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第二章

 固い電子音のアラームで目が覚めた。

 今日は月曜日。学校で六時間の授業を受けた後に雑誌の撮影に行かなければいけない。

 毎日のような詰め込まれたスケジュールに憂鬱になりながらもゆっくりと体を起こした。

 顔を洗って髪を纏める。日焼け止めとパウダーを塗って、チークとアイシャドウで軽くメイクをし、度の入っていない眼鏡をかける。

 外に出るときはいつもこうするようにと、お母さんや川越さんから言われている。

 家の外では、いつ誰に見られているかもわからない。私はおとなしく、育ちの良いお嬢様のような品のあるキャラで通っている。そんな私のだらけた姿がもし誰かに目撃されでもしたら、イメージダウンにつながる可能性もある。

 最近の私は、どこに行くにも気を抜くこと

ができなくなっていた。


 学校の最寄り駅で電車から降り、うつむきながらじりじりとゆっくり動く人ごみに流されるようにして歩く。

 人ごみは嫌いだ。人ごみの中にいると、たくさんの匂いが混ざり合いながら漂ってくる。

 甘ったるい香水の匂いに鼻を突きさす汗の匂い。誰かのカバンから漏れてくるお弁当の唐揚げの匂い。

 なるべく鼻で息を吸わないようにして、前を歩くくたびれた革靴の後ろにへばりつくようにして駅を出た。


 「おはよ、ひかる。」

 教室に入るなり声をかけてきたのは、同じクラスの音田ゆうすけだった。

 「……おはよ」

 染めているようにも見えるダークブラウンの前髪をいじりながら、音田は毎日何度も話しかけてくる。

 「おっはよ。ひかる、今日もビジュめちゃくちゃいいじゃん。」

 肩を軽くたたきながら、クラスメイトの山内ゆうかが話しかけてきた。「あなたのことが大好きだよ」の笑顔を浮かべている。

 「おはよう。ゆうかも前髪切ったでしょ?すごく似合ってるよ」

 小さな変化に気づいて、褒める。「あなたのことをちゃんと見ているよ」のサインだ。

 「気づいてくれた?ちょっと切りすぎたかなーって思ってたんだけど、思い切ったかいがあったわ」

 正直、今までの前髪の方がゆうかには似合っていた。でも、肯定することが「大好き」のサインだから、否定することで気を悪くしてほしくないから、私はまず肯定の言葉をかける。

 そう。私はいつも、自分の本心とは関係なく周囲の人間が一番うれしいと感じるような仮面を被る。

 これが、私が厳しい芸能界で生き残るための唯一の方法だから。

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