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日曜日、二人でデートすることになった。
でも他の人には大翔が見えないので、劇団ひとりならぬデートひとり状態だ。
「うう、クラスの人に見られたら恥ずかしい…」
『何で?』
大翔は笑顔で返す。
「デートひとりなんてイタイ子じゃん!
それに伊織さんが…」
香奈は伊織と病院の独り言事件以来、気まずい関係になった。
『気にするなよ、柊なんて。
何があってもお前は俺が守る。約束。』
「…うん!」
二人は笑顔で歩き出した。
いろんな所に行ったせいか、日が傾き、夕方が近づいて来た。
「今日も一日疲れたなぁ…。
でも、楽しかった。」
『俺も。
退院したらまた行こうな。』
「ん…」
ちょっぴり恋人らしくなってきたなと感じたとき、その空気を壊す者がやって来た。
柊伊織である。
背筋がぞっとするように冷たく、でも美しい笑みを浮かべながらやって来た。
「何、やってんの?」
香奈は思わず目を反らした。
「何もないよ…」
「最近大翔のとこに毎日通ってんだって?
何してんの?」
伊織が近づいてくる。
香奈はあとずさりをした。
「や、お見舞いに…」
伊織の足が止まった。
「ふーん。
そうだ。いい人紹介してあげる。
香奈彼氏欲しいって言ってたよね?
この人香奈が好きなんだって。
オメデト、お似合いだと思うよ。
…ごゆっくり。」
そう言って伊織は去っていった。
やって来たのはやたらとでかい人だった。
一言では表現しにくいが、ホラ、あれだ。
生理的に受け付けないタイプだった。
「ぼ、ボク、前から広瀬さん好きでした!
ボクと付き合ってください!」
嫌だ。答えはもう決まっている。
でも逃げれない。
不覚にも捕まってしまった。
男が襲い掛かって来た。
「!いや!やめて!
種村君、助けて!」
そこに大翔の姿はなかった。