第16話(君の元へ・・・)
入道雲がモクモクと空に広がっている。
どんどん膨らむ僕の不安みたいに・・・。
6時間目の授業、空を見ながら考えてた。
転校してしまった以上、どうやってこの遠距離恋愛をうまくやっていくかって事。
卒業したら、近くの大学や専門学校に行って、一人暮らしをしよう。
それまで、お互いの気持ち、信じあえるかな。
昨日のユキの電話、元気なかった。
でも、今までのように、頭ポンってしてやることができない。
何があったかと聞いても、何にもないと言われると、どうしようもなくなるんだ。
僕のこと、まだ好きでいてくれてるのか。
放課後、ユキと桜を見たあの公園へ行こう。
思い出ばっか追いかけてる僕は、とても情けないだろう。
でも、寂しさと不安を紛らわす方法が他に見つからない。
公園には、強い風が吹いていた。
変わらない景色。
強い風が僕の不安を吹き飛ばしてくれればいいのに。
いつまでもうつむいてばかりはいられない。
風が僕の背中を押す。
やっぱりここに来て良かった。
少し元気が出た僕は、笑顔で坂道を自転車で下った。
あ〜、風が気持ちいい。
ユキ、離れてても大丈夫だよ。
がんばろうな、ユキ。
猛スピードで坂道を下る僕は、飛べそうな気持ちになる。
このまま、ユキの元へ飛んでいきたい。
僕は、澄んだ青空を見上げた。
『キキィィィ−−−!!』
・・・・・・・
次の瞬間、僕は空を飛んだ。
高く高く、舞った。
あぁ、僕今飛んでるよ。
綺麗だなぁ、木々の緑、空の青、響く少年達の野球のボールの音。
地球って美しい。すばらしいな。
あぁ、風が気持ちいい。
あぁ、なんて美しいんだろう。
なんて気持ちいいんだろう。
あぁ、僕たちの住む地球ってこんなに美しかったんだ。
僕は今、空を飛んでいる。
あれ??
あれ?僕どうしたんだろ?
これから僕、どうなるんだろう。
どうして、飛んでるんだ??
そうか・・・僕死んでしまうんだ。
こんなに美しい空、風、雲もう見られなくなるのかな。
死にたくない。僕は生きたい。僕は生きなければいけない。
ユキ。
君に会いたい。
君にまだ話してないこともいっぱいある。
君と行きたい場所、見たいものがいっぱい・・・
僕に翼をください、神様・・・
僕は、ユキを守らなければならないんだ。
僕はユキと結婚する為に生まれてきたんだ。
君の元へ飛んで行きたい・・。
・・・・・・・・・・
ユキとの思い出がよみがえる。
最初にユキと目が合ったときのあのときめき。
ユキが僕を好きだといってくれたときの嬉しさ。
初めてのキス。
僕に、お嫁にもらってと言ったユキ。
僕の全てが好きだと言ってくれたユキ。
ユキ、ねえユキ。
結婚しようね。
楽しい家庭作ろうね。
ユキが、今まで辛かった分、僕らは楽しい家庭作ろう。
僕は、お酒飲まないよ。
ユキがイヤならタバコも吸わない。
毎日笑顔の絶えない明るい家庭作ろうな。
そして、いつかユキが言ったように、子供の名前は「ハルユキ」だな。
ユキ、ごめんな。
ちょっと、僕旅に出るね。
ユキ、生まれ変わっても必ずユキを見つけ出すから。
また、恋、しような。
そのときまで、初体験は、おあずけだな。
ユキ、ユキ、愛しているよ。
僕に幸せをありがとう。
僕に愛することを教えてくれてありがとう。
ユキーーーーーーーーーーーーー!!!!!!!!