ep.11 [洵]非情なもの
レベルが1になると、できることが増える。下位自己鑑定が見れるようになるのはそうだけど、それだけじゃない。一番大きいのは、魔力基礎の授業に出席できるようになったことだった。
いきなり現れて何かをして、あっという間にいなくなる。いつもそうだったから、今回もすぐに居なくなっちゃうと思ってた。でも、そうじゃなかった。
他の先生たちみたいにいつもいるわけじゃない。けど、毎週決まった曜日に来て、授業をして帰る。そこに兄弟の会話はないけど、定期的に会えるのが嬉しかった。
授業は何かを座って覚えるのじゃなくて、まだまだ分からないことも多いみたいだけど、魔力の基本的な使い方を教えてくれていた。
魔力の使い方といっても、ないことには始まらない。だからレベルが発現するまでは見てるだけだった。
それも、もうおしまい。やっと僕は、戦うみんなの後ろに追いついた。
魔力は体の中にある力。“器”の準備が整えば、自然と溜まる新しい力。使いこなせば体を強くすることも、人に備わった能力を活性化させることも、全く別で武器を形作ることも自由自在。
間違った使い方をしたらすごく危険だけど、荒事の中で生きる冒険者には、これ以上ないぐらいに大事なもの。それも、自分のマナが分からないと何も始められない。
僕たちは最初の壁に直面していた。
分かる人はあっという間に先に進む。リハビリ中の陽翔も先に行ってしまった。でも、みんながみんな簡単に進めるわけじゃない。僕も絶賛難航中だった。
感覚っていうのは人によって全然違う。先生がサポートをしてくれたけど、なんかゾワゾワしただけでよく分からない。
他人のマナがそのまま自分に入ると嫌悪感や、ひどいと痛みが出ると言う。その中からマナを感じ取れれば、自分のマナへの理解が早まると言われているそうだ。
陽翔は先生にサポートしてもらわなくても、言葉を聞いただけで『あぁ!これか!』って閃いていた。でも分からない人はいつまでも分からない。レベルが二桁になっても、もっと上がっても分からない人は分からない。
『才能がない人は一部を除いてこの道から離れるか、早くに死んじゃうよ?』
今になってやっと、結衣ちゃんの言葉の意味が分かった気がした。
マナが分からないと、体を補強する《身体強化》ができない。そうなると、残骸種に出会ってしまった時に太刀打ちができなくなる。結局、レベルが上がって魔力が増えても、使えなかったら意味がないんだ。
陽翔が《身体強化》をして重たい岩を持ち上げる。
僕はどんどん置いていかれてる気がして、少しだけ胸が痛んだ。




