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魔力の広がる世界で僕らは剣をとる—序章〜一章編  作者: 443
一章 何が為に剣を取る
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ep.12 [陽翔]道導

 魔力マナは知らずのうちに体を満たしていた。この授業を先に受けていれば、俺は残骸種アイツに対抗する術は持ってたのかもしれない。


 マナに関する説明の中で『他者のマナに対する不快感』についての話があった。それを聞いて真っ先に思い出したのが、担架の上でかけられた魔法だった。

 最初に掛けられた魔法は怪我の痛みもあって、あまり何かを感じることはなかった。

 だけど、続く複数の魔法を受けることで、身体中をミミズが動き回るような痛みが走り、しばらく残った。他にも感じた自分の何かが乱暴に押し除けられる感覚を、俺ははっきりと覚えている。

 それが分かればあっという間で、俺は押し除けられた何かを集中させる方法で《身体強化》を起こす。


 感じたことのない万能感。維持することは難しいが、そのまま跳んで走ってと運動を続ける。

 ただの筋力増加のようなもの。ただのそれが飛距離を伸ばし、速度を上げる。

 何より、体への負担が少ない!


 マナを操作する分の意識で、ずっと楽に動けてしまう。これが自然とできるようになって、魔力量も増えて……そうしたらどこまで行けるのだろう。

 ただ走ることが、こんなにも楽しいと思う日が来るなんて。


 俺は特に筋が良いみたいで、途切れ途切れにはなりながらも《身体強化》を行い続ける。

 それをレベル3の中では最高とまで言われて、思わず頬が緩んだ。


 想像以上の出来だったのだろう、言われたままに指示をこなし続けると『一足先に次を見せるよ』と言って、先生が特別に《身体強化》の先を見せてくれることになった。


 先生が学校の倉庫から一本のくたびれた剣を持って来て、それを俺に握らせる。すると突然、胴に斬りかかれと言ってきた。

 『物に対する強化を見せる』そのためのパフォーマンス。なのに、俺は動けなかった。それ以前に、剣を持つ手に力が入らない。血の香りが鼻を通った気がして、血の気が引いた。


 先生が俺の様子を見て謝ると、自分の腰に差していた鋭い輝きが放たれる剣を抜いたと思うと、自らの腕へと押し当てる。雑に振り上げ、素早く振り下ろされた剣は当たり前のように服に阻まれた。

 『切れはせずとも傷はついているだろう』という考えも覆される。先生の軍服のような黒い服には、一切の痕跡が残っていなかった。

 剣の刃をそのまま滑らせても結果は同じ。それが防具への《物体強化》の成果だった。


『ならこれにどう対抗するか』


 先生は俺たちに問いかける。


「剣にも強化すれば……」


 それに俺はノータイムで答えた。

 応えは『正解』。相当な力がない限り、魔力には魔力でのみ対抗できると先生は言った。


 促され、剣を構える。次はさっきの逆。強化したもので、強化されてないものを斬るそうだ。

 先に予想。先生が持つ強化された剣で、俺が持つなにもされてない剣を斬りつけるとどうなるか。

 『俺の持つ剣が斬れる』という予想が場の三分の二を占めた。


 次に実践。合図の後、構えた剣に先生は剣を打ち合わせた。予想以上に軽い力で、予想以上にあっさりと。

 結果、俺の剣はニンジンを包丁で切る以下の衝撃で、剣先が落とされていた。


『もしも斬られた剣(これ)が人の腕だったらどうなる?』


 そんなの『腕が落ちる』以外にない。それが脂が乗り始めた冒険者が命を落とす、大きな一因だと言われた。

 思いもしない前進に気が大きくなっていた俺は、現実に戻される。先生の傷だらけの手がそれでは足りなすぎるのだと、そう言ってた。



 授業が終わり、次に始まった受講人数二人の魔力応用のクラスを眺める。

 俺に参加資格のない授業を受ける二人は、見て分かるものじゃないが物質強化を行なっているようだった。

 剣が薄く輝いて、それが言葉にできないほど力強く思えた。無から光のつるぎを生み出した時には胸が躍った。先生と結衣ちゃんが光の剣を高速で撃ち合わせているのを見て恐怖を覚えた。


 先生も結衣さんも、動きに余裕がある。落ち着いた表情は、何かを残していると暗示しているように思えた。

 そうだ、俺はただ一歩を順調に踏み出せだだけ。いつか、ああならないと。


 目眩がするほど遠すぎる。それでも見えた背中へと、ピントを合わせるように目を細めた。

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