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魔力の広がる世界で僕らは剣をとる—序章〜一章編  作者: 443
一章 何が為に剣を取る
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ep.15 [洵]僕の選択肢

 どうしてこうなったのか、よく分からなかった。でも、陽翔がいなくなってだんだん言葉の意味がわかってきて。そうしてしばらくベッドに座ってる内に、ようやく状況を受け入れ始めた。

 僕は陽翔に釣り合わなかった。僕の付け焼き刃のような努力では、陽翔の期待に応えられなかった。

 本当は自分でも分かってた。どう頑張ってもパーティーの足を引っ張ってることは何となく感じていた。でも、そんな僕をみんなが受け入れてくれてると勘違いしていた。


「どうしたら……いいのかな」


 自分でも驚くほどにか細い声が零れる。

 傷ついてほしくなくて。一緒にいたくて。できる事なら、背中ぐらいは守ってあげられるぐらい強くなりたかった。


「でも、だめで」


 どうして僕は陽翔みたいに強くなれないんだろう。レベルって、マナってなんなんだろう。

 鈍る頭をぼすりと枕にうずめる。自然と嗚咽が漏れて、涙がそれを濡らす内に意識は暗転した。



 窓の外では、夜らしからぬ温さが漂っていた。その奥で、何者かが視線を少年に注いでいた。


 ◇ ◇ ◇


 夏は思っているより朝が早い。目が覚めても、朝ごはんの時間まではまだしばらく残ってる。こんな時間に起きるのは、早寝と朝練が身につけた習慣のせいだった。それはもう、なんのためにもならないのに。


 カーテンを開ければ、あの日見続けた偽物の空(あおぞら)が広がる。

 どうせ頑張っても、何も変わらない。結果がこんなに悲しいのなら、引きこもるのも悪くないかもしれない。


「陽翔の言ってたとおり……」


 あのとき——傷だらけだった陽翔が、言ってたことが脳裏に蘇る。


「でもそしたら、本当に意味がなくなっちゃう」


 いつ起こるか分からないけど、陽翔の次のピンチに本当に間に合わなくなるかもしれない。

 せっかく少し体力がついて、冒険者にもなれて、みんなの後ろに追いつけたのに。ここでやめたら次は背中すら見えなくなるぐらい、手遅れになっちゃうかもしれない。

 頑張ってたら、また陽翔が僕を見てくれるかもしれない。まだ間に合ってないわけじゃない。なら——進むしかない。


「また、みんなにお願いしてみよっかな」


 置いていかれてもまた追いつくために、なるべく早くに戻るために。今日の予定を考えて、気合を入れるように頬を強く押しつぶす。

 引きこもりの教訓は、僕を立ち止まらせはしなかった。


「よし、頑張んなきゃ!」


 苦しいのはみんな一緒。だからこそ、笑顔のままで。気持ちが誰にもばれないように。



 みんながダンジョンから帰ってきた放課後の時間帯。僕は前に参加していたパーティーに声をかける。そこで強くなりたいこと、そのためにダンジョンに沢山潜りたいことを伝えると、僕は当たり前のように参加を断られる。

 元々、スクールメイトの中で戦うことに好意的な人はそこまで多くない。その中で好戦的な人はずっと少ない。でも、その人たちからすれば僕は力不足。ほとんどの、戦いを最低限で済ませてる人からすれば、僕の願いは聞き入れられなかった。


 本当はしたくなかったけど、もうこれしかないのかもしれない。

 僕は前に、冗談っぽく力を貸してくれると言っていた真尋ちゃんを探すことにした。



 食堂を見渡し、グラウンドを見渡し、女子校舎とルームの女子エリアを真尋ちゃんのお友達、祐嘉ゆうかちゃんに探してもらってようやく見つかる。

 祐嘉ちゃんに連れられて、髪の毛を手櫛で整えながらやってくる真尋ちゃんに手を振って出迎えた。


「祐嘉ちゃんありがと!」


「いえいえ、お力になれて良かったです。お邪魔になる前に私は失礼しますね」


「うん、またね!」


 祐嘉ちゃんを見送って、残った真尋ちゃんにテーブルを軽く叩いて席に促す。欠伸を噛み締めながら雑に腰掛けた真尋ちゃんに向かって、僕は話を切り出した。


「真尋ちゃん。お願いがあります」


「ん? まぁ祐嘉からちょっとだけ聞いてるけど……改まってなんだよ」


「真尋ちゃんの予定が空いている日だけでいいので、僕と一緒にダンジョンに潜ってもらえませんか?」


「んまぁそりゃさ、予定が空いてる日ってのは当たり前なんだけど、ダンジョンねぇ……いつもの名越ダンジョンでいいんだろ?」


 思っていたよりも良い雰囲気な返答に、僕は真剣な表情が崩れないように気をつける。


「うん。いつもの場所。昨日……なんだけど、僕が弱いから陽翔にパーティーから外されちゃったんだ。でも僕は、陽翔と一緒にダンジョンに行きたい。だから、なるべく早く強くなるためにたくさん戦いたいって思ってます。——お願いします!」


「う〜ん……結衣に聞いてからでもいい?」


 二人はなんかのお仕事があるんだっけ? やっぱり難しいのかな。


「大丈夫。こんなお願いして、本当は良くないことしてるのは僕だから。わがままに合わせちゃってごめんなさい。でも、ほんとにありがと」


「いや、別にダンジョンに行くことは何でもいいんだ。いつもはもうちょい危ない場所行ってるしさ。ただ、あたしは基本的に結衣と行動するって決めてんだ。だから結衣が無理って言ったら無理って感じ。モンスターが危険とかは全然気にすんな、あたし達は洵が思ってる以上に強えぞ?」


 真尋ちゃんはニヤリと嗤う。その凶暴な笑みに釣られて、ついに僕も口元が緩む。

 今だけは、心の痛みを忘れられる気がした。

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