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魔力の広がる世界で僕らは剣をとる—序章〜一章編  作者: 443
一章 何が為に剣を取る
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ep.4 [直弥]盤面硬直

 限界なんてとっくに分かっていた。俺がモタモタしている間にどんどん疲弊して、とっくに限界はきていたはずなのに、二人はかわる代わる戦い続ける。それはパーティーリーダーやエースとしての責任感なのか、ただのアドレナリンなのか。そう呑気とも思える思考を片隅に、ついに陽翔が落とされた。


 もっと早くに決断を下して、多少モンスターがいる通路に突っ込めばよかったのに。陽翔はもう動けない。志道は限界。一真の傷も深かった。

 動けずにいる俺の視線の先で、志道が陽翔を庇ってもう一つ傷を増す。


 もう無理だ。このまま進んだら置いていくことになる。そしたらあいつらはここで死ぬ。でも俺は生き残れ——なに考えてんだよ俺は! 任せてもらったんだ! ここで応えられずになにが仲間だ!


「透、戻って来い! ここでアイツを倒す!!」


 俺たちの中で飛び抜けて戦える陽翔と志道先輩は、受けるだけでもやり合えた。なら初めっからみんなで叩けば、倒せるかもしれなかったじゃないか! 授業なんて知ったことか! どうせ一体だ、袋叩きにしてやる!


「志道と一真は陽翔を守りながら休んでろ! 別のモンスが来たら頼む!

 他、あいつを囲む! 草攻剣用意、踏み込みすぎるなよ!」


 指示に返事を返す仲間と残骸種を囲もうと動くが、こちらの意図を読んだように適度に距離が取られる。


「攻めるなよ! これならこれでいい。チャンスがあれば即行囲む。

 一真! 現在地を教える! 状況を見計らってこっちに来い!」


「分かった!」


 流石に露骨すぎたか? でもこれはこれで良い。いや、体力を回復してるのか? なら駄目じゃないか!

 だとしても、攻めにかかれば俺たちじゃやられるだけ。ならば、今の最善手はいつでも動ける体勢のまま待つことだと俺は思った。


「来た!」


 びっくりしたぁ! 敵が来たかと思ったじゃねぇか!

 喉元まで上がった言葉をグッと飲み込んで、敵を観察しながら言葉を返す。


「地図は」


「これ」


 一瞬地図に目をやって急ぎながらも冷静に指差す。


「ここ、戦術手コマを頼む」


「分かった!」


 これで撤退を続ける場合の道を見てくれているはず。そう思って俺は全員で帰るために情報を集める。


「このまま睨み合う。陽翔の状態は?」


「良くない。一応傷口にポーションをかけたけど意識が無ぇ」


「分かった。志道は?」


「俺はそもそも深くねぇし飲みも掛けもした。血は出てるが体力が戻ったらまた戦える」


「分かった」


 残骸種ヤツが一歩、俺の隣で構える透に近づけば『手を出した瞬間に斬りかかるぞ』と囲むように、位置を調節して圧をかける。それを見て、また一歩距離を開けられた。

 そうした硬直状態は五分か十分か。実際はもっと短いのだろうが、心臓がうるさすぎてはっきりとは分からない。ただ一つ、陽翔が目を覚ました分、状況は好転。

 その代わり、と言わんばかりに怪我人側へと敵の集団あしおとが近づいて来ていた。


 ダンジョン内で時間をかけるということは、当然状況が悪くなる可能性がある。残骸種ソイツも足音を耳にしてか壁に近づくと武器を叩きつけ、耳障りの悪い音を響かせた。

 ここまで知能があるのなら、誘うのが一番手っ取り早いかもしれない。


 俺は表情を焦ったように歪めて一瞬後ろに視線を送る。ついでとばかりに、ズボンを軽く引き上げる素振りをしながら、ベルトポーチの中にある小さな球体を優しく指先に握り込んだ。

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