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魔力の広がる世界で僕らは剣をとる—序章〜一章編  作者: 443
一章 何が為に剣を取る
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ep.19 [結衣]脚本

 柔らかな朝の光がカーテンを透かして肌に滲む。あたたかさに包まれて——それが“誰かの熱”だと気づいた瞬間、全身の神経が跳ね上がった。

 即座に覚醒した私は自分から握っていた手を離し、ちょうど目を覚ました隣の人物を凝視する。


「んぁ? あ、眠れた?」


「……おかげさまで」


 なんで真尋がここにいるの!? 確か昨日……あっ。


「昨日は、ごめん」


「いや、いいよ。あたしこそ夜中に押しかけて悪かったな」


 そう言いながら真尋が繋がれていた自分の右手を見せびらかすように開閉する。


「その、手も繋いでくれてありがと」


「いやぁ、一瞬で寝ちって驚いたよ。いい夢みれた?」


「夢は見なかったけど……恥ずかしいから早めに手は洗って欲しい」


 私は手を握ったまま寝てしまった。それも、あろう事か素手で。久しぶりのに感じた指先の温もりは、私が穢れを移してしまったことを示していた。


「それは着替えたらな。……そういえば、手袋つけてないの初めてか? あったかくて良かったわ。それより、昨日話したいことがもう一個あってさ。朝っぱらから悪いけど話していい?」


 “恥ずかしい”という小さな嘘を目ざとく聞き分けて、真尋に軽くフォローをされる。

 本当に、誰がこんな人たらしを生んでしまったのだろうか。むず痒い気持ちはあるものの、私はあくまでも平然を装って話を進めることにした。


「うん。どんなこと?」


「ほんと朝からあれなんだけどさ、洵を強くする気はあんの?」


 一考して口を開く。


「まず、これまで我慢してくれてありがと。確かに私から言うべきだったから、ごめんなさい」


「やっぱ、洵の前では言わないほうが良かったんだろ?」


「うん、私がするのはレベル上げ」


「いや、だから」


 真尋が口を開こうとしたから慌てて静止する。


「——待って。もう少し聞いててほしい。私は占い師さんから言われてることがあるの」


 そう言うと、真尋は口を噤んだ。


「だから、私がしてあげるのはレベル上げだけ。他にも何か意味がありそうな雰囲気だったけど、私が与えられた役割は洵のレベルを上げること以外はなにもしない。

 本人からなんらかのコンタクトがあって、何か教えてとか言われても戦闘のことに関しては最小限に留めること。これが私の役割」


 真尋は納得するように大きく頷く。


「それでか。その先は? 何か知ってるのか?」


「うん。ここからは憶測だけど、占い師さんは洵と陽翔をくっつけたい。何かのために同じパーティーで活動させることを目指してる。私が教えられてるのはここまで。これは伝えて良いことだって言われた」


「へぇ……噂に聞く接触不可アンタッチャブルが言うなら仕方ねぇな」


 真尋が言葉を使って『私もそのくらいは知っているぞ』と揺さぶりを仕掛けて来るが、私はそれをスルーする。


「そういうこと。他になんかあった?」


 それに対して、真尋は特に言及せずに大きく首を横に振った。


「いんや、もう大丈夫。なんで中身の伴わねぇパワーレベリングみたいなことしてんのかって癪に触っただけだから。意味があるんなら仕方ねぇ。そんじゃ、私も帰るわ」


 そう言って、身軽にベッドから降りた真尋は窓を開いて身を乗り出す。


「え——なんで?」


「いや、一緒に寝てたってバレたらちょっと恥ずいだろ? だから窓からってな」


 浮気男みたいなセリフだな、と思いつつも私は見送ることにした。


「気をつけてね」


「おう、行ってくる」


 真尋が外に飛び出すと、足場に魔力盾シールドが展開されてそのまま空を駆けて行く。一人になった部屋で私はボソッと呟いた。


「そんなの誰も気にしないのに……ま、いっか」


 一抹の不安を抱えながら窓を閉じて着替え始めると、しばらくして誰かが窓をノックする。服を着てカーテンをもう一度開くと、案の定そこには真尋がいた。


「どうしたの?」


「いや、マジごめん。外から窓開かなくってさ」


 予想通りの言葉に思わず笑いがこぼれた。


「そりゃそうだろうね」


 そうでなくっちゃセキュリティ的に危うすぎる。

 恥ずかしそうに頭を掻く真尋は『しまらねぇな』と苦笑いして、廊下から足早に私室へと戻って行った。

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