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魔力の広がる世界で僕らは剣をとる—序章〜一章編  作者: 443
一章 何が為に剣を取る
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ep.23 [洵]理由

 硬い黒髪が遠くの炎に照らされて赤く輝く。燃えるように煌めく瞳が、僕を覗き込んだ。


「は、陽翔!?」


 僕はいきなり現れた陽翔に驚いて、声がうわずった。

 陽翔は僕の頭をわしゃわしゃ撫でて、そのまま隣にどかっと座り込む。


「祭りは……あんまり楽しめてなさそうだな」


 首から下がる巾着袋の重みを見て、陽翔はそう呟いた。


「なんか、さみしくなっちゃった」


「そっか」


 しばらく僕たちは、なにも喋らずに静かに寄り添い合う。陽翔の温かさが僕の冷えた体をじんわりとほぐした。

 ずっとそのままでも良いと思えるぐらいの幸せに浸っていると、ぽつりぽつりと陽翔が話し出す。


「俺さ、大事なこと何も聞かずに洵のこと突き放しちゃてさ……ごめんな」


 僕は聞いたことのない陽翔のしんみりとした声に目を丸くした。


「陽翔は悪くないよ! 僕こそ、迷惑かけちゃってごめんね」


 僕がそういうと、陽翔は僕の肩に腕を回す。


「昨日、校長先生と話したんだ。俺の悩みを聞いてくれた。そこで気づいたんだ。俺、洵が戦う理由を知らねえなって」


 ……たたかう理由。

 そういえば僕も知らなかった。陽翔がなんであんな死に物狂いに頑張るのか。だから僕も聞いてみる。


「陽翔の理由。教えてほしいな」


 僕の質問に、陽翔は沈黙した。

 陽翔は考えなしにこうはしない。きっと僕に話して良いのか、話すべきなのかを考えていたのだろう。もしかしたら、陽翔が話したくないだけかもしれない。けれど、もし言い出せない理由が僕にあるのなら、僕は気にせず言って欲しいと思った。だから僕は陽翔の膝に手を移す。


「……俺さ、ダンジョンができた春休みのころ、山奥のホテルに旅行しに行ってたんだ。その帰りに、見晴らしのいい峠に寄ったとき、モンスターに出会でくわした」


 静かに語り出された悲痛な過去に、僕は聞き入っていた。


「俺はすぐに車から降りなくてさ、叫び声が聞こえたと思ったら、親がゴブリンに襲われてた。多分、残骸種。……父さんが、車の鍵をかけてくれて『出るな』『隠れてろ』って、めっちゃ怖い声で叫んでさ。俺、父さんと母さんが楽しそうに殺されてる間、ガタガタ震えながら見つからないように縮こまるしかできなかったんだ」


 陽翔はほろりと涙を零す。拳が、過去の自分を許さないかのように、ギュッと握られていた。


「だから俺さ、もう何もできない俺じゃなくて、たとえどうしようもなく強いモンスターに力が及ばなくても、エサとかオモチャじゃなくて敵として死にたい。——できることなら、何かが起こってしまった時に誰かを守れる自分になりたい。それが俺の戦う理由」


 開かれた手のひらは血が滲んでいて、それに気がついた陽翔はサッと隠してしまう。

 どれだけの力が込められていたのだろうか。どれだけ無念だっただろうか。どれだけ後悔しただろうか。

 陽翔の苦しさが僕にも伝わって、うまく言葉を喋れなかった。


「……そうだったんだ」


「洵はさ、なんで戦おうと思ったの?」


 僕の理由は、陽翔みたいに大きくない。そんな僕が、始めから陽翔と一緒に居られる訳なかったんだ。けど、ちっぽけな理由でも、陽翔に伝えないといけない。


「僕は陽翔を守れるようになりたかった。僕はただ陽翔が大怪我して帰ってきて、死んじゃいそうって思って。……だからちょっとでも役に立ちたいって思った。それだけ」


 僕が言い終えると、陽翔は静かに空を仰いだ。


「あぁ……そうか」


 噛み締めるような言葉が耳を撫でる。


「俺、だったのか」


 その声に僕の願いが叶うのではないかという、淡い期待が胸に生まれた。


「僕は陽翔と一緒に居たいんだ。だめ、かな……」


 陽翔は目を瞑って考える。そしてゆっくりと瞼を開いて、僕に応えた。


「洵が望んだものにはできないと思う。でも、みんなに相談してくるよ」


 僕の望みが受け入れられた訳ではない。それでも本当の気持ちを伝えられた満足感が心を満たす。

 一夜の終わりを飾る豪華な花火が、僕らの未来を示すように大輪を咲かせた。

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― 新着の感想 ―
陽翔みたいに大けがしても続けられる人は理性にしろ感情にしろ前もって覚悟決まってる子がほとんどでしょうからね。感情ならばそりゃそうよなぁ
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