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chinese citron  作者: たまご
10/11

-10-

伊織(いおり)は本気でこんな奴と私がお似合いだと言っているのか。


香奈は必死に抵抗しながらそう思った。


じゃあ、もう種村君には会えない。

こんな奴とお似合いの私なんて…。




「や…やめて!手を離して!

種村君…!」


「種村は入院中じゃないですか。

しかも(ひいらぎ)さんとデキてる。

だから広瀬さん、あんなヤツ忘れてボクと…」




香奈はぎゅっと目を閉じた。


もうダメ…。






その時だった。


メリッという音がした後、ズサーッという漫画でありがちそうな音がした。



香奈はそっと目を開けた。


そこには男を蹴り倒したらしい大翔(ひろと)が立っていた。




今までと違うのは、半透明では無いところと、夏服のシャツのボタンが全部あいていたところだ。



「ごめんな、遅くなって。

お前があの男に言い寄られたとき、どうにかしなきゃ、って思ったんだ。

広瀬を助けたいって強く思ったら、気付いたら病院だった。

さすがに入院してるときの服じゃ恥ずかしいから、慌ててこれ着て来たわけ。

別に見せようとして全開で来たんじゃないからね?」



大翔は笑いながら言ったが、すぐ真剣な顔付きになった。


香奈の目から涙が落ちて来たのだ。


大翔はそれを優しく拭ってやった。


温かくて柔らかい肌。


自分の指に温かい涙がこぼれてくる。

それがくすぐったいほど嬉しかった。



そして、大翔は力の限り、強く強く香奈を抱きしめた。


「やっと触れられたな…」



そして香奈の唇に自分の唇を重ねた。


初めて唇を重ねたときとは違う、長い長いキスだった。



「…もう、二度と離さない。」







夏休みが始まって、しばらくしてからの事だった。


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