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魔力の広がる世界で僕らは剣をとる—序章〜一章編  作者: 443
一章 何が為に剣を取る
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ep.1 [洵]その扉、強制開錠

 ここは僕の心を守る殻。僕の体を守る家。一切の危険から切り離されて、見たくもない現実からも逃れられる。

 僕が感じるこの安心も、快適も、迫り上がる焦りも、誰もいない時の孤独感も、兄を突き放してしまった喪失感も。たとえこの部屋が一つの道具で作られたものだとしても、この感情はぜんぶ本当のもの。


 ほんとはずっと怖かった。

 扉の向こうから戦いに誘われる日々が。拒絶するたびに離れてしまう兄の声が。陽翔がダンジョンに行く前にする挨拶が。

 だからこの空間(へや)から出たくなかった。出たくないと思っていた。でも本当はずっときっかけが欲しかったのかもしれない。



 いつものようにドアに鍵をかけて、窓から赤らみ始める空を見上げる。今日もいつも通りに夜がやってくると思っていた。

 必要最低限しか部屋の外に出ないし、この空間からは絶対に出ることもない。そうして陽翔以外の声を無視しながら、布団にくるまり続けた一週間。僕の幸せで空虚な時間は唐突に終わりを迎える。


 ドアの向こうから聞こえる女の子の声。

 ここは男子寮なのに、なんで女子の声が聞こえるんだろう。そう思って静かに聞き耳を立てる。


「男子の方も変わんないんだなー」


「ね〜! さてさて、個室はどうかな〜?」


 軽やかな足音と二つの楽しげな声がドア越しに溢れる。


「え、マジでやるの? マジで!?」


「とーぜんッ! 私は校長先生からゴーサインをもらった言わば権力者! ここでは何をしても良いのだよ!」


 近づいているのか声量が上がる。

 ……この声は危険人物一号と二号!


「だとしてもほら、方法は変えようぜ? 説得! そう、まずは話からな?」


「ふっふっふ。甘い、甘いよ真尋まひろ。こういう強情な子には——実力行使だ!!!」


 目的が僕だと分かって身構えていると、突然『バコッ!』という破壊音と共に木片が飛び散る。視線の先にはドアから突き出る一本の足。思いもよらない事態に僕の体は凍りつく。


「あ、やばい! 足抜けない! 助けて〜!」


「なにしてんのさ。全く、しょうがないなぁ……」


 二号の悲鳴と一号の呆れ声。ますます混乱する僕をおいて、ゆっくりと足が抜けていく。


「映画みたいに蹴破れると思ったんだけどなぁ〜。そしたら迫力満点だよ!」


「なに目指してんだよ!」


 今ばっかりは一号に心から賛同していると、一号が穴から僕を覗き見る。


「しゅ〜ん〜? いい加減に出て来ような〜?」


 作っていますと言わんばかりの笑顔と、間延びしてるのにどこか怖い声が部屋に響く。

 これまでのことを考えるに二人は僕を男子寮から、ひいてはルームから出させるための刺客。そしてもう防衛線とびらは壊されて敗北必至。だけど僕は『わかりました』なんて言いながら、大人しく出るのも恥ずかしくて動けずにいた。


「ほら〜、やっぱり迫力が足りないんだよ。どいてどいて、普通に開けるから」


 それがダメだった。一号の顔が消えるや否やドアが三角形にくり抜かれ、内側にバタンと落ちる。


「それのどこが普通なんだよ……?」


 呆れる一号の声。珍しく僕らの心は一つになった。

 意義を失ったドアの向こうには、前と変わらない二人の姿。これだけのことをしながら平然と、白く輝く小剣を持った二号がニッコリとこちらを見やった。

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― 新着の感想 ―
健全な?引きこもりを出すには引き摺りだすしかないですものねw時間も有限だし小さきか弱きものには選択権はないのだ……
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