和感を感じる。
あれ?身体ちいさくなってない・・・?地上からの高さがなんか低い気がする・・・。
ってかここどこ、と言うかあれ?ほんとゆ、夢じゃなくもしかしてほんとにホントの異世界転生・・・?
不意にフラッシュバックが起きたかのように白い部屋で遭ったことが脳内に浮き上がってくる。
俺は北山信男の人生が終了したことを悟った。
「そ、そうか・・・母さんに行ってきますって言わなかったな・・・」
こんな俺でも母さんにだけは恩を感じてはいる。
父さんの事は・・・よく分からない。
物心付いたときには居なかったし、母さんに聞いても「うん、そうね~」って適当にはぐらかされていつも終わりだったし・・・。
母さんは俺にとっての、北山信男にとっての世界の重要なキーパーソンだった。
狭く小さな世界だったけどね。
きっと母さんの事だから、慌てふためいて捜索依頼とか出してるんじゃないかな・・・。
いや、でも異世界転生に有りがちで俺の事忘れてるってこともあり得るな・・・。
それはそれでなんか寂しいな・・・。
ん?
あれそういやあの少年神、生まれ変わりって言ってなかったか?
俺なんで赤ちゃんじゃないの・・・?
ここはほら赤ん坊だけど34歳俺氏初授乳ぷry・・・恥ずかしながらもちゅぱちゅぱな甘美な世界でスタンドアップトゥザビクトリーこの向こう側に何も無くてもかまわないから、とか言いたかったです。
俺、残念無念。
異世界に来てわずか数分で膝を折る羽目に為るとは・・・・くっ!恐るべし異世界!
「ってかここホントどこなんだろ・・・」
薄暗い周囲を見渡している内になんとなく眼が慣れてきた。
振り返り自分が居た?場所?を観察してみる。
壁から生えた大きな樹木の根の様な隙間に金属とガラスで出来たような大きなカプセルみたいな・・・説明が難しいな・・・ほら、あれだベジー○タがオッスオラの人にやられて身体の傷を癒やすのに入ってた回復装置みたいな感じ・・・って俺誰に説明してんだ。
まぁいいわ、テンプレよね、これも一つの。
「取り敢えず周囲を探索せねば・・・」
このままここに居ても埒が明かないのは明白。
探索=冒険、即断即決即実行、出来る男の俺・・・・ジャスティス!
うむ。
まずは身体にまとわりつくこの液体をどうにか除去したいな。
ってか俺氏まっぱですな・・・・いやん。
よし、行こう。
ひとしきり一人遊びを終え満足した俺は周囲を探索してみる。
わずか5分で探索完了。
取り敢えずわかった事は、まず俺、ベジ○ータごっこした、液体まみれ、まっぱ、次に周囲、岩っぽい壁、床レンガっぽい感じで整備されてる、埃っぽい机とか本棚がある・・・・あとは簡素な木の扉が一枚。
「ほっほー」
あれを開けろとオレの心が揺さぶりかけて来る・・・。
ってまぁ窓もないしあの扉開けるしか選択肢、無いんだけどね。
なんとなく勿体ぶりたかったんだ。
なるべく音を出さないようにそっと扉を押す。
幸い、内側に閂がある簡素な扉だったので鍵がかかってと言う事はなかった。
ほんのすこし顔を扉の向こう側に覗かせる。
予想はしていたが、期待は裏切られず予想どうりの薄暗くごつごつした岩壁とレンガっぽい物が敷き詰められた床があるだけでこの部屋と奥の部屋の大した違いは無いように見受けられる。
勇気を出して扉を開け奥の部屋へと進む。
ぺちゃり
「!」
ねっとりとした音が後ろから聞こえてくる・・・。
まさか・・・いきなりスライム・・か、いつの間に!
勢い良く振り返りつつ距離を取る俺。
「痛っ」
裸足なの忘れてた。
裸足に石畳はつらいぜ。
しかし今はそれどころでは無い。
異世界初のと言うか人生初のビッグイベント『初戦闘』by裸Verなのだから!!
「ん?」
音の発生源と思しき場所には何も居らず、ほんのりと床湿気ておりわずかに乳白色の液体がそこには残されていた。
俺氏、自分の足元を視る。
そこにはねっとりした液体が身体を伝い足元に集約されつつあった。
俺氏、歩く。
ぺちゃり
俺氏、歩く。
ぺちゃり
俺氏、あry
ぺちゃぺちゃぺちゃ
散策を続けよう。
過去は振り返らない、出来る男の俺ジャスティス!
「よし」
なにがよしかわからない?
まだまだだな。
俺は次の部屋に入ると慌てず騒がずじっくり眺める。
中央に何か影があるような・・・薄暗くてよくわからないな。
べちゃりべちゃりと粘着系歩行で前に進む。
「椅子・・かな?」
所謂ロッキングチェアーのようだ。
後ろ向きの椅子の上にはこんもりとした何かが乗っている。
さらに近づくとどうやら布で何かを覆っている様に見える。
そっと被っていた布を取ってみる。
かたっ、かちがちゃ・・
「ごほっとごほ、ごほっ」
布に付着していたホコリが大きく舞って器官に入ったのか思わず咽ちゃったよ。
「なんかカチャカチャいってたn・・・・」
椅子の上には白い棒状の物の上にそれこそ真っ白な髑髏が鎮座し、そのガランドウな両目でこちらを覗いていた。
「っひ・・・」
どすん、べちゃ
こ・・・腰抜けた。
あまりの衝撃に尻もちをついたまま動けなかった。
幸い魔物?がいるかどうかはまだ分からないが動き出す気配もなく、どうやらここに住んでいた方のご遺体が白骨化したのだろうと推測する。
それにしても、これ以上の探索は本日は難しそうだと判断した俺は取り敢えず少し椅子から離れて時を待つことにした。
え?何故って?
そりゃもちろん足がガクブルで立てないからさ。
どれ位時間がたったかはわからない。
ぎゅるる~
時間を持て余すのは得意だから何もせず要るのは別に苦では無いんだ。
ぎゅるるる~
だけどやっぱり色々考えちゃうしまずあの少年神に一言言いたい。
「異世界にきて何を望むって、まずインフラ整えてから言ってくれ、今なら兎に角、水と飯を望むわ」
と
それにしても、現状問題がなにも解決してない感満載だし、まず水すらないこの状況。
さっきからギュルギュル蠢く俺の胃腸。
あんちゃん、俺に明日はあるのかい・・・。
愛はあるのかい・・・・。
ぎゅるるる~
しかし腹へったな・・・・。
床つめた・・・。
ねむ・・。
「はっ!寝たら死ぬ・・・かも」
やばかった。
異世界転生?転移?初日目で俺死亡とか、誰も笑ってくれないぜ。
ぼっちだけに・・・。
ぼっち・・・。
ぼっちっち。
取り敢えず、試していなかったアレを試してみよう。
異世界来たらホントはまずこれでしょう。
俺は深呼吸しゆっくりその言葉を唱えた。
『ステータスオープン』
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