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黒鬼  作者: ノア
第一章 蒼き村への復讐
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雨が降らず、年貢の取り立てが厳しい。

餓えたこの村には、葉っぱさえ落ちていない。

痩せた土を手に取る。収穫は期待できそうにない。冬を越せるかさえ微妙なところだ。

「何とかなるさ…。僕、がんばるから」

灰色の空を仰ぐ。

それに応えるかのように、雨が降り出した。


「朝ですよーって、もう起きてましたか」

「おはようございます。よい朝ですね。早々申し訳ありませんんが、お兄様はまだいらっしゃいますか?」

「えっ…、あの…、はい」

しどろもどろに満が答え、ぱたぱたと兄の部屋へ駆けて行く。

『お前は本当に疎いな』

眠そうに鴉が言う。

「何のことです?」

恋慕に鈍い彼はただ困惑するばかりであった。


「うちの妹はそう簡単に嫁がせんぞ」

泰光の第一声はそれだった。

「だから、何の事ですかっ!」

「なんだ…、そういう話ではないのか。で、何用だ?」

平然と泰光が言う。

「泰光様は役人を務める武士。なれば、あの村の者が最近死んでいるか否かを確かめることが出来るはず…。その者の名が知りたいのです」

「相手は農民。名が記されていなかったらどうする?」

「関所の関係でそれは御座いませぬ。いかなる者も通行手形を持っているはず。たまにいるのですが、あまりの厳しい年貢の取り立てに懲りて、それを納めず、蓄えとして持ち、上方へ逃げ出す者も稀ですがいるのですから」

「その為の五人組だろう」

「もちろんです。近頃、その制度も一揆により弱まりましたが、そのような考えを誰しも思うと思いますよ。上方は広いですから。仕事も見つけることは出来るでしょう」

「餓え死ぬよりはマシと?」

「例えですが…」

ふむ…と泰光が腕を組む。しばらく考えた後、決心したように立ち上がった。

「まぁ、いいだろう。調べはする。だが、お前はどうする?」

「私は、あの村をもう一度訪れてみようかと…」

そうか…とだけ答えると、泰光はそそくさと出かけて行った。

「わ、私もお手伝いします」

「危険ですよ。貴女は白鬼です。紛い鬼といえども、貴女の存在の真なる効果…というのも変ですが、

あなたがもたらす幸を知れば狙って来るやもしれません」

真剣に桃太郎が言うと、満はふわりと微笑んだ。

「その災厄から守るためにあなたは来てくれたのでしょう?」

しばらくの間、桃太郎は茫然としていたがやれやれという風に首を振る。

「あなたの方が一枚上手のようだ。では、共に参りましょうか」

「桃太郎の鬼退治ですね」

嬉しそうに言う満とは裏腹に、桃太郎は言う。

「…そうとも限りませんよ」

この言葉が意味する訳を満はまだ知らない。

彼女は紛い鬼の実態を真に理解したわけではないからだ。

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