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黒鬼  作者: ノア
第二章 春来たりし異邦の来訪者
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憎悪の乱舞


男はにたりと歪んだ笑みを見せた。

「…やっと見つけた。お前がそうか」

その冷酷な瞳は満を映してはいない。桃太郎を見て、そう言ったのだ。


「西洋の鬼なんか、私の知り合いに居ませんけど」

男はに歪んだ笑みで、吠えた。

「はははっ…はーははははっ!俺たちに『呪い』と傷をつけた忌々しきあの男…。

息子が居るとはなぁ…!無惨なお前の屍を晒せば、死体に集る蠅の様に出て来るだろうっ!?」

強い衝撃波が桃太郎を吹っ飛ばす。鈍い音と共に壁にぶち当たって、そのまま気絶した。

「桃太郎っ!」

満が叫ぶと、男は満を見た。しばらく目を細めていたが、思い出したように、あぁ…と呟く。

「お前、あの村の鬼子か…?」

「ち、近づくなっ!この足利泰光が許さんぞっ…!」

庇う様に泰光が前へ出た。男は哀れなものを見るような眼差しで泰光に言う。

「震えてるなぁ…?人を斬るのは初めてか?それとも単に恐れをなしているのか…」

男は素手で泰光の刀を掴む。しかし、血は流れなかった。

そのまま力を入れると、刀はぐにゃりと曲がった。

「なっ…」

呻くように泰光が声を上げた。男はそのまま曲がった刀を奪い取ると、左手で泰光の腕を掴んだ。

ミシリッ…。

嫌な鈍い音がして、泰光は悲鳴染みた声を上げる。

「あと十秒くらいか。…だが、飽きた」

男は掴んだ腕ごと、泰光を畳へ投げた。

骨の折れた音がして、歪んだ方向を向いた腕と共に畳に突っ伏する。

気絶しているようで、ぴくりとも動かない。

「さぁて、この娘鬼をどうしたものか…。

この国を侵略する為の障害は二つ。一つは鬼。もう一つは陰陽師。だが、圧倒的なのは鬼だ。

だから最初に『鬼ヶ島』を襲い、勢力を分散させた。

四鬼神だっけか?その一人を消せばその勢力が失われるも同然。まぁ、あの村を襲ったのは無駄骨だったが…。しかし、惜しいことをした。お前の母はそれは美しい鬼だったぞ?西洋にあんな美しい鬼はいない。あまりにもうるさいから殺したが、骨の二三本でも折って連れてくれば良かった。

犯して、飽きたら殺す。それから喰らえば良かったなぁ…。実に惜しいことだ」

「そ、そんなことの為に殺したんですかっ?たかが、それだけの為に…」

大きな瞳を、怒りと悲しみに潤ませて満は叫ぶ。

ふんっと鼻を鳴らして男は嘲笑った。

「だがな?そもそも『鬼ヶ島』が沈んだのは…」



時同じく、朱菊・椿の方では…。

「キャハハハハッ!鬼、みーっけ。黒鬼みたいだけどぉ、リーダーが探している鬼じゃないみたーい」

燃え盛る屋根の上から笑い声がしたと思うと、二人の前に金髪の女が降り立った。

残念そうに金髪の女が言う。

「アンタが、此処を燃やしたのかいっ?」

朱菊の問いに、女はまた笑う。

「何?オバサン。人間どもならどっかに行ったよ?まぁ、死んだ奴もいるんじゃない?

…まさか、相手するの?弱そー…。キャンベラ、悲しぃー」

爆音。それから、炎の爆ぜる音。

「っ!?」

「運が無いねぇ、アンタ。火のある場所でアタイに挑もうとは…。

朱雀、出てきなっ!」

隣で椿は溜息をつく。こうなってしまった以上、助太刀はおろか、何も出来ることは無い。

ただ、見守るだけだ。

「全く…程々にな?」

九本の火柱が立ったと思うと、朱菊を包み込む。

現れたのは、朱色の着物から覗く白く美しい九つの狐の尾。

「火傷じゃ済まないよ、覚悟しな」

いつもと変わらぬ、妖艶な笑みを浮かべて朱菊は言った。




「そもそも『鬼ヶ島』が沈んだのは…」


とんっ…。


肩に何かが乗った。人とは思えないほど軽い何かが。

そこから迸る殺気に、男は知らず唇を舐めた。

ぽたりと黒い滴が男の衣服を濡らす。


「黙れ」


満だけが、その姿を見ることが出来た。

結んでいた漆黒の髪は解け、顔に掛かっている。

額からは黒い滴が青白い頬から衣へと流れて行く。

髪から少し覗く鬼特有の金色の瞳は、血の様に赤く…。


氷の様な表情で桃太郎は言う。

声色は低く、聞いたこともないくらい冷めていた。

男のがたいの良い肩にしゃがみ、『鴉』を首に添えて。


男は狂喜した。

奴と同じ…。圧倒的な何かが自分を抑えつけている。

「ははははっ!」

白い髪を振り乱し、男は桃太郎を払い除ける。

足を痛めているのか、桃太郎は右足を庇いながら空中で体勢を整えた。

すぐさま左足で壁を蹴り、バネの様に男へ斬りかかった。

「ふんっ!」

それを力任せに男は掴むと畳へ押さえつける。

余りの力にそのまま床を突き破り、下の階へと落ちた。

男はその後に続き、止めを刺すべく刀の先を下へ向けた。


埃が舞い、煙幕の様に視界を覆う。

突き刺した場所に手応えは無い。


ーどこだ?どこにいる?


耳を澄ます。

息づかいひとつ聞こえなかった。

「逃げたか…?」

男は力任せに刀を引きぬいた。

ガキッ…と刀身が折れる。

「チッ…」

愚痴を男がこぼそうとした。

本当に彼は油断していたのだ。


鈍い音がしたと同時に何かが落ちた。

赤い血が噴き出す。

「腕がぁっ!糞ッ」

男は呻いた。

桃太郎は芋虫でも見るかのような目で、男を見下す。

「お前如きがあの人に挑もうとは、片腹痛い。だが、そのかわりがお前を見取ってやろう。

主将も、『無惨なお前の屍を晒せば、死体に集る蠅の様に出て来るだろう』?」

漆黒の刃が、男の首めがけて振われる。

今回はいつもと同じ位の長さで一安心。まぁ、ちょっと、オーバーかもしれない。

話は変わり、読んで下さっている皆様にアンケート(?)を取りたいと思います。

今回、桃太郎と闘っている『東洋の鬼の男』。

名前を必死に考えているのですが、いいのが思いつかないっ!

ということで、皆様の素晴らしいアイデアをお借りしたいと思います。


しょうがねぇ…考えてやるかという人など。

お気軽にどしどし送って下さい。感想等でも構いません。

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