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chinese citron  作者: たまご
6/11

-6-

あれは6月くらいだったと思う。


クラスでいじめられている子がいた。


主犯は柊伊織(ひいらぎ いおり)


彼女が気に食わなかったようだ。


クラスの女子は柊には逆らえなかったから、いじめに加わった。



でも、広瀬だけは違った。


いじめに加わらないで、彼女に話し掛けに行った。


大丈夫?元気ないね。

せっかく可愛い顔してるのに、笑わないともったいないよ?

ね、これから一緒にいる?

私変なヤツって言われてるから、意外に面白いかも。


幼なじみが励ましても笑わなかった子が、初めて笑った。





『その時思ったんだよ。

ああ、この娘は他の人と違う。

温かい心を持ってる、ってね。

で、感じたんだよ。俺にはこの娘だ、って。』



香奈はそれを聞いてはっとした。


ちはるの話だった。




『人間見た目じゃないんだよ。』


大翔(ひろと)の言葉に香奈はちょっと頭に来た。


「ムカ。

そりゃ私は可愛くないけどさ…」


大翔が笑った。


『アハハ、そうじゃない。

確かに柊はキレイだと思うよ。

でもあんなに性格悪いんじゃ…な。

俺はあの時から広瀬が気になってたんだ。

そしたら木下(ちはるの事)を助けたお前がウザかったみたいで、柊はターゲットをお前に変えたんだよ。

だから俺はあいつが大嫌いなんだ。

…それに俺、広瀬可愛いと思うよ。』



顔がかなり熱くなった。


こんなにかっこいい人から、こんな事を言ってもらえる。


大翔が言ったみたいに、人は外見ではないのだろう。


でも彼は、澄んだ心を持っている、温かい人なのだ。




香奈は立ち上がった。


「ま、まぁ私が可愛いのは今更わかった事じゃないし!

でも…私は…」




その時、目の前の壁に手がのびて来た。


大翔だった。


恐る恐る振り返ると、状況は一変。



迫られていた。


香奈は心臓が爆発しそうになった。




大翔には実体がないから、香奈は逃げようと思えば逃げれた。


でも、逃げれなかった。



大翔が泣いている。




『…どうして俺は広瀬に触れられないんだろう。

こんなに想ってるのに…』




香奈は胸が苦しくなった。


「…私も、種村君に触れたい。

私だって、種村君の事想ってるよ。」


素直な気持ちを打ち明けた。




とたん、大翔が笑い出した。


『言ったね?』



やっと香奈は気付いた。


はめられた!





大翔がさっきとは違う感じで迫って来た。


大翔が大人の男に見える。


着ているのはうちの学校の夏服なのに、色気さえも感じる。



「なっ、なっ、なっ、何でそんな事するの!

さっきの嘘泣きは何ー?!」


大翔がまた笑った。

いつもの屈託ない笑い方と違う、大人な感じで。


『広瀬、ここ病院なんだから静かにしなきゃ。

それに俺がこんなに気持ちを伝えても、広瀬返事くれないんだもん。

じれったくてさ。』



逃げようと思えば逃げれる。


でも逃げれないのは、見つめ合ってるから?




もう一度、唇と唇が近づいた。

今度はお互いが接近しながら。



「あら、同じクラスの子?

夜遅くにありがとうね。」






大翔の母だった。


香奈は心臓が止まるかと思った。



大翔の母に大翔の姿は見えない。





香奈は自分がどんな顔をしてて、それを見た大翔の母がどう思っているのかを考えただけで、胃が痛くなった。


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