ep.21 [洵]お祭り
僕は日に日に数が増える屋台に期待を膨らませていた。
焼きそばの匂い、りんご飴の赤、浴衣のすれる音。どこか懐かしい風情を連れて夏祭りが幕を開けた。
太陽が傾き始めると、どこからともなく人がやってくる。ちっちゃい子から、スクールメイトと同じような背丈の人や、その家族までが大勢。みんなが再開を祝って戯れる中、僕も自分の家族を探し始める。
最初は母を探した。でも一向に現れる気配がなくて、仕方なく兄を探した。けれど、兄も居なかった。
それでも、人混みの中を歩くのをやめられなかった。どこかに居てくれてると信じたくて。
どれだけ周囲を見渡しても、僕の家族はどこにも居なかった。それなのに遠くではスクールメイトが、結衣ちゃんや真尋ちゃんが家族のみんなと話している。その差は浮き彫りで、寂しくなって幸せの輪から抜け出す。
みんなの幸せの時間を壊したくなくて、僕のこんな顔を見られたくなくて、町外れまで逃げ出した。
太鼓の音と屋台の客引きを聞いている内に、いつの間にか空は暗くなっていた。
暗闇に一人でいる勇気が僕にはなくって、ようやく僕はキャンプファイヤーが燃える広場の隅っこに、それがギリギリ見えるぐらい遠くから、屋台で買った戦利品を楽しむみんなを眺めることにした。
首に下げられた巾着袋には、今日ここだけで使える磨かれた木のコインが入っている。使わないともったいないのに、僕は減ったお腹に知らんぷりして、意地になって自分を守るように小さく座り込んだ。
一夜限りのお祭り騒ぎ。本当は楽しまないといけないのに、遠くで真尋ちゃんが弟っぽい人を抱きしめ続けているのを見て、それを今の僕と比べると心細くて胸が痛くなった。
杖を持った人が上げる小さな打ち上げ花火の輝きがパッと辺りを照らす。盆踊りを盛り上げるの笛の音が、どうにも遠くに聞こえて仕方がなかった。
もう帰ろう。ここにいても苦しくなるだけだから。
こんな場所にいながら誰かに見つけてもらえることを密かに願い、それを諦めようと思って——最後に、幸せそうな景色を目に焼き付けた。




