俺には好きな人がいる
***BL*** 親友や先輩の彼女を寝取る男と噂された。好きな子がいるのに、、、。
ハッピーエンド
一番仲の良い友達の彼女から、告白された。
意味が分からなかった。
「え?ごめん、ちょっと何言ってるか分からない、、、」
思わず聞き返した
「だから、、、武岡君の事が好きなの」
「でも、長谷川と付き合ってるんだろ?」
俯いて
「喧嘩して、別れた、、、」
小さく言う。
「は?あんなに仲良かったのに?何で?」
「だって、武岡君の事、好きになっちゃったんだもん」
「長谷川の事、好きだったよな?」
「そうだけど、最近、武岡君の事ばっかり考えちゃうの。もう、こんな気持ちじゃ長谷川君とは付き合えないよ、、、」
そんな事言われても、、、
「無理だよ、、、俺、長谷川の事、裏切るみたいで嫌だよ」
彼女は涙を流しながら
「長谷川君より先に、武岡君と出会いたかったな、、、」
と呟いた。
何で、、、何で俺に告白なんてするんだよ。
俺は長谷川と仲が良かった。高校に入ってから出来た友達だ。彼とは一番気が合った。
好きな子がいると打ち明けられ、俺も応援した。長谷川と二人で、どんな子か見に行った事もある。
アイツが君に告白して、付き合ってくれると喜んだ時、俺も凄く嬉しかった。
彼女として紹介してくれて、武岡が恥ずかしそうに照れていたのが新鮮だった。
まだ、あれから二週間しか経って無い、、、。
「長谷川君に紹介された時から、ずっと気になっていたの、、、。付き合って欲しい、、、」
無理だ。だって、俺には好きな子がいる。長谷川の事もある。
「、、、じゃあ、一度だけデートして、、、」
それも嫌だ、、、。
「一度だけで良いの。長谷川君とは別れたし、武岡君にも彼女いないでしょ?」
そりゃあ、いないけど、、、。
「最後の思い出に一度だけ、、、。そうしたら、武岡君の事は忘れるから、、、」
デートって何したら良いんだろう、、、。
*****
仕方無く、土曜日にデートをした。映画を見ただけで別れた。
本当に、映画館の前で待ち合わせて、映画を見て別れただけだった。
、、、それなのに、、。
*****
月曜日、学校に行くと長谷川が「変」だった。
「お早よう、何かあった?」
「何かあったじゃねーよ、、、。お前、土曜日に映画に行ったんだって?」
嫌な感じがする、、、。
「、、、」
「人の彼女とデートするって、どんな神経だよ」
「違っ
「違わねーよ!デートしたんだろ?!」
長谷川が大きな声を出すから、クラスの皆んながこっちを見る。
「別れたって言うから」
「別れてねーよっ!喧嘩してるだけだわっ!お前は別れたからって、直ぐ友達の彼女とデートすんのかっ?!サイテーだなっ!」
「、、、」
「付き合ってもいないのに、手ぇ繋いだり、キスしたりすんのかよっ!」
「してない」
「アイツがしたって言ってたっ!だから俺とはもう付き合えないって!」
何、、、で?
何でそんな嘘、、、。
「あーあ、、、。友達だと思ってたのに、、、最悪だ」
その一言が一番傷付いた、、、。
チャイムが鳴り、席に着く。
*****
俺の噂はあっと言う間に広まった。
クラスでも浮く存在になり、俺は、親友の彼女を寝取る嫌なヤツ、と言われた。寝取ってねーし!童貞だしっ!
昇降口にあの女がいる。
恩を仇で返す女。
俺は口も聞きたく無い。
「御免なさいっ!」
今更謝られても困る。俺と長谷川の仲は元に戻らない。腑が沸え繰り返る。
靴を履き替え、学校を出た。彼女は後ろを歩いて来る。
駅まで歩き、改札を通り、ホームで電車を待つ。
少し離れた場所で立つ女。
「あの、、、本当にごめんね、、、。武岡君の事、すごく好きなの、、、付き合いたい、、、」
どうでも良いと思った。
「勝手にすれば?」
俺はホームに入って来た電車のドア付近に近寄る。
「良いの?!」
「俺の何処が好きな訳?」
「だって、格好良いんだもん、、、」
格好良い?外見か、、、。
俺は開いたドアから電車に乗り、空いてる席に座る。彼女も横に座った。
それ以来、コイツ、瑞妃は俺の周りをチョロチョロする様になった。
俺が教室で弁当が食べられなくて、理科実験室で食ってると、当然の様に一緒に食う。
話しをするのは専らアイツ。俺は返事もせず、飯を食い、スマートフォンを弄る。
「ねぇ、何処かデートしようよ」
「ヤダ、、、」
「何で?私達、学校以外で会った事無いよ?」
「休みの日は家で寝てたい」
「もぉ、、、」
空き教室で昼休みを過ごす時、ドアを閉めてはいけない。それがルールだった。
「あ、武岡君!」
一個上の知らない女。
誰?
ツカツカと教室に入って来た。遠慮の無い感じ。これから俺の周りには、こんな女しか近寄って来ないのか、、、。
「ねぇ、彼女がいないなら、私達付き合わない?」
「良いよ」
スマートフォンを弄りながら返事をする。
「え、、、」
瑞妃が小さく言う。
どうでも良い。
「やった!放課後一緒に帰ろう!」
「俺、待つのイヤだから、探して」
「了解!」
その女は、瑞妃を一瞥して教室を出た。
「、、、何で?」
俺は無視をする。
「、、、」
「私と付き合ってるよね?何であの女に連絡先教えちゃうの?!私には連絡先教えてくれないのに!」
「聞かれて無いし」
「武岡君から教えてよ!」
「何でわざわざ」
「でも、私達付き合ってるんだから、、、」
「嫌なら別れれば良いんじゃ無い?」
休憩時間がそろそろ終わる。俺は空の弁当箱を持って、教室に戻る。
*****
放課後、瑞妃は俺からくっついて離れない。
「ねぇ、私にも連絡先教えて」
俺は昼と同じ様にQRコードを見せる。
タイミング良く、あの一個上の女からメッセージが届いた。
「今、HR終わった。どこにいるの?」
瑞妃が固まる。
俺はメッセージを無視した。瑞妃はホッとしたみたいだ。
瑞妃からメッセージが届いた。それにも返事は書かない。
いつものペースで下駄箱に行くと、あの女が俺の下駄箱をチェックしていた。そして、俺と瑞妃に気付くと
「良かった。教室まで行く所だった!」
「ふぅ〜ん、、、」
興味が無い。
下駄箱を出ると、一人の生徒がいた。教室のでかいゴミ箱を持って、ゴミ捨て場から帰って来たんだ。
俺の好きな人、、、。
普通の、、、どちらかと言うと地味な子。
でも、俺はあの子が好きだった。
長谷川にも話していない。本当は、長谷川が瑞妃と付き合い、落ち着いたら俺も色々相談したかったのに、、、。
「真野くーん!」
「はーい!」
友達が、三階から叫ぶ。
「明日、図書委員ー?」
「そー!」
「本返しに行くねー!」
「分かったー!」
三階から叫んでいた女子が、先生に叱られていた。多分窓から叫ぶなとか、そんな感じ。
「はーい!だって、可愛い〜」
少し意地悪な言い方をする女。俺には真野より、この女や瑞妃みたいなのが似合うんだろう。
*****
翌日昼休み、瑞妃は前の授業が体育だから、まだ来ていない。もう一人の女、華からメッセージが来ていたけど、無視をする。
一人で図書室に行くと、カウンターの中で真野がお弁当を食べている。
「あ、、、」
とおかずを口に入れようとした瞬間、俺に気付いた。そのままパクッと口に入れ、恥ずかしそうに口元を隠して、慌てて咀嚼する。
「此処で弁当食っても良いの?」
「カウンターの中なら、、、」
と、もごもごしながら言う。
「俺も食べて良い?」
「あー、、、カウンター内は委員の人しか入れなくて、、、」
「どーせ、一人でしょ?良いじゃん」
俺は遠慮無く入って行く。
「え〜、、、」
嫌そうな顔をして、小さく言う。
「ねぇ、一年の武岡ってお前?」
入り口に二年男子が三人立っていた。俺は溜息が出た。
嫌な予感しかしない、、、。
「郷村華、知ってるよな?」
人気のない場所で、三人の内、一人にボコられた。
*****
唇の端が切れている。チャイムが鳴り、教室に戻ると少し周りが騒付いた。
「アイツ、またやったんじゃない?」
「最近、二年の女子といたから」
勝手な想像で話しが進んで行く。俺はどうでも良かった。
*****
瑞妃がしくしくと泣く。
「ねぇ、、、郷村華とエッチしたの?」
メンド臭い。
「私の事、嫌い?別れた方が良いの?」
「好きにすれば?」
パンッ!
痛っ!てぇ〜、、、
頬を叩かれた。
「もう別れる!武岡君は私を好きじゃ無いもん!」
何を今更。俺は一度も好きなんて言っていない。瑞妃が勝手に側に来て、勝手に誤解してヤキモチ妬いてるだけなのに、、、。
殴られた場所を上書きする様に叩かれた。
めちゃくちゃ痛い、、、。
放課後、郷村華が下駄箱近くにいた。
「うわ、、、。アイツにやられたの?痛そう、、、」
触ろうと指を伸ばす。俺は思わず避けた。
「ごめん、私の所為だね、、、」
「、、、」
「ちゃんと別れたんだけどな」
*****
「真野くーん!」
「はーい!」
また呼ばれてる、、、。
この遣り取りを聞くと、少しホッとする。
真野は返却用のノートを1クラス分抱えていた。あれじゃあ、扉を開けられない。思わず、扉をスライドさせた。
「あ、ありがとう!ひっ!」
ひっ!って本当に言う人いるんだ、、、。ま、気持ちは分かるよ。酷い顔してるんだろうな。
真野は俺にペコペコしながら教室に入った。
**********
びっっっくりしたぁ、、、。昼は何とも無かった武岡君の顔が、酷い事になっていた。
思わず、息を飲んでしまったけど、大丈夫かな、、、。
あの怪我、二年生に呼び出された時のかも、、、。痛そうだった。それなのに、僕、「ひっ!」なんて変な声出ちゃって、、、。
*****
僕は入学式の時から武岡君が好きだった。
彼が友達と仲良くはしゃいでいるのを見て、家のゴールデンレトリバーを思い出していた。身体が大きいのに、人懐っこくて、いつもニコニコしていた彼。
「親友の彼女を寝取ったらしいよ」
と噂があったのは、夏前。
武岡君がそんな事するなんて意外だな。でも、寝取ったなんて、どうして分かったんだろう、、、。
武岡君には入学式頃の人懐っこさが無くなってしまった。いつも数人の男子と一緒に笑っていたのに、最近では笑った所を見た事が無い。
しかも、彼女が出来たのかいつも女の子と一緒にいる。
ん〜、、、。一緒にいるから彼女だと思うんだけど、本当にそうかな?武岡君はいつもスマートフォンを見てばかりで、彼女が話し掛けても顔を上げない、、、。ちょっと、仲が良いとは思えないんだよね、、、。
*****
僕は彼の事を、遠くから見ていれば良いと思っていた。それなのに、図書室で突然話し掛けられて、びっくりしたんだ。
それから彼は逃げる様に図書室に来る様になった。一番端の棚の陰に隠れて過ごす。
お弁当は持って来てるけど、食べてるのかな?
図書室の本さえ汚さなければ良いけど、本当は規則で禁止されている。
あんまり覗きに行きたく無いけど、僕はこっそり彼を見に行った。
彼は一番奥の、一番端で、膝を抱えて寝ていた。お弁当箱は開けた様子が無い。
「あの、、、お弁当食べないんですか?」
図書室に人が来るのは、昼食を食べ終わってから。だから、開室15分位は滅多に人は来ない。
彼はゆっくり顔を上げた。
「此処で食べたら不味いよね?」
「そうですね、、、カウンターの中、入ります?」
「、、、良いの?」
「バレなければ、、、」
「、、、悪い」
僕がカウンターに戻ろうと向きを変えると、彼は大人しく着いて来た。犬みたい。
カウンターの中の死角を探し、彼は隠れながらゆっくりお弁当を食べた。その後はまた、膝を抱えて眠る。
予鈴が鳴ると、彼はゆっくり立ち上がる。
「、、、ごめん、ありがと」
と小さく言って、図書室を出て行った。
僕も図書室に鍵を掛けて教室に戻る。
*****
ガラス張りの図書室は、明るくて良い。そして、遠くから武岡君が歩いて来るのが見える。
少し俯きながら、静かに真っ直ぐ来る。
「誰でも遠慮無く入れる様に、昼休みは扉を全開にしておいてね」
顧問の先生に言われて、エアコンを使っていない日は、扉を全開にしている。
武岡君は
「ん」
と言って、ジュースを一本くれた。
「え?良いの?」
「中に入れて貰うから、、、」
そう言って、昨日の場所に座る。
「僕が担当の日だけだよ?」
「月、水、木の昼休みでしょ?」
僕が何で知ってるんだろうと、思っていると
「そこの表に書いてある」
お弁当箱を広げながら言う。
成程、、、。
そして僕達は、同じ空間にいるのに、別々にお弁当を食べた。
「あれ?」
二年生の女子だった。
入り口で、図書室の中を見回している。そのまま中に入り、棚の間を歩き回る。
誰かを探しているみたいだった。そっと武岡君を見ると、黙々とお弁当を食べている。
もしかして、武岡君を探している?僕は彼が見えなくなる様に少し身体をずらして、彼を隠した。
**********
華からメッセージが届く、俺はもうずっと読んでいない。
「武岡、二年が来てる」
放課後帰ろうとしたら、華が教室に来た。
「ありがと」
と言って、華の所に行く。
「何?」
「何でメッセージ読まないの?」
怒っている。
「いつもの事じゃん」
「邪魔」
長谷川がそう言いながら、鞄を俺にぶつけながら教室を出て行く。
「っんだよ」
つい、長谷川を睨む。睨んだ所でアイツの背中しか見えない。アイツには痛くも痒くも無い行為だ。
「で?」
華に向き合う。
「「で?」じゃ無いわよ。何でメッセージ読んでくれないの?相談に乗って欲しい事とかあるのに」
「何で俺がそんな事」
「だって、元彼がしつこいから、武岡君に
「俺、関係ないよね?」
華は俺を睨んだ。別に怖くない。
「ちゃんと別れたんでしょ?違うの?」
周りの生徒が聞き耳を立てている。その中に瑞妃もいた。
華は俺の腕を取り、人気の無い場所を探す。
俺の腕を思いっきり離しながら
「ねぇ!」
と言う。
「私達付き合ってるよね?彼女を助けたいとか思わないの?」
「で、また俺がアイツに殴られれば気が済むの?」
「そ、そんな事言って無い!」
「、、、」
「私の話しを聞いて欲しいの!メッセージもちゃんと読んで、返事も頂戴!」
「それなら、そうしてくれる彼氏を探すと良いよ。俺は無理」
「何で?何でよ!」
「俺はサイテーだから」
俺なんて、みんなに嫌われれば良いんだ。いつもそう思いながら過ごしている。
長谷川にサイテーと言われた時、本当にサイテーな人間になろうと思った。
「本当っサイテー!」
その通り。
*****
華とも別れた。別に好きとかじゃ無かったから、何とも思わない。ただ、華からのメッセージが来なくなると、俺のスマートフォンの未読数が一気に減った。
校内を歩いていると、偶に名前を呼んで手を振って来る女子がいるけど、俺は気付かないフリをする。人付き合いが面倒で、俺ってこんなヤツだったかな?と思う。
*****
図書室に行くのが習慣になり、真野の横で弁当を食べる終わると、カウンターから出て本を選びに行く。教室に戻る気も無く、室内の椅子に座って本を読む。
昼休みの後半15分位が一番貸し出しや返却の生徒が多く来るらしく、カウンターから小さな声で返却日を告げる真野の声が聞こえる。
可愛い声だな、、、
と、思いながら視線は文字を追う。
「あの、、、」
と声を掛けられた。足元が見え、視線を上げる。
同じ学年だけど、知らない女。
「これ、後で呼んで下さい」
俺は、薄いピンクの封筒を受け取った。
彼女はペコリとお辞儀をして、図書室を出て行く。
**********
武岡君が座る椅子の方に、女の子が一人近付いて行った。何と無く目が離せない僕。可愛い子だな。
彼の前に立つ後ろ姿。短いスカートから細い脚がスラリと伸びる。真っ直ぐで綺麗な脚。色も白い。髪は黒。
親友や先輩の彼女を寝取った男。噂は酷いけど、やっぱり彼はモテる。
彼女はペコリとお辞儀をして、こちらに向かって来た。彼の手には手紙。
今度の女の子は、今までの人とは違う気がする。
**********
俺は手紙を受け取らなければ良かったと、後悔している。わざわざ返事をしに行かないといけないんだ。ま、行かなくても良いか、、、。
知らない女に告白されても、断る意外考えられなかった。
金曜日の放課後、下駄箱で靴を履き替えていたら、手紙の彼女がいた。友達も一緒だった。
友達のいる前で話し掛けるのは控えよう。そう思いながら、彼女に声を掛けないで済むと、ホッとした。
**********
放課後の下駄箱。
武岡君が手紙の彼女を見つめていた。二人は付き合う事になるのかな?
少し胸が痛む。
でも、僕と彼ではバランスが悪い。
格好良い彼と、平凡な僕。どちらかと言えば、地味に矢印が向いている、、、。
僕なんて、図書室のカウンターの中で、同じ空気を吸えるだけで充分だ。
でも、待って、、、武岡君と彼女が付き合ったら、彼はもう図書室には来ないかも、、、。
*****
月曜日の昼、彼は図書室に来なかった、、、。
**********
英語の小テストで0点だった、、、名前の書き忘れ。お陰で、月曜日の昼休みは再テストだった。図書室に行く時間が無くなり、再テストをやった視聴覚室で弁当を食べた。
他にも再テストの後、その場で昼飯を食うヤツがいたから、先生はドアを開けて教室を出た。
まさか、名前を書き忘れるとは、、、。英語は自信があったから悔しかった。
*****
水曜日、いつも通り弁当を持って行くと、カウンターに座っているのが別の人だった。
真野は休んでるのかな?俺は弁当箱を持ちながらフラフラする。どこで食べようか、、、。そう思いながら、本棚の間を歩いた。
「武岡君」
控え目な声で呼ばれた。
「返事聞きたくて、此処じゃ話し辛いから」
と言われて、図書室を出る。
余り人が来ない階段の踊り場で、彼女は
「えっ、、、と、それで返事なんだけど、、、」
「ごめん、好きな人がいるんだ」
「あ、、、え、そうなんだ、、、」
「だから付き合えない。それに君の事も知らないから、、、どちらにしても、ごめんなさい」
「ううん、良いの。ちょっと残念だけど、はっきり断ってくれてありがとう。ごめんね」
彼女は階段を降りて行った。
瑞妃の時も好きな人がいると断れば良かったんだ、、、。
*****
木曜日、やっぱり今日も彼はいない。
風邪、引いたのかな、、、。
仕方が無い、他の場所で弁当を食おう。
何処か良い場所が無いかと歩き回る。
「武岡くーん!」
上から声がして見上げると
「バイバーイ!」
と上級生が手を振っている。俺がペコリと小さく頭を下げると、きゃぁ〜!と歓声が上がる。
四階の連絡通路のベンチが空いていた。屋根が無いから雨の日は使えないけど、意外と穴場。俺は弁当を広げた。
そこから中庭が見える。長谷川達がバレーボールをしていた。ま、どうでも良いけど、、、。
**********
ああ、二日も休んでしまった。免疫力が落ちてるのかな?
僕は教室のゴミ箱を運んでいた。ゴミ捨て場まで行くのに、一度外に出ないといけない、、、。
靴を履き替えてゴミ捨て場に行くと、武岡君に手紙を渡していた子が戻って来る。
やっぱり可愛いな、、、。彼女が渡したのはラブレターだと思う。
ラブレターより恋文って言葉が好きだな、、、なんて変な事を考えた。
武岡君は、もう返事をしたのかな?。一週間経つから、流石にしただろうな、、、。
二人は付き合ってる気がする。だって、美男美女だもの。
**********
駅のホームに真野がいた。
あ、元気そうだ、、、良かった、、、。
*****
11月、マラソン大会の練習が始まる。
本番は全学年同日で男子は10キロ、女子は5キロ走る。校内では出来ない。
俺達の高校は湖の周りを走る。現地集合現地解散。
体育の授業はマラソン大会の練習になり、みんなイヤイヤ走る。
真野は走るのが苦手みたいだった。
マラソン大会当日。俺は最寄り駅まで電車で行き、そこから歩いて行く。学校指定のトレーニングウェアを着た人並みに紛れ、目的地まで連れて行って貰う。
三年男子から始まり、最後は一年生。
9時半に男子が走り始め、15分後にに女子が走り始める。
走り終わった生徒から、申請して帰って良い。
俺はまぁまぁ、平均タイム。真野は見当たらなかった。後半スピードを少し落とす。マラソン大会だからと言って、タイムが成績に関係するわけじゃ無い。時間内に完走すれば良いんだ。
俺は、先生にチェックして貰い、荷物を取りに行く。真野はまだ走っていた。目が離せない、、、。
走るのが苦手そうで、女子にさえ抜かされていた。
走り疲れた生徒達は、荷物を持ってサッサと帰る。途中のファミリーレストランや、ファストフード店に寄る生徒も多い。
漸くゴールした真野は、時間ギリギリで完走した。
彼は先生にチェックして貰い、自分の荷物の所まで戻る。すぐに芝生に倒れ込み動かない。
俺は、少し離れた自動販売機でコーラを買って、真野の側に行く。
「お疲れ」
大分呼吸が落ち着いた彼は、俺の声に気が付き視線を向ける。差し出したコーラに手を伸ばし
「ありがとう」
と笑った。
俺は隣に座り、片付けをしている先生や、手伝いに来ていたPTAの役員の人達を眺める。
「マラソン大会の無い学校に行けば良かった、、、」
「俺は、遠泳のない所にしたらマラソン大会だったよ。10キロ泳ぐより、まだマシかな、、、」
「そうだね、、、泳ぐのは、もっと辛いよ」
先生達もPTAの役員も荷物を片付け移動を始めた。
「俺達も帰ろう」
「お腹空いた、、、」
俺の口元が自然に緩む。
「何か食べる?」
「ゆっくり座りたい」
俺は地図アプリで飲食店を探す。この辺りの店は誰かしらいる様な気がする。、、、まぁ、良いか。
「一番近いファストフード店で良い?」
「うん」
と言いながら立ち上がる。
俺達以外に残ってる人達はいなかった。みんな帰ったんだ。年配の男の人がマラソンコースを走ってる。コース横の広場に、近くの保育園の子供達が遊びに来てる、犬を散歩してる人もいる。
でも、同じ学校の人はいなかった。
「真野は、好きな人、いる?」
「え、あ、、、」
いるんだ、、、。顔を真っ赤にして、口をパクパクさせている。
「ごめん、ごめん、、、誰かなんて聞かないから安心して、ただいるのかな?って思っただけだから」
「そっか、、、」
追求されないと分かったら、安心したのか小さく息を吐いていた。
「武岡くんは、好きな人いるの?」
「、、、いるよ」
「、、、どんな人?」
「この学校の人だよ、入学してすぐ、良いなって思ったんだ」
「告白しないの?」
「、、、しない。きっと叶わない、、、」
「そうかな?武岡くん、モテるから武岡くんから告白したら成功するんじゃない?」
「しないよ、、、俺と付き合いたい人なんていない。友達や先輩の彼女を寝取る男だよ?」
ふ、、、と笑った。そんな事、一度もした事無いのになぁ、、、。
「噂でしょ?」
「うん、、、」
「武岡くんはそんな事しないよ」
俺は瞬きをした。涙が滲みそうになった。
「うん、しない、、、。親友だったんだ。凄く気の合うヤツ。ソイツの好きな子を一緒に見に行ったりしてた。応援したし、アイツが告白して付き合う事になった時は本当に嬉しかったんだ、、、。それなのに、アイツの彼女から告白されて、、、」
訥々と話した。真野は、口を挟む事無く最後まで聞いてくれた。
「そうだったんだ、、、辛かったね」
「俺、サイテーって言われた時、それなら本当にサイテーなヤツになれば良いって思った。嫌なヤツに成れば、告白して来る女もいなくなるかと思って、、、。でも今は、自分に嘘吐くのに疲れちゃったんだ。俺は元々お喋りだし、友達と遊ぶのも好きなのに、クラスに友達もいないしね」
「、、、」
「あ、見えた。あの店で良い?」
「うん、座れればどこでも良いよ」
俺達はカウンターで注文をして、二階席に上がる。
窓際の道路が見える席。バスが走ってるのが見える。あれに乗ったら駅に着くかな、、、。
俺達がハンバーガーを食べていたら、女の子達が後ろを通りながら
「武岡くん、お疲れ様」
と肩を叩いて行った。キャアキャア言いながら、トレーを片付け階段を降りて行く。
、、、もし、あの中に真野の好きな人がいたら、、、俺は一瞬、手が止まった。
「武岡君はやっぱりモテるね、、、」
そう言った真野の声が何だか淋しそうで、悲しかった、、、。
*****
それから俺は真野の好きな人が気になり出し、長谷川の時の事を思い出す。
もう、二度と同じ過ちを犯したく無い。
真野を傷つけたく無い。
そう思いながら、少しずつ真野から離れて行った。
図書室に三日間行っていたのを控え、最終的に二月には図書室に行くのを止めた。
廊下で見掛ける度に、真野の事を見てばかりだけど、それで良いんだと思う。真野には好きな人がいるし、それは俺では無い。少しずつ、真野を諦めよう、、、。
**********
武岡君が図書室に来なくなった。冬の寒い日。バレンタインデーに武岡君が貰った義理チョコを二人で食べて、それが最後だった。
三月には全く来なくなり、武岡君に彼女が出来たのかな?って考えてた。
廊下で見掛ける時はいつも一人だから、本当の所は分からない。でも、彼は上級生からも声を掛けられていたから、いないとは言い切れない。
四月にクラス替えが有った。武岡君と同じクラスだった。武岡君の事、諦めようと思ったけど、神様が諦めるなって、言ってるみたい。
話し掛けたいけど、彼の周りには女の子がいっぱいいた。新しいクラスになって、武岡君の噂も遠い過去になって、身長の伸びた彼はやっぱり女の子にモテた。
僕は近寄りたいのに、近寄れ無かった。
委員会を決める時、僕はいつも通り図書委員に立候補した。他に誰も手を上げない。
先生が
「一緒にやりたい人がいたら、推薦でも良いぞ」
と言うので
「それなら武岡君とやりたいです」
と名前を挙げた。先生は、彼に
「武岡はどうだ?」
と聞いてくれて
「やります」
と答えてくれた。
良かった。これで一年間は彼の側にいられる。
**********
真野が俺を指名してくれて、嬉しかった。
「友達として、側にいても良い」と言われたみたいだった。
「え、武岡君がやるなら、私もやりたい」
と小さく聞こえた時、先生が
「じゃ、図書委員は真野と武岡で」
とタイミング良く言って、俺は内心ホッとした。
図書委員の二年生は本の管理が仕事で、受付の仕事は無いらしい。ちなみに、三年生は企画運営、ポップ作りがメイン。
「ごめんね。無理矢理だったよね」
委員会を決めた後、直ぐに一回目の委員会があった。俺達は図書室に向かいながら、久しぶりに話しをした。
真野は普通に接してくれた。
図書室に行かなくなった理由を聞かれたら、どう答えたら良いか分からなかった俺は、少しホッとした。
「武岡君、、、こんなに背が高かったっけ?」
「真野、、、身長縮んだ?」
俺がふざけると、プクッと頬を膨らませた。
やっぱり真野が好きだ、、、。
*****
図書委員二年の仕事は金曜日だけだった。
持ち回りで、棚の整理。後、月一回在庫の管理、新刊の準備をする。その時、返却されていない本が有れば、本人に確認するんだ。
四月は仕事が無い。五月から始まり、八月を飛ばし、各クラス二か月仕事をする。俺達は一組だから、五月と十一月が担当月になった。
真野は三年生の先輩とも仲が良く、委員会が終わると話し掛けに行く。それに着いて行くと
「わぁ!今年はイケメンと一緒なんだね!」
と笑っている。
「去年の相棒は、結局一度も来なかったから、真野君も大変だったよね」
そうか、だからいつも一人で座っていたんだ、、、。お陰で、こっそり弁当を食べたり出来たけど、、、。
俺は静かに二人のやり取りを聞いていた。
一つ上の先輩は、ショートカットの似合う、小さな女の子だった。本が大好きらしく
「ねぇ、あの新刊さ、図書委員で買って貰えないか交渉しようと思って、、、」
なんて話して盛り上がっている。
真野の好きな人って、この人かも知れない、、、。
*****
一緒のクラスになって、自然に真野と話す様になった。何か有れば真野は俺の側に来るし、班を決める時は必ず一緒だった。
俺は嬉しかったし、楽しかった。
それでも、ふとした瞬間、長谷川との事を思い出す、、、。
**********
武岡君と同じクラスになり、何とか彼の横に立てる様に頑張った。
出来るだけ彼の側に行き、移動教室は一緒に行ける様に声を掛けた。
でも、武岡君に彼女がいるのか聞きたかったけど、聞けないままだった。
彼に彼女がいるのなら、僕はこの気持ちを諦めないといけないのに、どうやって諦めたら良いか分からなかった。
**********
五月最後の金曜日、俺と真野は棚卸しをしていた。図書室の在庫は確認した。それが終わると新刊にラベルを貼って、新刊コーナーに並べる。
最後は倉庫にしまってある本。たいして動きは無いけど、たまに先生が借りたりするらしい。
倉庫の棚卸しは簡単だ。人もいないから集中出来る。
「前に、真野、好きな人がいるって言ってたでしょ?」
「う、うん、、、」
「それって、鈴木先輩?」
「は?え?何で?」
「仲良さそうだったから」
「趣味が同じだからね」
と笑う。
「違うの?」
「違うよ、、、」
じゃあ、、、誰なんだろう、、、?
「ぼ、、、僕の好きな人は、、、」
あ、教えてくれるんだ、、、。
俺は仕事をしているフリをして、全神経を真野に向けた。
「絶対誰にも言わないで欲しいんだけど、、、。バカにしたり、笑ったりしない?」
「そんな事しないよ」
聞きたいし、聞きたく無い、変な気持ち。
「、、、軽蔑しないで、聞いて欲しいんだけど、、、」
本棚に向かいながら、彼は俯いて言った。
「た、武岡君が好きなんだよね、、、」
俺の方を向いて、エヘッと笑った。
「別に!付き合いたいとかじゃ無いよ?武岡君はモテるし、僕なんてただの友達だって分かってるんだ。、、、でも、、、でも、、、ずっと言いたかったんだ、、、」
笑っていた顔がクシャッと崩れて泣き顔になった。
「ごめんなさい、、、彼女、いるんでしょ?」
二人の間に沈黙が流れた。
「俺、、、」
何て言ったら良いかな、、、。まず、彼女はいないと伝えないと、、、。それから
「えっと、、、」
見ると、真野の指先が震えてる、、、。
「俺も、、、真野の事好きだから、、、泣かないで」
「うー、、、」
と、制服の袖口で涙を拭いた。
「ごめん、、、」
謝ると、真野は首を横に振る。
「彼女が出来たから、図書室に来なくなったんでしょ、、、?」
「あー、、、」
俺の所為だ、、、。
「真野の好きな人が、もし、、、俺に告白して来たら、、、って考えたら、、、図書室に行かない方が良いと思って、、、ごめん」
、、、真野の涙は止まらなかった、、、
カチャリとドアが開いて。一年生が声を掛ける。
「あの、、、もう、図書室閉めますけど、、、」
真野は泣いてる所を見られたくないらしく、背中を向けた。
「ごめん、鍵預かるよ。閉めておくから」
そう言って、一年生から鍵を貰う。
「お願いします」
彼女達は頭を下げて部屋を出た。
*****
戸締りをして、鍵を返しに行く。
真野も落ち着いたみたいだった。
「真野?」
「ん?」
駅までの道を、一緒に歩く。
「さっき、付き合いたいとかじゃ無いって言ってたけど、、、本当に?」
チラリと顔を見ると、唇が尖っている。
え?何で?怒ってる?
「、、、付き合いたい、、、よ」
「何で怒ってるの?」
「怒って無い!は、恥ずかしいだけだよ!」
「じゃあ、俺達、付き合う?」
横を歩いている真野が少し遅れた。
「真野?」
「、、、良いの?僕、男だよ?」
はは、、、。
「良いよ。好きだって言ったよね?」
「うん、、、」
真野と肩を組む。頬を寄せると、サラサラの髪に触れた。
真野は指先で、目尻に溢れた涙を拭いた。
「打ち明けて良かった、、、」
そう言いながら、俺の顔を見るから、つい、キスをした。
真野って、泣き虫なんだな、、、。
これからの涙が嬉し涙ばかりだと良いね、、、。
嬉し涙ばかりにして上げて、、、。




