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再誕世界の黙示録(リベレーション)  作者: 那智
第一章 失われた時代
4/4

二話

ひっさびさの更新。

書き上げるのに時間かかりすぎていろいろおかしいところあるかもしれないけど今は目をつぶってください。

あとで余裕あったら修正しますので。

「お嬢様、こちらへ!」


「ええ!」


クラリス・フォン・フラウウェンは護衛の騎士に守られながら入り組んだ路地を必死に駆けていた。

今、クラリスたちは何者かによって雇われた傭兵に追われていた。クラリスは何故こんな目に、と心の中で悪態を吐くが答えが出ることはない。

フラウウェン家はゼーレンで代々有数の発言力を持つ家のひとつである。それ故に権力を望む者に妬まれることは多い。そのため嫌味を言われたり、些細な嫌がらせを受けたりすることはクラリスは慣れっこである。

だが流石に傭兵を差し向けられた経験はなかったし、それだけのことをされるような恨みを買った覚えもなかった。故に彼女は混乱の極みにあった。

だからなのだろうか。子供の頃の遊び場であり慣れ親しんでいる筈の道で迷ってしまったのは。


「そんな、行き止まり!?」


慌ててに脇道を探すが見当たらない。来た道を戻ろうにも追手はすぐそこまで迫って来ている。


「お嬢様、お下がりを」


護衛の騎士の一人であるグスルグは通路に視線を向けた。この場所は行き止まりであり敵は一方向からしか来ない。逃げる上でここに来てしまったのは不幸なことだったが戦うのなら敵が一方向からしか来ないこの地形に来たことは幸いといえた。

グスルグは今代のフラウウェン家に仕える騎士の中でも古参に入るこの男は剣を使わせれば敵うものはいないと評判の男であった。現当主に取り立てられて以降その恩を返すべく必死で訓練した結果である。

だがその彼をもってしても今の状況では表情は優れない。追手に追いつかれれば終わりだ。しばらく耐えることはできるだろうが永遠には無理だ。そのうち力尽き、グスルグたちの主の娘m、クラリスも

そんなことになればグスルグを信じて娘を任せた当主に申し訳がつかない。なにより時間稼ぎのために敵に向かって行った仲間達のその献身を無駄にすることになってしまう。

一般的に騎士というのは傭兵と違い選ばれた者だけがなれるエリートであるという認識がなされている。物語の題材になることも多く民衆達はは傭兵とは違うベクトルの憧れを抱かれている。

だが実際には騎士と傭兵の違いというものは実を言うとあまりない。簡単に言ってしまうと誰か個人に仕えているのが騎士であり、誰にも仕えず金で動くのが傭兵。その程度の違いしかない。

いやもしかしたら実践経験がある分、傭兵の方が戦いにおいて優れているかもしれない。傭兵から騎士へと取り立てられたグスルグにはそれがよくわかっていた。

だが騎士の家系に産まれた若者達の中にはそれを理解していないものが多いのが現実だ。グスルグは横目でクラリスを励ましている女性騎士を見た。


「ご安心下さい。 私達がお守りします」


「ええ、ありがとうネイ」


女性騎士の名前はネイ・マーシャル。

フラウウェン家に古くから仕える騎士の家系出身の女性だ。彼女は半年ほど前に騎士と認められたばかりの新人である。女でありながら同期の見習い達の中で一番の腕を持っており、教官たちにも筋がいい、将来は立派な騎士になるだろうと評価されていた。

だがそれだけである。あくまでその評価は将来を見据えたものであり今の彼女は新人にしては腕が立つ程度の強さしかない。

また彼女には実戦経験がなかった。なぜなら彼女の実家が今まで実戦経験をさせなかったからだ。傭兵上がりである自分は例外として騎士というのは見栄えを重視する傾向がある。その傾向は代々続く騎士の家系であるほど強い。

そのため古くから続く騎士の家系である彼女の実家はネイに相応しい初陣の機会が来るまで実戦を経験させる気がなかった。彼らの言い分は「栄えあるマーシャル家の娘にはそれに相応しい初陣を」。普通の騎士見習いが初陣として行う街周辺に出る獣の討伐ではそれに値しないと考えたのだろう。

グスルグにしてみれば騎士となる以上さっさと経験を積んで欲しかったのだが傭兵上がりの言葉など自称名家が聞くはずもなかった。ネイ自身が経験を望んでも

つまる所グスルグの彼女に対しての評価は将来有望そうなひよっこでしかないのだった。


そうこうしている間に追手の男達が彼らに追い付いてきた。

数は八人。とてもグスルグ一人だけで抑えられる数ではない。だがネイが抑えに加わったところで焼け石に水なのはわかりきっていた。それどころか彼女では返り討ちになる危険すらある。

(まずいな……ここらで俺も覚悟決めといた方がいいかもな)

いざとなれば自分の身体を盾にしてでも二人を逃がす。グスルグはそう決意した。


「いいかネイ。 俺が前に出て奴等と戦う。 お前はお嬢様から離れるな」


自分が通路で敵の抑えをし、実戦経験のないネイを万が一の時の保険としてクラリスの側に置いておく。それがグスルグの考えた最善の手だった。だがネイはそれに異を唱えた。


「私も前に出て戦います!」


「バカヤロウ! 実戦経験もない奴が何言ってやがる!」


「私も戦えます! 戦わせてください!」


「戦いを知らない素人が口答えするな! それにお嬢様はどうする気だ! お前が前に出たら誰がお嬢様を守るんだ!?」


「そ、それは……」


「びびってないのは良いことだがお前はそこでお嬢様を守れ、命令だ!」


グスルグはネイを厳しい口調で黙らせると追い付いてきた傭兵達を見渡した。

グスルグの見立てでは傭兵達の実力はさほど高くはなかった。しかし相手は八人なのに対してこちらは二人。多数に無勢だ。

だがやるしかないのだ。グスルグはあえて自分が前に出て敵を引き付ける事で


「貴様らが誰に雇われたかは知らんがお嬢様に害する気ならこの俺が相手だ」


グスルグは傭兵達に向かって剣を構える。それと同時に男達が襲い掛かった。






「あーもー! この辺ごちゃごちゃしててわかりづらい!」


お嬢様捜索のために入り込んだ裏路地で波多那は苛立ちを隠さずに叫んだ。裏路地は入り組んでいるだけでなく居住区を兼ねているらしく住居が建ち並んでいるため非常に見晴らしが悪かった。。

途中まではあの騎士が倒したと思われる傭兵が転がっていてそれが道しるべになっていたのだが途中からそれが一切なくなったので騎士が言っていた『お嬢様』の捜索は難航していた。


「付近の住人に話を聞こうにも皆荒事を恐れて家に引き込もっておるか。 ふむ、どうしたものか」


ヒルギスが頭を悩ましている横で苛立たしげに波多那が辺りを見回すと梯子が立て掛けられている建物を見つけた。おそらく屋根を修理するために使われ、そのあとこの騒動で放置されたのだろう。

それを見た瞬間ある事をひらめいた。まるで漫画やアニメのような思い付きだが、うん悪くない。波多那はその梯子に手を掛けた。


「僕は屋根の上から探してみます。 師匠は下から探してください」


「ふむ、合図はどうする?」


「銃を撃ちますからそれを合図にします。 師匠の方は声が大きいですからいつも通り雄叫びで気づけますよ」


「うむ。 気をつけろよ」


ヒルギスは波多那の提案に納得すると巨体に見会わぬ速さで走っていった。

どうしてあの巨体であれだけの速さで走れるのだろうか。場違いにもそんな疑問を抱きつつヒルギスを見送ると波多那は屋根の上に登った。

予想したとおりこの付近の建物は石造りが多くまた密集しているために通れる道には事欠かない。見晴らしも良いので人探しにはもってこいだ。特に今回のように探す相手が目立つであろう場合は。


「さて、行きますか!」


パンと頬を叩き気合いを入れると波多那は屋根の上を駆けていった。




グスルグは次々と襲いかかってくる傭兵達を相手に奮戦していた。また傭兵を一人を倒すことにも成功していた。

だが状況が良くなったとはいえない。一人倒したとはいえまだ敵は七人もいる。その上グスルグは疲れ始めていた。

疲れたとはいえすぐに戦えなくなる訳ではない。だがこのペースで戦い続ければそう遠くないうちに力尽きてしまうことは明白だった。

ネイはグスルグに言われたとおりにクラリスを守っている。なんだかんだいってクラリスを守るという役割の重要性は理解していた。戦闘が始まってからはただクラリスを守るために気を引き締めている。

ネイに守られながらクラリスもレイピアを抜いていた。

彼女は貴族のたしなみとして剣術を学び

それを納めている。だがだからといって戦わせるわけにはいかない。クラリスのところまで敵が来るというのは最悪の事態一歩手前であることにほかならないからだ。

だがその最悪の事態は刻一刻と迫ってきていた。


―――そしてついにその瞬間が訪れる。


「クソ、抜かれた!」


一人の傭兵がグスルグの攻撃をくぐり抜けネイとクラリスに迫った。

グスルグが追おうとするが今度はグスルグがほかの傭兵達に道を阻まれた。


迫り来る傭兵にネイが斬りかかる。だがその一撃は受け止められた。少なからず実戦を経験している傭兵にとって実戦に出たことのない新兵の攻撃を受け止めることなど容易だった。

傭兵はネイを殴り飛ばした。ネイは受け身を取ることもできず地面に転がった。

ネイを殴り飛ばした傭兵は彼女を追撃ぜずクラリスに狙いを定めた。―――いや違う。最初からクラリスが狙いだったのだ。


この時クラリスは死を覚悟した。たしなみとして剣術は習っていたがそれは所詮付け焼き刃程度のものでしかないことを彼女は理解していたのだ。

それでも彼女は無様に逃げたり悲鳴をあげることはしなかった。それは貴族としての意地か、それとも単に恐怖で体が動かなかったのか。


振り上げられた刃にクラリスは反射的に目を瞑る。その時だった。

―――パン。

何が破裂するような音と共にクラリスの目の前まで迫っていた傭兵は倒れた。その男の頭には穴が開き、血と脳漿を撒き散らしている。

突然の出来事にクラリスたちが困惑しているとどこからともなく声が聞こえてきた。


「みーつけた。 やっぱ探しものをする時は高いところから探すに限るよね」


突然の出来事に思わず戦いの手をやめたクラリス達や傭兵達が声のした方向を見ると屋根の上に少年が立っていた。


「どーも、通りすがりの傭兵です。 とりあえずそっちのおっさん達、死んでもらいますよ」





銃口から煙を上げるピストルを構えながら戦場となった裏路地をぐるりと見渡した波多那は笑みを深めた。遠距離には向かないピストルでの狙撃に成功したのは幸先がいい。

ピストルをしまい波多那は屋根から飛び降りるとグスルグの目の前にいた男の頭を踏み潰すように着地した。勢いのまま頭を地面に打ち付けることになった傭兵はそのまま動かなくなった。これで二人片付いた。


「受け止めてくれてありがと」


波多那はクッション代わりにされ動かなくなった男の上から悪びれもせずに退くとグスルグと対峙する男達のほうを向いた。

トマホークを油断無く構えながら、男達の顔、服装、それから装備を見て目を細める。


「ふーん、やっぱ同業者か。 ねえ、あんた達傭兵の決まり事を知らない訳じゃないよね?」


ぐるりと傭兵達を見回しまるで罪状を読み上げるかのように男たちに言葉を浴びせる。


「戦争以外での人殺しの依頼を受けるのは御法度。 もしそれを破った場合は処分されても文句は言えない、だよね?」


男達は黙して語らない。だが数人が目を逸らしたのを波多那は見逃さなかった。


「ま、そういうことだよ。 というわけでさ……覚悟はできてるんだろうね?」


男達の間に静かにだが動揺が広がった。あくまで暗黙の了解とされているとはいえ禁忌を犯す。彼らはこの依頼を受けた時点でその覚悟を決めていたはずだった。

だが改めて他人の口から言われたことで「自分は今非常にマズイ事をしている」という事実を目の前に突き付けられたのだ。

そこでリーダーらしき男が初めて声を出した。


「狼狽えるな。 そのガキもそこのやつらも皆殺しにする。 全員殺せばこの事は誰にも知られない」


その言葉を聞くと男達の動揺が収まった。おそらく開き直ったのだろう。目には明らかな殺意が宿っている。


「おお、ヤル気だねぇ。 というわけでそこの騎士さん、味方するよ!」


「あ、ああ助かる」


グスルグは突然現れたこの少年を計りかねていた。なぜ自分達を助けに来たのか。先ほど敵を殺した一撃はなんなのか。不明な点は多い。

だがそれらの疑問を解明するよりも今のこの状況を打破することが先決だ。故にその疑問を飲み込んだ。


「手前ら、ガキが一人増えただけでこの状況を切り抜けられると本気で思ってんのか? お前らはそこで転がってんのを入れても四人! こっちは六人だ! 手前らに勝ち目はねえ!」


「あははっ! バッカじゃないの? 何回も致命的なミスをしてるくせにまだ勝てると思ってたの?」


男達が人数の優位に強気になったことを嗤うように、嘲るように波多那は言葉を投げかけた。


「まず一つ! 標的を裏路地で襲ったこと! 大勢なのにこんな細くて入り組んだ道でまともに追いかけることできるわけないじゃん。 実際何人かはぐれてた奴がいたよ。

 そんで二つ! 追い詰めたことにいい気になって余裕こいて時間をかけすぎたこと! そのせいで僕が来て仲間の命が失われたね。 ホント可哀想に・・・・・・・


そう言って先ほど自分が潰した男の亡骸を蹴る。波多那の行いに仲間の亡骸を足蹴にされ男達は場違いにも怒りを覚えた。

その結果、波多那は彼らの視線を一身に浴びることとなった。その結果に波多那はにやりと笑みを浮かべる。

―――まったく、慣れない挑発をしてまで時間稼ぎした甲斐があったというものだ。


「そして三つ! ―――背後への注意を怠ったこと!」


その言葉と共に後方にいた男が吹き飛び宙を舞った。


「な、なんだ!?」


男達の一人が状況を理解できずに声を上げる。だが答える声は無い。全員が混乱しているのだから当然のことだった。

男達は混乱に陥ったその瞬間波多那が動く。


「四つ!」


傭兵の意識が背後に向いた瞬間に波多那はトマホークを振り下ろし傭兵の男の頭をカチ割った。頭に斧を叩きつけられた男が崩れ落ちる。即死だった。

数秒遅れてグスルグも敵に斬りかかり、一人を切り捨てた。これで四人。


「目の前の敵から目を離したこと! 基本が出来ないのなら死んじゃうのもしょうがないね!」


「まったくじゃのう」


傭兵達を背後から強襲した男が同意する。ヒルギスだ。彼は大剣の一振りで二人の敵を吹き飛ばし、さらにもう一振りでもう二人を倒していた。

そして最後に一人だけ残った傭兵のリーダーを取り囲んだ。


「降伏しろ! そうすれば命までは取らない!」


グスルグが降伏を呼び掛ける。傭兵のリーダーは逃げ場がないことを悟ると観念したかのように顔を伏せ―――次の瞬間、己の首に刃をあてた。


「大いなる蛇に栄光あれ!」


一声叫ぶと刃を引いた。首から血を溢しながら傭兵のリーダーが倒れる。止める間もなかった

グスルグが倒れた男に駆け寄る。だがすぐに首を振って男から離れた。


「クソッ、死んでる」


「ほう、ずいぶんと潔いことだな」


「……大いなる蛇ってなにさ? 宗教?」


傭兵のリーダーがあっさりと死を選んだことに拍子抜けしながら波多那は何気なく手についた血を舐め取った。

そして途端に顔をしかめ舐め取った血を吐き出した。鉄臭い。やはり漫画やアニメで血をペロペロ舐めるような奴らはどうかしてる。

必死に口の中の鉄の味を吐き出しつつヒルギスの元に歩いていこうとするがそれよりも早くヒルギスに駆け寄る者がいた。


「ヒルギス! ヒルギスじゃないか!」


「おお、グスルグか。 久しいのう」


駆け寄ったのはグスルグだった。どうやら知り合いだったらしい。ヒルギスもグスルグの姿を見てうれしそうに笑う。

周りの警戒こそ怠ってはいなかったが二人の男は再会を喜び肩を叩きあった。


「えーと、お知り合いで?」


「ああ。 昔共に戦場を駆けた仲よ。 しかしグスルグよ、どこかの家に召し抱えられたと聞いたがこんなところにいたとはな」


「お前も生きているだろうとは思ってたが……」


「あー、積もる話はあるでしょうけどその前に安全を確保しません?」


「と、そうだな。 俺も呆けてるお嬢様を正気に戻さなくては」


「なら、わしとハタナは死体の確認をしよう。 無いとは思うが死んだ振りをされていてはかなわんからな」


波多那の提案は採用され、それぞれが安全の確認するために動き出した。



ヒルギスが敵の死体を蹴り仰向けにし、波多那が手を当て確かに死んでいることを確認する。それを何度か繰り返し敵リーダーの死体を確認したところで波多那はあるものに気づいた。


「なんだろうこれ?」


「刺青か。 そう珍しいものでもないだろう?」


傭兵が己のアピールのために刺青を入れることは珍しくない。故にヒルギスはすぐに興味を無くしほかの死体を調べ始める。だが波多那にはどこか引っかかるものがあった。

杖に巻き付く二匹の蛇。どこかで見たことがある。そうだ、確かそれは―――


「ケリュイオンの杖……だっけ?」


昔、学校にいたときに習った覚えがあった。当時の波多那の心を擽るデザインだったために覚えていたのだ。


「でもなんでこんなものが? 」


こぼした呟きは誰に聞かれるでもなく消えていった。




グスルグに付き添わたクラリスは倒れたネイに駆け寄り肩を揺らしていた。何度か揺さぶられたのちネイは目を覚ました。


「く……いつつ……」


「ネイ、大丈夫? 怪我はない?」


「はい。 大丈夫ですお嬢様……無様なところを見せました」


「そんなこといいの! 怪我がなくてよかった……」


「無事なようだな。 ったく、心配させるな」


「す、すいませんグスルグ殿」


殴り飛ばされたネイは幸いにして軽傷で済んでいた。

クラリスとグスルグがネイの無事を確認するとほぼ同時にヒルギスと波多那も死体の確認を終えておりひとまず安全が確保された。

応急処置をし始めた。その間グスルグとヒルギスは警戒をしながら今回の騒動について話し合っていた。


「ヒルギス、今回の襲撃はお嬢様を狙ったものだった」


「そのようだな。 目的は誘拐か?」


ヒルギスの予想をグスルグは否定する。


「いや、奴らはお嬢様を殺そうとした。 誘拐が目的ならそれはありえないことだ」


「ふむ、ではなんのために?」


「それがわかればいいんだけどな」


現状で結論を出すにはあまりにも情報が少なすぎた。




ヒルギスとグスルグが辺りを警戒している間、ネイに応急処置を施す波多那に向かってクラリスは話しかけた。

強面のヒルギスよりも波多那のほうが話しかけやすかったのだ。


「ねえ、何故私たちを助けてくれたの?」


クラリスの疑問は当然と言えた。己の命を最も大事にする傭兵がなんの見返りもなく知らない誰かを助けるなどありえないというのはある意味常識である。

そのような行為は命を安売りしていると見られ信用を得られないからだ。だが波多那たちにはクラリス達を助ける理由があった。


「んー? 頼まれたからだよ?」


「頼まれた? 誰に?」


「名前は知らない。 でも騎士さんと同じ鎧着てたし同僚じゃないの?」


最後まで主のことを想って逝った騎士。波多那は彼の特徴を二人に伝えた。心当たりがあったのかクラリスは息を飲みネイは波多那に詰め寄った。


「彼は私と同じクラリス様の護衛だ! 彼は!? 彼はどうなった!?」


「ちょっと、動かないでよ! 傷が開いちゃう! その人は残念だけど……」


「……そうか」


「……彼には感謝しないといけないわね」


「……はい、これでもう大丈夫だよ」


そうしているうちに手当てが終わった。

次の襲撃が無いとも限らないのでクラリスたちは急いで屋敷に戻るらしい。


波多那はこれで彼女たちとは別れるのだろうと思っていたがクラリスはヒルギスと波多那にお礼を言うと共にある提案をした。


「助けてくれてありがとう。 お礼がしたいから私の家に来てほしいのだけど……」


「ふむ、そうだのう」


ヒルギスは波多那を見た。それに気づき波多那は肩を竦める。


「僕は構いませんよ。 師匠も旧交を暖めたいでしょう?」


「うむ、すまんな。 では世話になろう」


こうして波多那とヒルギスはクラリス達に連れられフラウウェン家に向かうこととなった。


もうちょっと物語が盛り上がってくればスムーズに書けるんかね?

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